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夏をたたむ
両手でしわをのばし
ていねいに
色濃い影をおとした夏も
洗濯され、たたまれると
頼りないほど薄っぺらだ
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きみは黙って手をさしのべた
わたしは黙って寝巻きをおとす
まっくらな部屋のなか
きみの頬がまたそげていた
....
薄縹の空のした浜辺をひとり歩く
潮の香りと眠りの匂い
拾った貝に耳をあてれば
なつかしいひとの声
「元気かい」
....
そのひとは俯くことをせず
まっすぐに前をみていた
履いているジーンズはうす汚れ
家路をいそぐ人々が乗る電車の中
ぽっかりとあいた空間
....
それは声にだした途端
ひび割れ砕け散る
鎖のようにつなぐもの
絡まる蔦のように
知らずに互いを
縛 ....