すべてのおすすめ
外野を抜けた白球を追って走る
走者が一掃して
試合が終了しても
ひたすら追いかける
悲しみも寂しさも
ただの退屈だった
人の形を失っていく
それでも最後の一ミリまで走る
(午前7: ....
塩水を買って帰る
安かったから、と妻に渡すと
またこんなもの買ってきて
そう言いながらも大事そうに抱えて
海に帰っていく
今日のおすすめはこれです
テレビの人が言った
(午前 ....
人が笑っている
人も笑っている
空は何もしない
近所の人が歩いている
犬を連れている
性別は男とオス
海は遠い
(午前6:53 · 2021年2月3日·)
椅子が眠っている ....
ネパールのおばさんと話していると
初夏の風が吹いて
自ずとら抜き言葉になる
門扉のところで自転車にまたがっている男に
日本語ではない大声でおばさんは話しかけ
それがネパールの ....
そして春が来て
今年も川辺の並木に
ホタルイカの花が咲いた
日中は褐色に湿り
夜になると仄かに光った
数日でホタルイカは散ってしまう
川に落ちたものは
海にたどり着き
地面 ....
安売りをしていたので
星をひとつ買った
命名権付きということで
相応しい名前を小一時間考え
以前飼っていた犬の名前をつけた
部屋の電気を消すと星は仄かに瞬いて
偽物みたいに綺麗だ ....
理由のいらない椅子が並ぶ
未明に墜落した紙飛行機の残骸と
食べかけのルーマニア菓子
砂浜の砂の数は
既に数え尽くしてしまった
栞の代わりに挟んだ魚が
静かに発酵して
すべての ....
雨が降ってきた
それに加えて午後からは
槍まで降ってきた
雨が降ろうが
槍が降ろうが
必ず行くよ
と言っていた友人は
終に来ることはなかった
窓を開けると
代わり ....
砂漠の真ん中で
洗濯機が回っている
インド綿のシャツを着た官吏が
時々中を覗きにやって来る
飛行機が上空を通過する
やり場のないコウモリ傘や
目新しい嘘を乗せて
真夏日 ....
ページを捲っていくと
その先に
廃線の決まった駅がある
名前の知られていない従弟が
ベンチに座って
細い背中を掻いている
とりとめのない
日常のようなものは延々と続き
梅雨の晴れ ....
ファミリーレストランで食事をしていると
同じ形をしたファミリーがやって来て
西の方角から順番に着座した
ブラザーはシスターに
シスターはマザーに
マザーはファーザーに
それぞ ....
味噌汁の中をラクダが泳ぐ
どんなに泳いでも
沖などあるわけがないのに
僕はボートに乗って
ひたすら豆腐を網ですくう
今晩の味噌汁の
具にするために
いつまでこんなこと ....