お月見


少女は青い服を着て

ひと晩ぢゆう恋文をかかずにゐた

姉さんの形見のコーヒーカツプに

月をうかべて


{引用=(二〇一八年九月二十五日)}

 ....
いつぽんの川がながれてゐる。

川べりの道は夏枯れた草に覆はれてゐる。

川はゆつたりと蛇行して その先はうつすらと 野のはてにきえ

太古の記憶へとつづいてゐる と村びとたち ....
誰が私に声をかけなかつたのかわからない。

葱の花がしらじらとした土の上でゆれてゐる。

その下に妹の骨がうめられてゐる。

捨ててしまはなくてはならない。


丘をこえて夜 ....
なにか

白い ものが

のこされて ゐる


うまれたものが

去つた そのあと に

そしてこつちを

みつめてゐる


長い午後に

時が

裏返 ....
うつくしいひとたちに遇ひ

うつくしいはなしを聴きました

空はたかく 澄んでゐました

かなしみはもう とほくにありました

よろこびは すぐそばに そして

手のとどか ....
鳥の船が沖をゆく 夏の朝

雲の峰が溶け やがて海になる


{引用=(二〇一八・八・一〇)}
白いりんごをのせた皿に薄陽がさしてゐる。

月をたべた少女が硝子の洗面器にそれをもどした。

日が暮れる。わづかに年老いてゆく。
   Ⅰ

わすれてもらへるなんて
うらやましいことです

たれの目にもふれず
こころのうちに咲き
たれに憶えてもらふこともなく
たれにわすれられることもなく
時のは ....
{引用=   The Evening Prayer}


だんだんみじかくなる

{ルビ滴=しづく}よりも


もうきこえません


うけとつてく ....
猫がちひさくねてゐる
がらんとしたひる下がり

友だちの本棚に
一冊きり のこされてゐた
うすい詩集をひらく

表紙は白 何もかかれてゐない

一ページ目
「私 ....
かわいい小鳥が鳴いてゐる

かわいい小鳥が鳴くたびに

肩がずきりといたい


ええ わたしは鳥だつたんですよ


ひとのゐないところでは

いまでもときどき鳴 ....
猫といつしよにすはつて
落ち葉がものすごいいきおひで
木にもどつていくのをみてゐました

世界がどんどんまき戻されて
文明がはじまるまえの
澄みわたつたあをぞらにもどりまし ....
花がしづかに揺れてゐる。

その横に小さな言葉がおちてゐる。

姉さんがそれをひろつて、お皿にのせた。


子供たちは外であそんでゐる。

まぶしいほど白いお皿に ....
{引用=米カリフォルニア州の出張先にて父危篤の報に接した日の深夜一時、外に出て見上げた空に浮んだ月を見てゐるうちにふと現れたことばを記した。その約六時間後、日本時間の八月十日午後十一時五十七分、父逝去 ....
石村(74)
タイトル カテゴリ Point 日付
掌編二題自由詩19*18/9/28 1:33
小さな村で見た自由詩22*18/9/20 11:01
自由詩10*18/9/12 17:07
白いもの自由詩10*18/9/10 23:09
自由詩15*18/9/2 17:05
水平線自由詩7*18/8/29 17:52
日暮自由詩10*18/8/29 17:48
春のスケツチ三題自由詩19*17/10/13 8:56
晩祷自由詩12*17/9/30 1:06
自由詩10*17/9/24 1:14
肩がいたい自由詩8*17/9/17 0:58
もどつていく自由詩16*17/9/8 0:11
草色自由詩19*17/8/31 1:39
月の夜自由詩12*17/8/24 22:26

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