蝉時雨が聞こえない夏
外を出歩いていないから
なのだろうかそれとも
夏の暑さは茹だるよう
確実に季節は巡る
けれど蝉の声に存在感がない
これは何だ
聞こえているのに感じて ....
ルノアールで珈琲を飲む
革張りの椅子に座り
香りを楽しむ
入っては出て
出ては入ってくる
人を眺めながら来し方行く末を思う
大学生のころ
通っていた喫茶店はルノアール
だったか ....
もう終わりだ
と思ったのは雨に
濡れた瞬間だった
世界がゆがんだ気がした
水気を含んだ髪を
乾かしながら
僕は
思う
何処にも逃げ場所はない
と
静かに雨が降ってい ....
抱えきれない秘密を携えて歩く
頬をなでてゆく風さえ感知できずに
あの夕焼けは何だろう
燃え落ちていく太陽が近くて
僕は崩れ落ちそうだ
愛することと憎むこと
表裏一体だなんて陳腐だっ ....
虹の画家の回顧展を見に行った
虹のグラデーションで染め上がられた
フォルムの絵ばかりが流布していて
そんな絵しか描いていない
と思っていたから
異形のフォルムを纏った
怪物のような ....
でんでろでんでろ
はしりゆく
おおきなはこの
わびしさを
おとでごまかし
すましてる
どこまでゆくのか
しらないが
きょうはすがたを
あらわさぬ
でんでろでんで ....
風が吹いている
為されるがままに立っている
貴女
は僕のことを見ていない
空は晴れている
在りのままを見ている
僕
は貴女に語りかけることできない
凪の海
水平線を見ていると ....
この町は山の手と下町の境
この町は台地と低地の境界
だから坂が多くて
上ったり下ったり
息を切らして歩いてる
中層マンションと
2×4住宅とスーパーマーケット
小学校からは子ども ....
雨が降っている
傘がない
濡れる
冷たい
ふるえてもいい
のだろうか
僕は
家への帰り道
あと十数分で
辿りつける
冷たい雨
ふるえる前に
拭き取ることがで ....
誰が来るというのだろう
誰か来るとでもいうのか
夜の街角で人を待つ
そうじゃない
僕は君が来るのを待っている
君が僕を呼んだのだから
夜の街角で人を待つ
街灯もない街道の端
手 ....
どこまで走っていけばいいんだ
牛丼屋が見つからない
走り続けていたら海に出た
波の音に誘われるように
海岸沿いのパーキングに車を入れて
砂浜へ
薄曇りの空は曖昧に青く
海は瑠 ....
湿った空気
それはイメージだけのもの
なのかもしれない
けれど好きなんだ
曇り空のもと
太陽を見失ったまま生きている
それでも十分すぎるくらい
明るいのが不思議で
どこから来る ....
こんなに気温が下がった日は
手袋をしていても指先
かじかんでいる
足早に歩いていく
肩を丸めて
我が家まで
あと半分のところ
自動販売機の光がポッと点っている
コインを投入 ....
乾いた砂が流れていく
ここは砂漠
ではなくて背景のない場所
光があふれているわけではない
のに白く抜けた背景
足元の黄味がかった砂の感触
だけがすべて
風に乗って運ばれてくる
....
この海岸に来るのは久しぶり
君は言う
砕けた貝殻が打ち寄せられてできた海岸は
真っ白で清潔で一枚の絵のようで
だからこそ居心地が悪くて
けれどそんなところを君は気に入っている ....
こんなに遠くまで歩いてきてしまった
と気付いてしまったらおしまい
帰り道が分からなくなるから
新開地の産業道路には殺風景な風が吹く
停留所でバスを待ちながら君と見上げた空は
砂埃が舞って ....
強い風が吹いている
頬を刺す/身震いする
そんな日の空は真っ青で
遙か彼方まで澄み渡っている
昨日
君に投げつけた言葉を思う
今日
君から投げ返された言葉を噛みしめる
....
歩いている夜の住宅街を
妻とふたりでゆっくりと
曇りがちな夜空
薄墨色の雲
ポツリポツリと
一言二言言葉を交わしながら
ただそれだけのことなのに
このごろすれ違っていた心 ....
何度も聴いているはずの曲なのに
今日はなんだか新しい音が次々と
聞こえてくるこれは一体どうした
ことだろういつもよりボリューム
が高いだけなのに指先のしびれを
感じながらもしかしたらこの痺れ ....
子供の頃
長瀞に家族旅行をしたときに
自然博物館でだったか
鉱石標本を売っているのを見つけた
10cm×20cmの小さな箱に
縦3列×横4列=12ます位の仕切りがあって
鉱石の欠片が整 ....
轟音と共に運ばれていく先は
東京
それとも母のいない世界
窓の外の闇
深さが分からなくて
何処に居るのか分からない
目を瞑る
轟音
途切れる意識
覚めてまた
轟音/深さ ....
セルロイドの花が咲いている
背景のない淡い闇のなか
赤い花も緑の茎も葉も
ツルンとしていて
それなのに/だからこそ
異様な存在感を放っている
それを見ている僕にも
背景のない ....
遠いところから吹いてきた
風を感じている
静かな部屋
月光が射しこんで来る
月を見上げている僕の姿は祈っているように
見えているのだろうか
忙しい日々にかまけて
貴方と向き合うこ ....
熱暴走を恐れている
いつブチ切れルかオドオドしながら
キーボードを叩いている
送風口に手をかざし排気の熱さに眉をしかめ
キーボードを持ちあげ底板に手を当てて熱さに一喜一憂する
そんな ....
夜
蝉が鳴く
孤独を切り裂くように
何処へも
もう
いけないことを悟っているように
性急に 性急に
夏の生ぬるい空気を震わせている
こん ....
煙幕のような雨を見ている
事務所の中から濡れる心配もせず
一枚の絵を見るように安穏と
その雨の中に入って行く
傘など用をなさずに
あっという間に濡れ鼠になって
髪から滴り落 ....
厚い雲に覆われた空
雲の流れが余りにも速い
スコールとも言えぬ
一瞬の土砂降り
こんなに不安定な天気は
初めてだ
何だか尋常じゃない
予報円を描きながら進む台風
地球の ....
病院待合室に警報音が2度鳴り響く
何処で鳴っているのだろうと音源を探す
と、待合室の片隅に置かれた冷水機から
誰も触っていないのに水が出始める
誰も居ないのに放物線を描いて噴出する水
....
展示室に靴音が高く響く
自分の存在を悟られそうで
どきりとする
雨が降っている
君のことを想う
屋根を叩く雨粒
君は何を見てる
君への想いばかり
膨らんでいくから
分からない事は
そのままにして
君の上にも降る
雨を想っている
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