夏休みになると自転車で旅に出る男の子たちがうらやましかった。
大きな国道沿いの集合住宅から、蝉のぬけがらを轢いて、
日差しに溶けないように黒くなる細っこい脚の駆け出す
立ちこぎの夏を横目に、わたしには初潮がきた。
プールに行けない理由もうやむやにして去年とおんなじ
アニメを眺め、かあさんの置いてったおにぎりを食べた。
まだクロールも下手だった。

初めてのボーナスが出 ....
風は無い

私と
あなたのすき間には
いくつもの
透明な夜が並んでいる

わたしはマッチを擦る
あなたに語る言葉を
探すために

わたしとあなたが
共にいた時間を
つなぎ合わせて
一本のロープの上に
置いたとしたならば

それは明け方の光より
長くなるだろうか

私とあなたが
共にいなかった時間に
わたしは
あなたが知らない香りを
放ち

あなた ....
老舗の焼き鳥屋には気の強い妻と
やたらに人のよさそうな爺さんが目尻を下げて
火鉢の上に並ぶ焼き鳥を丹念にまわしている

妻は若く 爺さんは見たとおり年老いて見えるが
本当は逆で 爺さんが若く 妻の方が年老いていた

ふたりの年齢がひっくり返ったのはいつからだったろう

ふたりは夜毎焼かれる鳥の夢を見る
次の夜に見た夢の中で、妻が鏡をみつめていると
背後から 鳥の顔をした夫が足 ....
いつもほんの少しを数えたくて
それは真っ直ぐに見えない夜のために
道に帰れないその日のために
僕が、ほんの少しを数えたくて
出来るなら、そんな僕のことを
少しでも待っていてほしい、とか



1、と数えて
これから僕が始まっていく
帰りたいとは思わない
はずだった
積まれていく昨日と
今日という今日のために



遠くの街で、空が揺れて
人たちが揺れていたらし ....
またもどうでもいいことを勝手に書きたいと思う。
以前から、人種差別する人間で知られている俺だが、
「また今回もかよ」って程度で読んでくれて良い。

最近、語学学校に来た韓国人がいるのだが、なかなか良い奴だ。
17歳で、高校は一ヶ月しか行ってなくて、
日本で言う大検みたいなのを取得したそうだ。
親が海外に行かせるらしく、本人も乗り気で、いろいろと世界を見て回ってるらしい。

何でも ....
間違いを犯さずに
生きていようとつとめてきた
  少なくとも
    大きな間違いだけは

生後 という
言葉がある
生まれた 後
という意味だが
つまりはこの世に参入してからの
ことを言うのだが
生の 後
という意味にも
とれるかもしれない
生まれて 生きて その後
つまり 死 だ

こんな言い方をするのは
間違っている だろうか

僕のもとに訪れる
生 ....
のこされた風の中
四月がやって来る
この思いをのこしたままで
新しい輪に入らなければならない
記憶を背後の倉庫に閉じこめて
残酷な月が始まる
すべての匂いや音や色が
われわれを呼吸困難にする
四月は
笑いながら人を生き埋めにする

のこされた食事を台所に捨てて
われわれは暖かな日へと備える
この思いをのこしたままで
古い尻尾を踏みながら進む
陰惨な月は和らいだ闇の片隅 ....
くたびれた頭を枕にあずけて
今日をほどいていく
僕の一日の終わりに
ながれはじめるイメージはいつも同じ
恋しいひとの部屋までの家路
急な坂の上、五階の角の窓、
高みに近づいて行く僕の足
坂道の引力
眠気が手伝って
また帰れないね
始まってしまった旅はまだ
ずっと長く続くから
きみの窓辺の青い花がまだ
うなだれないよう祈りながら眠るんだ

昨 ....
音楽好きな老人ホームの所長と 
週に1回演奏してくれるピアノの先生と 
介護職員の僕と 
レストランで夕食を共にした帰り道 
最寄の駅に先生を車から降ろした後 
夜の{ルビ空=す}いた国道を走りながら 
助手席の僕は最近気になっていることを
所長に告げた 

「 同僚の M さんが元気ないんですよ・・・
  去年の夏長年付き合ってた彼と別れてから 
  胸にぽっかり穴が空いて ....
胎児に似たその耳は
いつまでも
うずくまったままで
大人しく
聞いている

純粋なんだね

だからだろう

言葉という言葉すべてを
ご丁寧に外耳の
柔らかな軟骨に
滑らせてしまうのは

ひんやりとした
暗い穴へ
消えていった
それらが
行き着く先は
いったい
どこなんだい

君の体の
どの部分に
たどり着くの  ....
わたしの
内臓に
広がっている
四次元の宇宙に
向かって
こんにちはと
声をかけると
いつぞやの
バービーが
ケンとともに
儀礼的挨拶を
返してくれた

