きみは前日の失敗をかかえ、氷上に立った
その日のきみは前日とちがっていた
蹉跌はきみのなかでいくどもいくども燃やされ、灰燼に帰していた
きみはシンボルのジャンプをきめ
きみのフィギュア人生のす ....
夏が甘い言葉でさそう
からみつく夏の手が情熱的に
かの女のからだを愛撫して
いちまい一枚服をぬがす
かの女は身もこころもすっかり魅せられ
とろけたバターのようにあらわな白いからだを
朝、ベ ....
降りしきる雪
積雪してゆく雪
夜がもう一回りしてきたように空はくらがり
冬の沈黙がぼくたちの町のうえに
いくえにもみえない層となって積みかさなっている

雪は不断に降りつづき
町は白の純 ....
雨がどしゃぶり
風がよこなぐり
怒り狂う雷神が蓬髪をふりみだし
光のムチで地上をむちうつ
大地がゆるぎ
木々がおののき、草がひれふす

審判がくだる
電灯がきえ
家のなかを照らす、い ....
ぼくらの町に
ヨシキリがかえってきた
一羽は川沿いの桜の木に
もう一羽は中州の葦のしげみでなきかわし
恋の歌をうたっていた

そんなとき、子どもたちがドヤドヤやってきて
このちょっと変わ ....
別れの日
少年は幼い女の子ののる三輪車をおした
これが最後だと、十歳にみたない少年にもわかっていたから
三輪車は石ころ道をガラガラ音をたてて走った

三月も終わりのころだった
春をおもわせ ....
春の道は
あたたかな日ざしに雪がとけだし
土といっしょにベチャベチャやる

冬のきびしい戒めから解放されたよろこびを
全身であらわして
道ゆくお嬢さんの足にすがりつく

子どもたちがド ....
あの日、かれらはこの線路のうえを
電車に乗って去っていった
あの日から線路は
瓦礫におおわれ、寸断したまま
川をわたった橋梁はながされ、レールは宙にういてねじ曲がり
枕木はあとかたもなくきえ ....
おまえは見つけた
だれにも邪魔されない、やすらぎの場所を

いつからか、おまえは街をさまよっていた
建物のかげにかくれ
通りにすてられたゴミを漁った
ひとかけらの食べ物も
渇きをうるおす ....
わたしたちは人生のなかで
なにやかやこむつかしい計算をする
足したり、ひいたり、平方根をもとめたり
無理数でわってみたり
数と組つほぐれつ
ひとさまざま、千差万別
でも最後には、だれでも「 ....
灼熱する夏の大地に
長くつらなるアリの行列
その列をたどると
いっぴきのセミの死にゆきあたる

地上にこぼれた命を
食らいつくすアリの集団

哀しみはなく
厳かさはなく
叫びはきこ ....
雨があがり
低くたれこめる雨雲のあいだの
ぽっかりと開いた空に 高い雲がみえた
高い雲は季節をさきどりし
未来を映すように 夕映えに染まる
雨雲はいまをあらわし どこまでも地平の果てにひろが ....
きょう、季節の帳簿は冬に逆もどり
北風がふき 雪が
山のほうからちらちら飛んできて
冬のいかつい手が コツコツと
貯めてきた春の貯金を 
ごっそり帳簿からかっさらった
開きはじめた菜の花も ....
言葉は凍る
きみに投げかけた ぼくの言葉が
きみの瞳の、
冷ややかな光に
きみの心にとどくまえに
きみを思う、
ぼくの一心の言葉は
一敗地にまみれ、風の餌食

冬の日
空回る、
 ....
街にイルミネーションが輝きだす冬の夜
羽虫のむれがあつまるように
はなやぐ街の通りに
人々がつどい
きらびやかな建物のなかにはいってゆく

わたしは場末の
赤提灯のともる、家の軒下にきえ ....
きみはなにもの?
きみは海をおよぐイルカ
ぼくは灯台
昼も、夜もきみの姿を波のあいだに追い求める

きみはそこの見えない海
その海の底には因果律でわりきれない、
数式であらわせないもので ....
ぼくの命のともし火が消えるとき
ぼくはぼくの身体を南極の雪と氷の世界にうずめたい
あの長たらしい弔いの儀式に
窮屈な棺のなかでつきあわされるなんて、まっぴら
あげくには数千度の炎にやかれるなん ....
空がひろがる
空はわたしを誘う
「さぁ、おいでよ。
 つばさを
 風にはらませて
 空を飛んでごらん。

