ロシアでもドイツでも
三人兄弟の末っ子は
けなげでありたくましい
日本の三人姉妹の末っ姫は
異界に嫁いで人間世界を救う
水の不足は命の危機
日照りの続く田の畦を這う小蛇と
交わし ....
サッシュの窓といえども二十年もすれば、ひずみも出るし、隙間も出来る。
夫婦の間にもずれや、隙間ができる。
若い頃は埋めようと色々と努力して、かえって息苦しくなった。
年経て、諦めたのか、ゆとりが ....
闇を切り裂いて走る稲妻に
たたき落とされたトカゲが岩礁に絡まれ
つぶされて息絶えようとした日
不規則な潮の流れに珊瑚の枝がきしみ
剥離した細胞から芽生えた
悲鳴が海を漂い やがて群れて渦 ....
路地裏を通り抜ける豆腐屋のラッパは
夕暮れによくにあう
かくれんぼの時間が削り取られて
ひとり帰り ふたり帰り
隠れたまま鬼から取り残さて
気がつけば夕闇につかまっていた
どこ ....
名前を呼ばれていつものように 診察室に入る
顔も見ないで どうぞと言う医師
顔も見ないで
「不整脈は 落ち着いているようです」
と言いながら シャツをぬぐ ....
視界の開けた農道の十字路で
車同士が衝突する死亡事故が
今年二件も起きた
屋根の上の仕事師は言う
屋根の上が安全です
棟は細くておっかないって?
歩く足の幅が有れば十分 ....
体の中を這い回るヤスデのような生き物と
近くを流れる水の気配に目覚める
が 眼は閉じたまま
それでも見える
隣のテントから覗く逆三角形の顔
とがっ ....
夏の庭には自然が蔓延る
カマキリが三角頭をかしげ
雑草が繁茂して人間の通り道をふさぐ
その葉裏からわき出る蚊 這い出すヤスデ
ときには蜂が茂みに浮かぶ花を尋ねて
低く飛行する
手入れし ....
生まれてからぼくは
姿のあるものに名札をつけてきた
手に触れるものや 目に見えるもの
目に見えない小さなものにも
ぼくの周りの森羅 ....
かつて 人は
真夜中に天井裏をばたばた走る音に目覚めても
ネズミだと知れば安心して眠った
家で餅をついていたころ
鏡餅を刻んで 部屋に広げた
子どものおやつを作るために…
だ ....
吊り橋の真ん中で二人は懐中電灯を消した
月も山の木立に光を隠した
手を延ばせばそこには異性がいた
何時も顔を合わせている相手だったが
不意に訪れた二人だけの世界に戸惑って
互いに黙っ ....
目覚めはじめた街の夜を 置き去りにして
東京発二〇時三〇分 のぞみに乗り込む
この列車に乗って人はどんな望みを持つのだろう
あるいは捨てたのだろう
夜と昼の混濁したこの街は わたしに ....
月はね 二つあるのだよ
望遠鏡から離れて 自分の目で見てごらん
三日月の尖ったあごは二つに分かれているだろ
昔の人が見た乙女や兎が住んでいる月
今見る乾いた月の後ろに少しずれて
ぼくに ....
アメリカ帰りの若い女教師はあきれたように言った
「水族館の水槽を見ていた若いお母さんがね
幼稚園児くらいの子に言ったの
あのマグロ美味しそうだねって
「ぼくだって水槽の鯛や海老を旨そうだ ....
古いアルバムをひろげ
遠い国の人を見つめるように
父や母の写真を
一枚いちまい確かめている妹よ
おまえを世に残して消えてしまった母の
記憶がないからと言って嘆かないでくれ
ぼくの ....
タンスの上置き 小引き出しの奥深く
潜められていた桐の小箱
黒ずんだ表面に彼の名が沈んでいた
初めて見る彼自身の臍の緒(へそのお)
波立つ胸を押さえ 箱を開く
母はこの管を通して
....
ひんやりした部屋の鴨居(かもい)
黒い額縁の若い女に寄り添った老人
の真新しい写真に目をやり
タンスの引き出しを開ける
引き出しいっぱいに満 ....
棺は静かに炉に入り 錠が下ろされた。
男は 合掌している彼を扉の横に連れて行き
ボタンを押せと言う
「それが後を引き継ぐあなたの役目だ」と
うなり始めた炎の音を確かめ控え室に戻る ....
病室に眠る人の腕に滴下する液は
機能を失った腎臓をすり抜けて全身を潤し
枯れた膚に青く透けるような艶と張りをみなぎらせた
目で合図を送って廊下に出た医師は
一緒に出た家族に覚悟 ....
視覚には捕らえなかったけれど
感じてしまった
小さな淵に潜んだ眼
その頃
山奥に完成したダム湖では
人を呼び 春を楽しませようと
貸しボートを浮かべていた
まだ観光の人もいない早 ....
陸に上がることなど望んでいなかった
沖から寄せる波に乗せられたのだ
いつになったら戻れるのか
オットセイだったら良かったのに
だが人の助けが無くては水の上でも
自由には動けない
ましてや陸 ....
ウニは一つの口で済ませてしまうけれど
多くの動物は摂取口と排泄口がある
かつて
日本の家は出入り口が二つ以上あった
公式な訪問を受けるのは玄関
日常出入りする家族や
御用聞きは勝手口
....
ベランダに出る
たばこを取り出す
火を付ける
煙を吐いて見上げた空
ぼんやり白い雲
切れ間に
オリオンの三つ星が
行儀良く並んでいる
カーテンから漏れる居間の光が
隣の家の壁 ....
初めて会ったきみはあどけない顔の
いたずら好きな中学生だった
母子家庭の一人っ子だったきみは
わたしの中に父を見たのか
以来様々な報告をしてくれたが…
自分をコントロールできない意志の弱さと ....
人間がうさぎを喰っていたころ
うさぎたちは月へ逃げた
いま うさぎを喰う人が無くなって
うさぎたちが青い星へ帰ってくる
風の朝 小高い山から眺める海に
浪の上を走る姿が見える
上空を通過する物音で目覚め カーテンを開ける
暗い夜景が流れ込む窓に 目を見開いた未来が
こちらを見ている
慌ててカーテンを閉じ 再びベッドの倒れ込む
わたしの見たいものは薄くなった ....
昔
会社の中の仮面に疲れた人が
仮面を脱ぎ捨て 本当の自分になろうと
素顔で生きようと 闘争を挑んだ
だが
周りの仮面はそっぽを向いて
会社の素顔から出るむき出しの刃
....
わたし時間です
あなたの時間です
わたしはあなたの中にいます
だから
わたしとあなたは同じです
わたし時間です
似ていますが痴漢ではありません
でもあなたはわたしがうとうとしていると ....
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