ありがとう
こちらこそ

床につくと
ごったがえされた
宇宙が横になるので
軽い吐き気を
もよおした

だから
あたしは
いつも垂直に
寝なければならない
のであった

意識をせずに
右足 ....
幹さん、
どうでもいいですけど
高円寺のキャバクラで詩人っていう名刺配りまくるのはやめて下さいよ。
大将二号店で2本目のつくねをほおばりながらキムがつっけんどんに言い放った
どうでもいいけどキム、それ俺のつくねだで
キム、
つくねばっか食う奴はいい詩が書けないよキム
キム
キム






キム。。。














入れたら ....
ぼくが包茎だったころ
アフリカはとおく
象の足は八本あった

あのひとのほほは白く
うつむくまつげは長かった
どんな人にも天使のように微笑むので
誰もが自分はあのひとに愛されていると勘違いした
ぼくも例外ではなかった

十二本足のしまうまにまたがり
ぼくとあのひとは
地平線へむけて駈けた
あのひとのももいろの乳首をやさしくつまみ
いろいろな制服を買ってきては着せ替え
 ....
滴が昔に還る
雨音が車の騒音に擦れて
記憶に消える

誰がなんと言っても
僕は夢の意識の中で
生く年を生き

見える過去の中で
描くのは
まだ見ぬ絵

チャンチキ チャンチャンチキ
歩く
消えた道を果てしなく

全てはあの日だった
なんて 言い訳も
驕る心に積もり
道除く見違えも
時の陰りに流行る

嘆息はいきり立つ鼓動の果てに
須らくをもって断たれ
 ....
日が昇って
息を延長してとどきそうな空は
その端を薄ピンク色にふるわせ
面倒を散らかしたまま押しやってしまう

力の限り力を抜いて
今日だか明日だかわからない日の午後からの
予定をなぞる
異星人のようなふりをして

ぼくらがいつも気づかずに通り過ぎる
午前5時はまぼろしのように
小さな鳥が
世界ということばを知らないまま話す

日が昇る
息を延長す ....
僕が以前働いていた特養で十三年生活していた
身寄りのない K {ルビ婆=ばあ}ちゃんの告別式が老人ホームで行われた日の夜
他施設との懇親会が行われ、
僕は「はじめまして」とテーブルについて
「乾杯!」とグラスを重ね、幸せそうにご馳走をほおばった

向かいの席に座る素朴で明るい笑顔の女の子は
奄美大島から来たそうで、島の話で会話が弾み
ビールで顔を赤らめた僕は
自己紹介代わりに歌う ....
たった一つの君は
風のように吹いているが
たとえば
コートのフードを躍らせたり
トマトの表面にとどまる水滴に光を与えるとき
微かな掌の温もりに似た質感を残していくのだ
そう 僕らはかつて原始の海で愛を語らいもした
今はただ
君に相応しい鉛筆を削ろうと思う
老人ホームの廊下にぽつんと置かれた
老婆の横たわるリクライニング

動かない首をギブスで固定され
閉じた瞳を{ルビ顰=しか}め
入浴の順番を待つ

「{ルビ今日=こんにち}は」

身をかがめて声をかけると 

「首が痛い・・・助けてください・・・」

か細い声は繰り返される 

黙って細い肩に置いた手のひらを
{ルビ浴衣越=ゆかたご}しに老婆の{ルビ体温=ぬくもり ....
卵が呼吸している
産声を内に潜めながら
類ない曲線で肋を明るく丸めて
{ルビ縁=ふち}を暗く発信し
ゆるやかな衝撃で交信するので
次元はゆらぎ鳴いている

重ねてきた年齢に
皺を深く刻むほどに
うまれる響きの無垢なる声が
邪魔されることのない空間で
私に復讐をする

分裂していく声音の
朧な艶に乱れることなく
構築していく一個の呼吸する卵
自らへくぼんでゆく
強度 ....
ともすれば、その人の
冷たい朝なのかもしれない
天井はいつも通りにぴんと張り詰めている
とりあえずは、流行の
そこから外れた道の街路樹のなびく姿を真似て
まずは珈琲をすすることから始める


一番に訪ねてくる人は

            一番に訪ねてくる人は、その日
            朝を吸い込んで遠くへ
            視線はここよりも遥かへ
      ....
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
これは骨のかけら
それとも砂糖つぶ