石のつぶてが空にむかって放たれる
鳥が墜落してゆく
わたしはつばさを胸に抱き ....
荒地のなかでみつけた言葉
言葉はかれのなかで炎となって燃える
その輝きに
闇はかれの足もとから一瞬遠のく
かれは炎をみつめ
ひとときあたたかい心をとりもどす

やがて炎は消える
しだい ....
雨が降るよ
春がくるから
雨が重たく降るよ
肌にむずがゆく、すいつくように

風が吹くよ
春がくるから
風が海から吹いてくるよ
タンポポのわたぼうしをとばし
空に白い雲をころがし
 ....
あるとき、家のあるじがかわった
新しいあるじが快適な生活をたのしんでいるとき
古いあるじの亡霊が
新参者をおいだそうと、いたずらをはじめた
南天の枝で窓ガラスをたたく
天井裏でねずみをけしか ....
人は二酸化炭素の食べ方を知らない
円卓に白い皿をならべ
手に銀のフォークとナイフをもち
皿のうえの二酸化炭素をまえに人々はとまどう

いたずらに皿のうえでナイフがおどり
むなしくフォークが ....
潮がみちる日
海が川を押しかえす
汚れた水をながさないで
ビニール袋やペットボトルをながさないで
こんなゴミをうけとる義理はないの
はるか沖で
海はいかりをつのらせた

アデリーペンギ ....
エミリ、お空でお絵かきしてる
雪のような白の絵の具で
まっ青の空のカンバスに

ときどき 熱心に
ときどき 気まぐれに投げ出して
絵の具だらけの足でかけまわり
白い雲たちとかくれんぼ
 ....
コップのなかで日常がほほえんだ
ひとときのあいだ
波紋をひろげて
夏の窓辺に

コップのなかで生きる
ちょっとした雨降りにあふれだし
3、4日日照りがつづくと乾いてしまう
コップのなか ....
すずめのお宿はきょうもにぎやか。
夜をまえに、温かな場所をめぐって
くりひろげられる場所とりの争奪戦
茂みのおくで、ひとときのおしゃべりがつづく
おしゃべりは、一羽一羽が
それぞれの位置にお ....
黄金色のランプをともして
晩秋の
夜の岸辺にたつ、イチョウの木
その美しさに、おもわずためいきがもれる
鳥たちはどんな思いで
この木のホテルに一夜をすごすのだろう?
とおりすがりの
スズ ....
ひとつの窓が眠りについた。窓のなかで
演じられた芝居はおわった
観客たちは涙をぬぐい、夜をみつめる
なぎさの波のように
いくども繰りかえされた生と死
観客であると同時に
みずからの生と死を ....
あなたは耳をすませ瞑想した
大地の広がりに、空の深さに
感覚をとぎすまし、世界とひとつになって
あなたは知っていた。ランプの灯心のように
みずからの身体を燃やし、世界を照らす術を

あなた ....
わたしは川になりたい
草原をうるおし、森をいつくしみ
たくさんの魚が群れ泳ぐ
川になりたい
やがて大きな海にそそぐ川に

わたしは、はるか大地のおく
山の斜面にねむる池。夜ごと
星が  ....
寅午(46)
タイトル カテゴリ Point 日付
氷上に咲いた一輪の青い花に自由詩114/2/23 12:57
夏に恋する乙女自由詩213/9/29 7:59
冬の虜囚自由詩213/2/24 11:23
夏の夜に自由詩212/9/2 10:53
夏草の蔓がからむころ自由詩812/6/12 19:42
幼くして逝った魂によせて自由詩112/4/11 19:06
春の道自由詩212/3/6 20:51
あの日自由詩811/12/24 19:50
街のかたすみに自由詩111/11/28 20:30
_自由詩211/11/20 19:30
夏の葬列自由詩211/9/12 19:47
帰り道自由詩111/7/5 19:41
春の音自由詩811/3/8 20:50
言葉は凍る自由詩211/2/27 19:53
_自由詩110/12/26 16:42
きみはなにもの?自由詩110/12/4 19:35
_自由詩210/8/17 20:00
窓のそとに自由詩010/6/26 20:21
詩人が言葉をさがしている自由詩110/6/15 20:16
_自由詩210/3/23 20:19
自由詩010/2/8 20:00
COP15自由詩010/2/5 21:14
海のたくらみ自由詩110/1/19 20:32
あしたの天気自由詩310/1/11 20:30
_自由詩209/11/23 17:49
すずめのお宿自由詩209/11/8 21:19
自由詩009/10/21 21:34
 窓自由詩109/8/14 20:49
_自由詩009/8/1 20:35
わたしは川になりたい自由詩209/1/28 20:42

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