夜間飛行も羽田に近づいて
徐々に高度を下げる飛行機の窓に
房総半島が見えてくる

太平洋の海岸線をなぞるように
細く光る帯がネックレスのように
暗闇をまとう陸地に連なる
その華奢なきらめ ....
流れついたものが内に秘めた記憶に感応するように見えてくる形がある
それを現実の世界に引き上げることだけに誠実にノミをふるってきた人
立ち上がる形は僕の解釈なんていとも簡単に呑み込むように静かで確固 ....
海の底のような
薄墨色の空を従えて
ヒンヤリと佇む
片側3車線のバイパスを

時速80キロで流す

クシャッと自分の心を
にぎり潰した今の僕には
生理的に合う速度で

ハンドルも ....
シルバー剥き出しのステンレスカーの丸みを
帯びたそのフォルムは柔らかくて東武線の武
骨な旧型車より洗練されていた

(実は武骨に見えた旧型車は日比谷線の車両
 が登場する直前まで製造されてい ....
互いの輪郭を際立たせて

秋晴れの下で対峙
真白いオブジェと青空

特異点となって風景に楔を撃っている

オブジェとしてしか存在できないから
存在意義をまだあらわにしていないから

 ....
僕は何の脈略もなく選び取ったはずだった

図書館でその彫刻の本を手に取ったのは
静かで凛とした佇まいの彫刻が気になったからで

図書館でその詩集を手に取ったのは
背筋を伸ばして凛と生きた作 ....
ストレートな言葉が煌めいている
計算のない素直な言葉たちが
大きな声で自己主張している

言葉に衒いなどありようもなくて
発せられた言葉と意図された意味は
ピッタリくっついている

平 ....
静止し音もなく
ただ時が流れる

大型書店の地階

あの人の詩集は
こんな凍結した

書棚にぽつんと
展示されている

誰もいない場所

あるはずの色も
感じられなくて
 ....
生の感情を引き出せないかと
密かに手書き用のメモ帳を
鞄の中に忍ばせることにした

言葉が降って(笑)きたら
すぐに取り出して書き込めるように
手を動かすことで感情が零れるように

そ ....
窓の外には二重世界
流れる夜景に重なる
車内風景は簡単に反転して

揚げ餅を食べる自分と目が会う
それは疾走する鏡像/虚像だけど
あちらから見たら僕が虚像に違いない

快速電車が途中駅 ....
10年と少し前まで走っていた真っ赤な電車
50年以上前にデザインされたとは思えない
斬新な色使いの電車は今でも地球の裏側で
タンゴのリズムを纏って走り続けている

メトロと言いながらそこここ ....
大手菓子メーカー製造の
5個入り徳用大福に手を付ける

機械練りの餡であっても
小豆は小豆だから

機械でくるんだ餅であっても
淡泊で餡のじゃまをしないから

餡の甘さに素直に溺れる ....
暗闇の中 せせらぎの音だけが響いている
ぼんやりと見える水しぶき
岩陰には何も潜めないようで

だがそれは思い違いにすぎなくて
水しぶきのように見える放物線

微細な魚たちの鱗の鈍い光が ....
秋分の日は久しぶりの晴天
スーパーへの道のりも
穏やかな陽射しに包まれて

欠伸している
のはこの僕だ

スーパーへの近道は
途中で寺の境内を貫いて
道幅が急に細くなる箇所がある
 ....
夜の大学通りは遠くまで見渡せる
ポツポツと等間隔で並ぶ青信号
の青色ダイオードの光が優しい

君と手をつないで歩く歩道
たわいない話と温もり

曖昧に相槌を打ちながら
けやき並木が夜空 ....
市民課の窓口に備え付けられた各種証明の
申請書を眺めていたら「独身証明書」の申
請書が並んでいる。独身であることを証明
しなければならない事態ってどんな状況な
のだろう。結婚詐欺ではないことの ....
引っ越した家への帰り道には
お寺の門前と墓地を抜ける箇所があって
そこから先は急に夜が深くなる

歩いていると聞こえるのは
虫の声と自らの足音だけで
夜に包まれる心地好さを感じながら家路を ....
僕らは辿り着きたい場所に
巡り会ってしまって
魅了されてしまった

