ひな人形の首落ちる

 経験がまるで役に立たず鏡見つめる

 おんあぼきゃべいろしゃのうそこまでやっと覚えた

 きょうはよくくるくる回った

 ふるさとは回る水車の音に満ち
 庭に他所の猫来て欠伸する

 夜更かしゝて何も得られず

 分譲マンションの壁剥がれ落ち

 丸い月のような蓮のうてな

 種つまんで突き指
 風が砂がまだ冷たい

 波濤の先で噎ぶ

 焚き火に当たる人ひとりふたり

 裸足の足跡が減ってきた

 砂浜に雪積もりわんこの足跡
 灰の中星が散る

 夏越えて明日も草刈り

 田畑を売る

 涙こぼれる程曇天白く

 階段踏み外してもよかったね
 句を詠んでも明日は来ない

 思った以上に続くしつこい日常

 盆栽の白い実食べられるのか

 さらに狭くなる渋谷の空

 遺影を伏せる
 土手の土筆摘み椿落ちる

 うるさいほど雲雀の声

 神籤の運誤魔化してまで福待つ

 自転車のブレーキ音朝を連れてきた

 今日最初に会った人におやすみなさい
 意固地になり夜が明ける

 周りに笑われ東へ西へ

 枯れすゝき行き場なく春迎え

 夏の潮風の中 檸檬に恋する

 子猫揺りかごに乗せ夕餉待つ
 竹の花まだ見たことがない

 柱に触れようやく春来た

 野には野の事情と掟がある

 家遠くまだ帰る道もなく

 針を手に集める
 かわいそうな大寒の日差し手で掬う

 締め出しを食った日指折り数え

 死なゝいがする事もない

 定量の飯すべて夕に食べる

 これこそはと目を覚ましてみた
 ラップだかゲップだかうつくしくないもの要らぬ

 黙して秘めず桜のはなびら

 直ぐに起き出し座布団をしまう

 ひとつくらいは嘘もまことへなってほしい

 心中を察され居心地悪い
 春疾風吹き荒れ浮かれる

 春も来て日記帳また開く

 何でも買って気を静める自粛の日

 流氷北から流れみしみしと

 青葉の裏の幸せを見つけ
 裏返しざまあみろ繰り返したくなる

 手も足も出るが動けない

 タニシ取り水槽ないことに気づく

 歳時記で今の季節探し

 近所で最後の書店もいつしか閉店
 寝付けず深夜ラジオ聴く

 扇風機しまうのまだ早かった

 かき氷から匙ひとつ抜けない

 退屈とは争うべからず

 禍も転じぬ平凡な午後迎え
 世の中乱れゝばそに応じ詩人増える

 眠れずじっと棗球見つめ

 財布の替え時しくじる

 己に言い聞かせ詩を綴る

 パーコレーターでコーヒー淹れる
 自由すぎる自由律を毎日心がける

 友人の知人など所詮は他人期待などできぬ

 感謝なき輩のなんと不快なこと

 よく冷えた味噌汁温め直し
 
 まさかあれが滅びの呪文だったとは
 防波堤からほろ酔いで月見上げ

 渦に今宵の風の行方を訊ね

 先週花開いた木の枝に雪積もる

 待つしかないので手を洗う

 南の島の朝霧とバナヽに恋する
 退屈の世に馴れ溜息

 人知れず退屈と向き合う

 そのうちあなたの窓辺にも退屈

 背中に隠す退屈の本質問われ

 緩い退屈に身を預け眠る
 青い月頭に降り注ぐ宵の口

 パグの群れ牡蠣にしか見えず

 本の1ページ欠け全てを失う

 日記書く間に寝落ちし朝まで

 何の役にも立たぬ経験ばかり積み
 鍋物に柚忘れ山に入る

 いつか醒めなくなる深い眠り

 クリスマスの首はねる12月26日

 犬に咬まれ尚も上機嫌

 あぶく眺め手をこする
 昨日あたりから隠れる支度始める

 無花果の木の下で待つ

 家族の一部の興味は引く家

 敗者の行列踏切渡っている

 一輪の花地球の裏で咲き
 昨今飲めないタブレット増える

 何かと大きく臭くて不便そうな紅い花

 都落ちの達人と呼ばれ

 落ち着いても水が飲めず

 窮して尚道草が恋しい
 天女に褌盗まれた

 ビール瓶脳天直撃しビールかけ恨めしい

 山裾の河原 桃に恋する晩夏の風

 今日もまた左足から外に出る

 羮に懲りて二度とは口にせず
 此の場所でだけ思い出す懐かしい顔

 寸でのところでまたゴールが遠のく

 韜晦の笑い心の底から後悔

 振り返っても誰もいない

 友人の数よりフォロワーの数
 夢でも逃げ出した初恋の人

 流れから外れそを眺める

 金魚鉢割れて夢が散る

 月より使い来てゴミ袋持って去る

 己の意思より地図の上のピンに従う
 毎日が無念記念日

 一瞬の口から出任せの責任背負う年月

 ゲームに熱中するその姿寒々しく

 生まれる前の記憶と責任逃れ

 この場所にこれまで誰と来たのか悩む
 さびりかげでもなんじょもなんね

 残暑の道端で西瓜切る

 眼鏡曇って道踏み外す

 たゞならぬ光景も三日で見慣れる

 夕暮れ時包丁をしまう
 軌道と言うより線路

 青い鳥に逃げられる夢ばかり

 空き地に群れるカラスの数かぞえ

 通り過ぎる電車どこへ行くか気にかゝる

 ずぶぬれのまゝ海へ行く
 足音潜ませ希望の明日逃げてゆく

 銃口と言論が今日も人を踊らせ

 夜中のゴミ捨てにも概念を分析する

 ネギ切って朝が来る

 三遍回って自由と叫ぶ
 デイライフにコミットでもしてみるか

 対岸の島から悲鳴が聞こえる

 雪だるま避けわんこ歩く

 外から見ているだけで良かった

 昨日よりもさらに縮む
 あんなに渇望し翌週は机の下

 そんな道具あったなら隠遁しなかった

 時計多く持ちまた約束守れず

 勝手にそれでいゝと決めるな

 謂れのない言葉死ぬまで呪い続ける
遊羽(197)
タイトル カテゴリ Point 日付
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