貘の食べ残した悪い夢が
きみの唇のまわりに散らかっている朝
窓越しにみえる庭は 素晴らしく綺麗だ
気丈な松の樹に 少しだけ雪がかぶさって
玉砂利は少女のごとく濡れ ....
深い眠りから眼を覚まし
目覚めるまでのひと時迄
混沌とした靄の中にいる
身体は動いているけれど
意識は朧な霞が晴れる迄
混沌とした靄で息を吸う
今日のゴミ出しに気付き
もう遅い時 ....
まず
人が天使に見えるのか
そんなに愛しいか
そんなの本当か
人が悪鬼に見えるのか
そんなに憎しいか
そんなの本心か
人が灰色に見える
どんなに苦しいか
こんなの ....
わたくしは鋭利な球体
鬱血した魂のむらさき
情熱と酷似した粗暴に焼かれ
焼失した楽園の輪郭をなぞる
背骨を抜かれて自慰に耽り
名札のない隠喩の銛が刺さったままの
つめたい消し炭の太陽
....
ただの壁だと思っていた面に
白い花が
ちらほらと咲き始めた
家と道
内と外
隣人と自分
向こうとこちら
静けさと騒音
過ぎ去った時間とやってくる時間
何かと何かを隔てるための境目 ....
真夜中の扉を開けて
裸足で駆けて行こう
たくさんの流れ星が降るという
星降る森へ走って行こう
キーンコーン
いろんな色の流れ星が
きらめきながら落ちて行く
金属的なその音は
真 ....
普段の私は40Wくらいの明るさで
人に会う時は60Wになる
さらに仕事中は
100Wの明るさで全開だ!
しかし100Wの電球は
消費電力が大きい過ぎて……
電球がすぐに切れてそうになり ....
凡に生き抜きたくはない 滑稽な道にはバナナの皮が咲き乱れる
シリアスな持ち主故 そんな気分には成れない 慣れる気質もない
半分ジョーダンの段差は知っている
つまずくんだ 小癪なその段差に
....
葉を落とした蔦は陰鬱な妄想
囚われた家も人も沈黙を叫ぶかのよう
十一月は開けっ放しの箪笥
風や霙しか仕舞われていない空の空
冬は心の真中から始まる
だがものごとの始まりは不明瞭
....
誰も知らない
本当の私は
私の中にしか
いなくて
そんな私を
私が愛してやれなくて
どう救うのだ
ひっぱり出して
向き合うことに
痛みを伴えども
膝小僧の下に生える毛はとても強い
太くて、まっすぐで、
80デニールのタイツも突き抜けそうにピンと生えている
脚に垂直に
地球に水平に
やせた土地にあって
少しの栄養で気まぐれに芽 ....
あともう少しと思うところで
火を止めるのよ
もう薪はくべなくていい
蓋をあけてはだめ
後は鍋ごとさめるのを
待つの
ゆっくりさめながら
ジャムはだんだんジャムになるから
リスの母さんは ....
風邪をひいて一日寝ている
よくもこんなに眠れるものだ
寝ては目覚めてまた夢を見る
夢で野垂れ死にしても不思議ではない
見知らぬ旅館に隠れている
ドアが開いたかと思うと風呂上りの子どもが転がり ....
3 足のある眼鏡
わたしの仲間は誰でも言うのだが
決して信じてはいなかった
「眼鏡には足がある」など
だが 今朝 眼鏡が消えた
確かに洗面台の横に置いたのに
顔を洗っている間にど ....
辿り着いたこの街で
老いていくのだ
運が良ければ
最後の日まで
そのことが
頭の中ではっきりしていて
どこまでも
美しい
晩秋の遊歩道
こんなことを昨日から考えている
診断の結果異常のないはずの子供が
なんらかの障害をもって生まれてきたら
なんらかのミスでそんなことが起こってしまったら
ぼくならどう思うだろう
....
一言で
闇を
止めることが出来たなら
苦労などしない
一言で
死を
止めることが出来るなら
苦労などしない
一言で
世界を
滅亡の淵から救い出せるなら
犠牲はいらない
一言では ....
朝の隅の
見えない朝
埃は歪み
渦を描き
金と緑の河を浮かべる
二重三重にひらく空へ
暗がりは流れ落ちてゆく
樹があり また樹があり
むこうには何も無いかのよう ....
キーを叩き。明朝体を墜し、青白む紙の上へ
滲み、昏い余白を点し、未到の雪のうえを歩
く、ポーチライトが続々と消えて、踝に光だ
けを纏い、潜り、息を止めて、そっと近づき。
加速度をつけた空が硝子 ....
叔母さんが亡くなった
いとこが
「顔も見てやって」と
お棺のふたを開けてくれる
御顔を覗くと
少しも苦しそうでないので
ホッとして
「おばさん」て小さい声で言って
お葬式には少し慣 ....
時折 挫折します
嘘です
いつでも挫折しています
そのうち挫折があたりまえ
嗚呼 挫折こそわが人生わが歌
骨折も痛いが
挫折も痛いああ痛い
坐骨神経痛を略 ....
睫毛が凍る
瞼が開かない
口はからからで
身体は半分もう埋れている
ポップコーンの弾ける音
君の微笑み
オレンジ色の証明
調子外れのピアノ
繋がれた手
誰が引っぺがせと言った ....
懐かしむ 振り返る過去が増えてくる
決してしがみつくものはなく 黄昏は生まれながらにもっている
私の夕刻の風
四季の問わない八方へ広がる 無菌空間の感情
誰にも晒されない 寂しさをずら ....
朝 目覚め コーヒーを片手に空を見上げると
真っ白なカーテンの隙間から 冬になろうとしている風を通り抜け
真っ直ぐな日差しが 私を突き抜けていく
夜 あんなにも心はざわつき 心細くな ....
時を経て散り行く枯れ葉
地に落ちろうとする姿は
その間際まで心奪う様に
我を忘れる程の美しさを
見せ付けては舞い落ちる
少しの風にひらひら落ち
強い風にも優雅に落ち ....
ペットボトルのごみの日
中身(心)はもうとうになくて
キャップ(顔)やら
包装(洋服)やらを
捨て去ったら
みな
潔い裸になった
とても清々しいごみの日には
カラスさえも
素通りする ....
幸せの余韻は漂っていた
静かに訪れる至福の時は
穏やかな心を呼び覚まし
淡い透明の色彩が流れる
珈琲は如何それとも紅茶
ココアに致しましょうか
湯気の立ち込めるカップ
まろやかな香り ....
等圧線の険しい尾根道を
一気に駆け下りた寒気の精鋭に
容赦なく身体を押えつけられて
また2センチ青空が遠のいた
街路樹の痩せた指先から
次々に零れ落ちた枯葉の巡礼を
容赦なく運動靴 ....
MRIに写った骨に
ほんの少しの ヒビ在り
しばし見入る
ヒビは歌わない
ましてや笑わない
責めたりしないし
冗談も言わない
財布の心配もしない
後悔もしない
原因があって
結 ....
時々、人の目を臆することなく
甘えてみたくなる
鼻をあなたの背中に押し付けて
思いっきり
人の匂いを吸い込んでみたくなる
ひなたに寝転んで
雲の形に一喜 ....
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