空に浮かぶ星に自分の名前をつけても
決してその星を手にすることはできないように
ただ遠くから眺めることしかできなくて
諦めることしかできないこともある
....
彼女は
どうして
あんな風に厳しい言葉しか吐けないのだろう
どうして
幸せな結果だけをストンと胸に落とさずに
すぐに解説者になろうとするのだろう
あなたに解説してもらいたいと
....
東むきの窓から見えるマンションは
夕陽を眩しく浴びて金属質に輝いている
けれどそれは束の間のこと
引き潮のように暖色の光は消えていく
夜を招き入れるような小鳥たちのさえずりが届くと
....
風呂あがりの
ほてった身体を
常夜灯だけがともる
洋室で冷ます
妻も娘も寝静まった
夜更けに
フローリングの床に
じかに座る
柔らかな闇に身を浸すと
穏やかな気持ちになる
....
銀座一丁目行き
まるでバスのような行き先を掲げて
開業した際に導入された電車は
千代田線のマイナーチェンジで
目新しさはなかった
けれど当時
沿線に従兄弟の家があったから
山吹色 ....
次女を塾に送って行った帰り道
エタノールの臭いを感じた妻が娘に訊く
消毒液の臭いがしない?
それを聞いた娘は心配そうな顔で
おかあさん、ダイエットしすぎ
妻がキョトンとし ....
次女は毎朝
長女は毎晩
鈴を鳴らして
仏壇に礼拝する
その度に彼女たちは声にならない声で
何事かをブツブツと話していて
何を話しているんだい/と、尋ねてみても
えー秘密/ ....
月が
30Wの白熱電球の輝きを持って
フラリと空にある
都会の冬の夜空では
どんなに空気が澄んでも
瞬ける星は数少ないから
月は遠慮なしに
夜空を支配できるというのに
少し ....
正月の2日から差し歯の小臼歯が取れる
それもお菓子を食べようとしてポロッと
余りにもあっけなく
松の内のハプニングゆえ開いている歯医者もなく
週明けの月曜日
診療しているのか少し不安にな ....
大掃除の手始めに
なんとなく僕の部屋ということになっている
西向きの洋間
に置かれたまま整理していなかった
書類領収書請求書レシートパンフレット新聞記事コピー
などなんやらかんやら
雑多な ....
「あけおめ」って君からのメールが入る
その軽いノリに時々イラつくこともある
けれど
波瀾に満ちた一年を見送ったいまは
それは灯りにしか見えなくなる
なぁ月並みだけど
いまから初日の出を見に ....
僕らの乗った客船は軋みながらも
概ね順調に航海をしている筈だった
海は時化ていて甲板には
出られないけれど
船の中に必要なものは揃っていたから
退屈はしなかったし
取りあえずは安全/安 ....
職場の前にある信号は待ち時間が長くて
目の前で赤に変わってしまうと本当にゲ
ッソリする。それは僕がせっかちだから
というわけではなくて走行車両がなけれ
ば赤信号を冒す奴も現れるくらいに。(
....
東京近郊の街のクリスマスには雪が似合わなくて
サンタクロースの正体がこの僕だと
子供たちは知ってしまったけれど
それでもプレゼントはうれしいもので
僕のことをパパサンタさんとか呼びながら
....
小学校四年生の娘と姪っ子は
互いに追い駆けっこをして
おじいちゃんちの六畳間を回る
クルクルクル クルク ル
と
いつ果てるともなく回り続ける
ように笑顔に笑顔を重ねて弾ける
そ ....
6000系電車は小学生だった自分にも衝撃的だった
21世紀を先取りしたデザインに思えた
非常口を前面に設置しなければならない規制
それを逆手に取って貫通扉を極端に左に寄せ
かと言って左 ....
お盆から2ヵ月半
無人だった家は思ったより荒れていなくて
ただフローリング部分を歩くたびに
キシッ、パシッと軋む音がする
家が早くも傷みだしたのか
と
大工の従兄弟に不安を口にしたら
....
夜のアーケードを駅へと急いでいた
落ちていることを認識できない間隔で
落ちて来た水滴が太ももを濡らして
驚いて足元を見ると確かに路面は濡れていて
朝の路地を駅へと急いでいた
....
? ?
いつだって馴れないんだ 駅を降りて
麻痺していく 牛飯屋に入って
フェイドアウトしていく感覚 ....
世界へと落ちていく空
滲む照明
薄明かりのアウトフォーカス
緩む身体
意識はただ温もりに溺れ
遠い耳鳴りと感じているのは
あれは
海鳴りではなかったか
夜の砂浜に座り込んだこと ....
明けきらぬ朝の中にまだ消えぬ街灯の
パールの光を僕は纏う
全てが洗い流された後のまるで真空の中に
あるような青く透きとおった光
僕の中の澱を洗い流してくれる
夜どおし灯されたネオンは ....
後で降りてくるよと
サザンの曲を元ネタにした
ショートドラマのオムニバスを
見ている妻に声をかけて階上に登り
詩の投稿サイトとかをチェックしていたら
カチャリ
と
部屋のドアが開いて ....
図書館前の信号に続く道へ曲がったはずだった
携帯メールをチェックしながら歩いている
右側から強い光を感じて振り向くと
接骨院の白と緑の看板を目が捉えた
瞬間
現在地を見失い見知らぬ街角に投げ ....
路線名どおり
東京を東西に貫く電車
地下鉄のくせに半分近くが高架線で
快速電車も走る らしくない路線
学生のころ
思いたって全線を乗り潰してみようと
中野駅から西船橋駅まで
無意味に ....
こもれび/こもれび
紅く小さく南天の実
こもれび/こもれび
足元に散らばる団栗
うたっているのは ひばりか
うたっているのは すずめか
こもれび/こもれび
軽いハレーション
....
暖かいあなたの
腕に抱かれて
私はこのまま
溶けてしまいたい
けれど水のように
あなたに深く触れたとして
すぐに蒸気になって
あなたから遠く離れてしまうのなら
いまひと ....
高崎線のドアは必ずしも自動じゃない
特急/快速の待避で5分停車ともなると
駅に着いてもドアが開かなくて
都心の電車に乗り慣れている人が戸惑って
ドアの前で立ち尽くしてしまう
開閉スイ ....
君は弱気になって
甘えた態度で
側に居て欲しいという
けれど
僕はその弱さが我慢ならない
指の処置は無事に終わった
麻酔の切れた傷口は痛い
けれど泣きたいほどじゃない
ならば
そ ....
住む人の居なくなった実家
風を通すために帰省して
東京に帰る日の昼食は
味噌ラーメンが美味しいと
親父が通っていた店で食べる
若いころ札幌で食べた
味噌ラーメンの味に魅せられた親父 ....
寝不足で眠すぎる
爽やかな朝
目を開けるのもダルくて
目を軽く閉じたまま
駅まで歩く
2秒閉じて一瞬開かれる
フラッシュされた風景
瞼の裏で赤く
滲みながら消えていく
残 ....
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