はちみつのようにとろりと濃い夜が明ける


そして
すべての青空のしたのありとあらゆる屋上で
わたしはわたしのうつくしいひとを抱く
ゆっくりした音楽ででたらめなステップをふむ
うつくしいひとの腰を抱く
オレンジジュースの ....
わたしにゆるされることは手をかさねること
六月の墓地でしゃがみこんで草笛を吹くと
わたしの手はやわらかい土のように
生まれたてのなめらかな手を覆う



(ささやくのはありふれたうたのような)



六月生まれの娘は草むらのあいだの道をあるく
雨は掃射砲のように草をちぎり
娘ははずむ息で低い空を見上げて呼吸がつまる胸をだきしめる
緊密な空気をかたいパンのようにして喰いち ....
わたしは5万円です
と、うそをついた
ふさがったままのきずだから
ごまんえんごまんえんごまんえん
20歳処女

会うと言った30の男
なんか頭いいやさしさで近づくもんだから
困ってたのにタダでやってしまった
はじめてすこしきもちよいとおもった

誰にでもある温度だけじゃなく
その男でなければ
なんだろそれは

相変わらずわたしは部屋によび
 ....
アル中男の逸話      祷瀬チカ 
頭を抑えてやっとの思いでベッドを起き上がると握っていた目覚まし時計は昼の二時を指していた。何の気なしに、手を差し込み両手を広げると、差し込んだのは昨日の夜出かける前につけたサスペンダーだ。やっと自分の着ているものがパジャマでなく夜出かけた格好のままだと気づく。ここはベッドかと思っていたがそこはソファの上だ。昨日の夜どうしたか。
そう、そうだ一杯引っ掛け ....
左の足には左の靴
右の足には右の靴という
どの人間でも頷けるだろう
数少ないコモンセンスを
わたしはそっと破っている

このピンクのペタンコ靴は
両足とも右足用である
ので
幾分右に傾くからだは
まっすぐを
苦手としている

過ぎ去る人々が右と左の足を正しく
無意識に放り投げてている間

そんな靴に運ばれるわたしは
そちらの絶え間ない
誘いにかられながら
足跡 ....
わたしがなにかを破壊するのは
これが最初ではない
路地裏に落ちて砕けたガラス
影のささない正午の広場
舗道をめぐる人間の群れ
音楽は次第に雑音となり
女王が不吉な命令を下す
彼女の声は叫びよりもはるかに高い

わたしがなにかを偽るのは
これが最初ではない
口から口へ伝わる噂
単純で意味のない標語
回線をめぐる情報の道
観念は次第に妄想となり
女王が不吉な命令を下す
 ....
詩人は動かぬ旅人
時には持ちきれないほどの荷物を
時には水筒一つを
大事そうに持っていく

旅先であった女を
触れ 撫で 愛し
そして闇に押し込み
またどこかへふらふらと向かっていく

歩を進める度に 血がぽたぽたと地面に滲む
痛みを伴わず 色は思想と情念の残りカス

詩人は動かぬ兵隊
時には重い重い完全武装で
時には刀剣一つで
何かへ向か ....
なずさふなつことのはさらさらと
なづさふなつことのはさらさらと

流れることのは 指をすりぬけてゆく
つま先から伝わる水温
ひんやりと冷たい感触
ひきさかれてゆく
目を背けて すくいとる
それでも 万有引力には勝てず 落下

したたり落ちた雫 君の掌に
いくえにも重なった雨音 蝉時雨をしのばせて
ゆうだちのにおい 握りしめたビー玉の記憶
いなびかり ぴかりと光っては消える ....
 幼い我が子に虐待を繰り返し、死に至らしめてしまう父親の一人称の詩を書きたいと思った。その父親自身が過去に受けた(かもしれない)虐待の話は書かず、でも徹頭徹尾主観で、どうして自分が虐待をしてしまうのかも、どうして周りがいつも自分を虐待に追いこむかのように理不尽に責めたててくるかも判らず苛立つ男の話を書きたいと思った。

なるべくぐじぐじと、具体的に。言葉にならないどろどろを塗りたくるように。 ....
アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler、俳優、1989年4月20日 - 1945年4月30日)

1889年4月20日、ドイツとの国境近くに在るオーストリアの小さな町ブラウナウで税関吏アロイス・ヒトラーの4番目の子として出生。1895年、フィシュルハムの公立小学校に入学。3年生の時、ラムバハに転居・転校。
1900年、小学校を卒業しリンツ実科学校に入学、二度の留年を繰り返すが、その ....
窪ワタルさんがポイントを入れずにコメントしたリスト(47)
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