真夏の図書館では
人の歩く音や
本のペエジを開く音
キイをならす音などが
美しく
混ざり合っている
サリ サリ サリと
新しい音を作っている
サリ サリ サリ サリ
キリ キ ....
活動しない雲は
たいてい灰色をしている
海の上に
面倒くさそうな
固形物が
存在する
白い犬
がそれを見ている
黒い少年
がそれを見ている
そんな淀みの中の
なんでも ....
波打ち際に
打ち上げられた
白
い木の
生
の部分が
別の情報
に置き
換えられ
死
はそれを
流木へと
昇華していった
白
い影が
太陽光に焼かれて
炭化してゆく ....
ことと
置いた所から
緑の深い村の
ひび割れた
土瀝青が広がる
夏のまひるは
黒く歪んで
両の手におさめ
土の道を
寂しくあるく
芒の夕闇
底溜まりに見て
目を細くした ....
1
小糠雨の止む
午前十時の
霧起つ街路では
弱い日光を
全身に溜めた
雨粒が
エレジーとともに
消える
無色透明の中の
一筋の色ガラス
たちの群れ
粒子のように渡 ....
借りたてのアパートの
白い壁の
ざらざらした
感触に
うつろな視線を投げかけている
手のひら
からはじまる
小さいメソッド
何時間も壁ばかり見つめています
することがないので ....
水の国に生まれ
綺麗な水を飲んだ
からだ
が穏やかに波打つ
朝のプールに浸されている
エンソサラシの個性
思考
思考は本を読まない
水を飲む
綺麗な水
今日
はじめて ....
煙草の銘柄で『LARK』と書かれた、ちょっと昔によく在りような細長い円筒に底蓋のついたゴミ箱を使っているのだが、なんというか、勝手の悪いゴミ箱で大きなゴミ袋を掛けると筒が細い分、袋に余りが出来てもっ ....
だあれもいない
夜
に
ゴキブリ
が出た
バカだなこんな
所にのそのそと
出て
くるなんて
殺そうか
でも
見なかったことにしたい
そんな判断で
成り立っている
....
(幕間に目覚めた)
何本かの直線によって
平面上に
パースペクティブを作っている
秀逸なポスターの
消失点を見つめ
インクの黒色のその部分は
真っ黒な宇宙空間として
激しい砂嵐 ....
クラシックの呟きに
大気までもが
眠ってしまう
信号機の
明滅する夜にも
確かにいる
歩いている
星が流れる
星を集める
夜という鳥は
光るものが好き
採ってきた
星を
....
なんでもない窓辺
縦長いシルエットの
木がカーテンの隙間から覗き
黒い鳥が音もなく羽ばたいている
低刺激な窓辺
つまらない
そんなものいらない
雪を寒天で固めて作られた
壁に背 ....
坂道で
暗い街灯の暗い
坂道の中腹で
小さな子ども
がいる
座っている
あの子ども
知っている
知っている子ども
お母さんの
帰りが遅いので
坂道に
座りにくそうに
....
漁村の上空には
薄墨を流した
空が広がる
風つよく
斜めに傾く
松はつらく
ゆられている
歩調をゆるめ
この白灰色の村
確かにあるはずの
日常を
一歩ずつ
踏み潰してゆく
お ....
松の木で作られた
防風林を抜けてゆく
秋風
旅立ちの日なのですね
鞄の中を
何度見直しても
なにかをあすこに
置き忘れてきたような
十月は
指先に感じる
わづかな冷たさに
....
暗い室内
小さいフグが
水槽の中心あたりを
一匹で
小さく旋回
しているのかと
よく観ると
あ
外側の皮膚と
内側の皮膚が
ひっくり返っている
ひっきりなしに
水槽越し ....
ハルジョオンの咲く原の
明るい緑の草陰で
誰かが声をあげ
泣いている
白い帽子の
白いブラウスの
よく光ったまひるのできごと
こんな
二等辺三角形を
埋め込んだ
見たこともない
青が
備わる
午後の影を
見遣り
フレームだけの
都市には
ガラスの雲
が置いてあるので
立体ラジオの
気象予報士は
....
電車の座席は
前から二両目
真中のドアから入って
進行方向を向いて左側の一番近く
いつも同じ席に座るよう決めている
これからの一時間
を有意義に
過ごすことを目標に
新書判を開く
ス ....
池
ではなく
貯水池
だけれども
凍てた閃光が
ホテイアオイの
固い結びを
解いてしまい
水辺
の朝は
心を痛めている
木々は影を
濃く
長く
落とす
けれども
そ ....
日差しに焼けた肌が
深夜の電光に溶けている
胡瓜は
フルーツだろうか
という議論を
今し方
あの白い壁の向こうに聞いた
そうだ
もう
夕焼けのときめきが
透明な鴇色のレイヤーに ....
午後3時
熱い風の中で
詩を読んでいた
ベランダ
僅かな波の音
カモメの声
が途切れる
その向こうに蝉がいた
部屋は暗かった
出かける準備を
しなければならなかった
....
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