海図を手に入れる間もなく
気が付けば大海原
銅鑼の音も紙テープも汽笛さえなく

もちろん羅針盤もないから
ただ信じ ....
電器店で洗濯機の購入手続きをしている間
に降り出したゲリラ豪雨は雷を伴って
ドドドォーンと雷鳴が店内に響き渡る

電器店の1階にあるセミオープンの駐車場
にも雨が吹き込んでいて
(それは水 ....
{画像=080808002132.jpg}

朝の路地を職場へ急ぐ早歩きの足元
細い暗渠のコンクリートの隙間から
若草色のトゲ玉がコロンと生えている

思わず足を止めて眺めてしまう
無彩 ....
地に足が着ききらない物語
表面にとどまる心象描写

もっと深いところがあるんだ

したり顔で批評するのは

簡単だけど

人の声を得て
人の身体を得て

息を吹き返した言 ....
夕方の上り通勤快速は
降り出した雨を切り裂いて走る

車内は意外に混んでいて
ロングシートは満席で
吊革に片手をぶら下げて
流れる車窓を流れる雨滴を
ぼんやりと眺めていた

雨の駅に ....
風に吹かれ髪がひるがえる
ただ、風を受け入れる

きらめく波頭が目を奪う
ただ、光を受け入れる

潮騒と木々のざわめきが耳に届く
ただ、音を受け入れる

僕はいまここにいる
ただ、 ....
第三軌条だなんて
レトロフューチャーで
スタイリッシュな言葉

第三軌条に流れる電流は
架線に準じた強さ(で危険)だから
壁際を走る軌条は駅の手前で中央に移る

かつて走っていた旧型車 ....
貴方の

その無防備な表情を
半開きの口元を
盗み見る

まるで
風光明媚な観光地を
眺めるように

半開きの口元はそれだけで
どうしてそんなにも
淫靡的で

冷静に眺めて ....
ぎゅー
とか言いながら
小学生の次女が背中から抱き付く

突然の攻撃に弱い僕は
反射的に振り払う仕草をする
から彼女は頬を膨らます

いつものパターン
だけど今日はちょっと事情が違っ ....
何処にでも行けるのではなく
何処かへ行こうとする意志

強靱なしなやかな
意志

僕は持たない

ひさしく

日常はゆりかご

ひさしく

旅に出ようとすることは
慣れ ....
北区にあるショッピングモールに移転することになって
先週末をもって閉店するはずだったエスニック衣料のお店

何故か今日も店を開いている


お店の移転を告げるポップ

その「6月末日を ....
携帯電話のカメラモードを
セピアにセットして
梅雨の晴れ間の街を歩く

写り込む世界は

春まだ浅い砂浜で風に吹かれ
総てをなくしてしまったことを悟った
あの時のまま止まったように
 ....
東京
の近郊で

九州
出身の親に育てられた僕は

自分でも意識しないうちに
親の故郷の訛り

口にしているらしい

九州出身の妻から
指摘されて気が付いた

だとすれば ....
kauzak(280)
タイトル カテゴリ Point 日付
夜間飛行自由詩3*08/11/2 23:59
永遠というもの自由詩2*08/10/30 23:32
アンバランスドライブ自由詩5*08/10/27 23:53
日比谷線[group]自由詩2*08/10/24 21:10
作りかけの風景自由詩1*08/10/21 23:41
選び取られた二冊の本自由詩4*08/10/18 23:11
小学校4年詩集自由詩5*08/10/15 23:23
色もない世界自由詩5*08/10/12 21:52
アナログ/デジタル自由詩3*08/10/9 22:02
疾走する虚像自由詩3*08/10/6 23:39
丸ノ内線[group]自由詩7*08/10/3 1:44
大福自由詩5*08/9/30 23:59
流体自由詩8*08/9/27 22:25
彼岸の中日自由詩4*08/9/24 22:59
予感自由詩4*08/9/21 23:57
独身証明書自由詩3*08/9/19 0:40
新たな家路自由詩5*08/9/10 23:52
夢中の航海自由詩3*08/8/24 23:13
夏の終わりのはじまり自由詩8*08/8/20 23:57
エッセイ自由詩5*08/8/8 0:25
たったひとつの結晶でも自由詩5*08/8/6 0:00
手品自由詩4*08/8/2 0:10
海へ (ただ受け入れる)自由詩8*08/7/30 0:13
銀座線[group]自由詩7*08/7/27 1:21
電車に揺られるとどうして睡魔が襲うのか自由詩2*08/7/24 23:49
父性自由詩10*08/7/21 23:53
旅人自由詩3*08/7/18 0:15
照れ隠し自由詩5*08/7/15 23:36
ヨウ素液世界自由詩12*08/7/12 12:08
浮遊する訛り自由詩2*08/7/9 23:25

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