考えなければならないことが山ほどある。
けれど本当は大事な振りして雑なもの。
人を待つ。嫌いなことではないけれど、
本当の自分が削がれるようで実はかなり苦手である。
傘がなくて往生している。友 ....
子供のころ憧れたランドセルは不便で固いカバンだった。
着てみたかった制服は暑苦しくて寒かった。
お昼休みのお弁当はいつも同じでつまらなかったし、
大人になってしまった今では憧れているものなんてな ....
人に懐くな、信じるな。そう言い聞かせて生きてきたんだろう。
細い両目はいつも暗い底を見透かすように光っていた。
何も信じずすべてを疑い、誰も知らない所で戦い続け、
顔色一つ変えないで噛み付く鼠を ....
例えばさ、
何の前触れもなく空が落ちてきて
叫び声や悲鳴が平和な町を覆い尽くして
向こう側に光が無かったら
今夕日を背負ってるこの道が
赤く燃えて割れてしまったら
私は誰に思い出してもらえ ....
やり直したいほど執着した過去なんて今まで特に思い付かない。
それなりに成功もして身の丈にあった幸せも手に入れてる。
不満を持つほど今の時代をよく知りもしないし。
やりたいこともやりたくないことも ....
赤い果実を一口下さい。
青色でも褐色でもなく真っ赤な真っ赤なその色を。
甘い蜜を吸わせて下さい。
苦い思いは沢山なのです。
よじ登った林檎の木から見下ろした町並みが、
赤く染まる夕暮れ時、違 ....
夜明けの街
ビルの硝子は空を映して
深く青く
深海のように深淵のように
瞬きの度に光の差す時間を
吸い込んで見上げれば
頭上には群青
鳥が泳ぐ青い海
私なんて実はいない
誰かが成り済 ....
昨日見た夢の中では街中の電線が絡まって、
君のお家ではテレビが消えて妹さんが泣いていた。
君はおろおろ困った顔でどうしたらいいか私に電話を。
残念、お家の電話は使えない。私のケータイ知らない君が ....
冷たくなってく星の輝き
流れる命を忘れないで
今は見えないミルキー・ウェイ
結ばれる二人を待っている
熱い渦巻き 誕生の時
始まりは突然に
産声は音もなくこだまして
ぼくの胸は震 ....
横たわる白い身体に
そっと 口づけを
愛しいと感じるだけの
幼い気持ちを吸い込んで
冷ややかな速度で萎む想いを
止めることが出来なくて
愛している、と熱を持った言葉も
今はこんなに頼りな ....
ノスタルジィ 囁いて
枯葉の音 季節を忘れる微熱と共に
変わりゆく景色を愛さないで
あなたが名付けた小道を辿れば
いつでも会えると信じていた
行き交う人々が私を見ている
思い出に捕われもが ....
眠る木々の静けさ
音は終わるように始まり
あまりに薄く高く響くから
今だ耳の奥で細く鋭く
白い大地と
同じく 白い空には
蝶番の境目はなく
折れも拡がりもせず
こんなに一つに融けて
....
踏み止まろうか踏み出そうか迷う毎日白い線。
快速電車の吸引力を肌で感じ始めている。
存在はある日 突然 消えるものでなくて、
それ自体が無くなっても受け入れる側が認めない。
誰でもいい。誰かい ....
想いを言葉に出来ないもどかしさ。
例えば、素晴らしい詩を読んだ後だとか。
人生に衝撃を走らせたそれを表現する術を拙い僕は持っていない。
情報の海を泳いでいく。
波をかき分け目的もなく彷徨っ ....
欲しいものはいつだってこの手の届くところにあった。
赤い積み木。母の微笑み。阻むものなど何も無かった。
だけれど今どんなに何かを求めても、
赤い残像。人のぬくもり。指の間をすり抜ける。
幼さ脱 ....
久し振りにため息が絡む喫茶店を通り過ぎた。
言葉を交わしたのはもう数えきれない時間の向こう。
目まぐるしい毎日はあなたの見えない日々ばかりで、
きっとあなたも私を忘れて生きているでしょう。
近 ....
着信音よ早く鳴れ。
そうすりゃ僕は救われる。
両足の間には抗えない隙間があるんだ。
埋められるものばかりを、
探して 捜して、
19年も生きちまった。
蕾を咲かす術も知らないままに。
....
水性インクの匂いが好き。
滲んで溶ける模様も好き。
(だって、メ・ルト)
私を動かしているのは、
熱い赤 と 冷たい黒。
如何でもいい事ばかりに、
捕われ拘る私は、
今のままでも充分 ....
雨が降っているから電車は動かないという。
見慣れぬ駅を出てすぐに私は自転車にまたがった。
多少の雨など気にしない。雲の流れは速く速く。
ペダルを強く強く踏みその速度を追い越すように。
晴れ間を ....
東京にはきれいな水がないのよね、と、
魚になった友人は天然水を買い漁っていた。
時々だけど蛇口の水をコップに注ぐと、
水草みたいに髪を揺らめかせにやっと笑う彼女がいる。
東京には濁った ....
手向ける人は影も無くし
寄り添う人は飛沫をあげて沈みゆく
咲いてる花は色もとりどり
生きてるように揺らめき蠢き
私はまた呼吸もなく見つめている空
冷たい雨が
人たちを遠ざけ近付け
淡い熱 ....
笑った声 怒った声
泣いている声 愛す声
すべてが耳に渦を巻く夜
波の静かな真白い海が
月明かりに照らされて
ぼんやり浮かぶあなたの顔が 響きが 音色が
海の底までこだます ....
鯉の群生する湖を汽車、あるいは貨物車が走り
当たり前にそこにある線路と魚を見つめている
母と乗った貨車はやがて大きく傾き
母は無事に着水させ娘の私を投げ出した
カバンの中身がばらばらと澄んだ水 ....
遊び疲れて眠ってしまったのかい
そのままでいいから聴いておくれこの歌を
思い通りにいくことなんてきっと数えるほどなくて
運命とか実はあんまり信じてなくて
音の取れない金管楽器がやへたっぴなリコ ....
角を曲がってすぐの駄菓子屋がいつのまにか潰れていた。
代わりにそこは近くのファミレスの駐車場に落ち着いた。
お爺ちゃんが一人で住んでた築50年の家が無くなった。
代わりにそこは時間制の小ぢんまり ....
高いというより遠い空。
燃え燻った情熱がかすかに見ている夢のあと。
泣いて喚くくらいならすべて忘れて眠ってしまえ、
と優しい声に誰も耳を貸そうとしない。
じりじり焼け付く太陽の下、墨のような影 ....
終末論に踊らされながら夕飯の献立を考える。
急がされてここまで来たけど特にすることもなくて。
世紀末の頃に流行っていた噂。昔の誰かの予言がどうとか。
今じゃもう流行り廃れて名前も思い出せない。
....
街が僕を喰らい尽くすから
夜明けまでに気丈な心を買わなくては
働いても働いても胃の袋は満たされないけど
学んでも学んでも空の頭に塵が溜まる
僕は搾取される側の人間だ
恐らく大半がそうなの ....
金木犀は雨を連れてくる。
別れは突然に訪れる。
幸福は髪の長い球体であると、
そんな話を聞いたことがある。
見つけてすぐに捕まえなくては転がって見えなくなると。
そんな話を信じていた私が愚か ....
夜半に君はやって来て「最後の列車に乗れ」と言う。
あまりに突然なものだから頷くことしか出来なかった。
最後に会ったのはいつだっけ。なんだか遠い昔みたいだ。
あの時君は何て言ったかな。ダメだ何にも ....
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