空白の職歴欄
病気以外のいいわけを考えているうちに
頭の芯がじわんと痺れてきた

今のわたしに
「じこせきにん」という響きは
つらすぎて


空を見ようと外に出た

冬のお陽さま ....
おかあさんの ブラウスを 握る
おかあさんの めがねを  握る
握る
おとうさんの 鼻を 握る
おとうさんの 指を 握る
握る

がらがらを 握りそこねた君は
まだ きかない手を 小刻 ....
わたしがいなければ
死んでしまう
ひとの
存在

あなたは
わたしを
そのままで
肯定してくれた
ヒロ
わたしはあなたを
尊敬します

だって
あなたは
白い

白くて
白くて
白い

わたしの心には
しょうゆみたいな
しみが
いっぱいついていて

ぬぐっても
 ....
おうちに
赤ちゃんが
うまれた

赤ちゃんは
眠ります

すぅ すぅ
くぅ くぅ

赤ちゃんは
泣きます

ぎゃぁ ぎゃぁ
きぃ  きぃ

赤ちゃ ....
めざめると 小学校のチャイムが聴こえる


そしられ れらしそ しそられ れらしそ


ぼやけた頭は 過去にゆく

あれは わたしの おもいこみ
せんせいは わたしを いじめたりしな ....
変わらないね と
あなたが笑う

おばさんになったわよ と
口では否定しながら
ちょっと考え込む

15年前と今のわたし
どこが変わったのかしら

また あなたが笑っ ....
ヒロくんは
ほ乳びんの乳首ならチュウする
「わたしの乳首はキライなの?」と
ほ乳びんの乳首にやいてみる
昨日夢をみました
あなたの夢でした

あなたの ちっちゃい ちっちゃいこぶしが
わたしの おなかの皮から ひょっとのぞいた
そして わたしと握手をしたのです

うれしくて
 ....
まゆに包まれて いくようです
あなたも わたしも

目をつむると
おくるみに くるまれた あなたが聴こえる
ディスプレイに “助けて” の文字が浮かぶ

このメールを 受け取った日
わたしは夢で あなたの骨を拾った
手のひらのうえ わたしの皮膚を あなたが焦がした
突きぬける 痛みが あなたを喪っ ....
桜と梅が いっしょに咲いた
ばあちゃんが桜を見て
うめざくら
なんていったので
思わずぷっと吹き出した
笑ったあとで悲しくなった

あなたにも
いつか
桜も梅も
スイセンもヒヤシン ....
その日
あきらめきれない ふたりは

しびれをきらした 家族たちから 
置いてきぼりにされて
先のみえない白い世界に
佇んでいた

握りしめたじいちゃんの
手から伝わる熱だけが
た ....
温泉に行った
ほっかほかにあったまったあとは
冷たい麦茶がいい

自動販売機のまんなかに 麦茶があったっけ

からん

コインを入れた


熱をもった ほっぺたに
瓶をくっつ ....
あなたは胎児であって胎児ではないのだから
産み落とされる瞬間に触れる空気の冷たさも
これから始まる三十余年に渡る苦しみばかりの人生も
そして 嘲り笑う人びとの眼前での 磔死も
既に全て知ってい ....
ひんやりとした風が 
長い髪を 後ろに なびかせる

 「髪、切りなよ」と 舌足らずな声が聞こえる

切らないわ
この髪が 揺れるたび いつも あなたに 会えるから


1 ....
いつのころからか
こころとからだが辛いとき
いろんな病気の真似をするように
なっていた


呼吸が苦しいふりをした
通路でばったり倒れたまま、意識を失ったふりをした
突然、足が動かない ....
ふと嘘が
口からこぼれた

あ、いけないと
拾おうとした
その手を
かずみがふんづけた



あれは、小学校3年生のときだったね

兄弟が欲しかったんだよ
ただ
それだけだ ....
布団から離れられず
寝て過ごす
毎日

あなたの好きな
オムライスだって
作りたいのに

そんなささやかな
自由さえなくて

わたしは ひっそり
涙を流す


だけど
 ....
産まれて来なきゃ よかったと
なんども なんども
いのちを呪った

だれかの死刑のニュースが流れるたびに
うらやましいと思う日々

だけどいま

子どもを産みたい
子 ....
しっばれる 初冬の朝

まだ寝ている良人の顔を 覗き込む
ねこちゃんみたいな目をして
まだ根室の夢みてる

わたしは えい と起きあがり
つめたい水で顔をあらう


と ....
13歳のある朝
ひとりの少女が家を出た
それは女の早すぎる自立

少女は市場で自分を売った
18歳といつわって

18歳になったとき 刺青師のもとに駆け込んで
世界一の 牡丹になった
 ....
つめたき夜の独房の
友は石のトイレのみ

叫んでも届かぬ声なら
しぼりだすだけ 虚しく
ゆっくりと 立ち上がって コンクリートの壁を
手のひらで なでて さすって 
あたためる

ど ....
わたくし色の雪の結晶が

泣いてるあの子の

てのひらに

ひらりら らりら

落ちて 

消えたよ
「あと1分」
無骨な声が響きわたる

モニターは緑の直線を描いている

注射痕で赤紫に染まった
骨ばかりが目立つ手に
わたしはくちびるを そっとつける
将のなまぬるい肌が微か ....
ゆき子は手に生命を宿した

ある冬の日だった 
ゆき子は凍えながらも 
大好きな白粉につつまれて 
近くの店に出かけていった 
心の中でレミオロメンがながれている 
そのうち、しばれはす ....
うちにきたころの あなたは
  ちっちゃなころの わたし そのもの

世の中におもしろいものが満ちあふれているから
 どんなに高いハッチの上にでも
  とびのぼっては かけまわる

一秒 ....
私は10年冬眠していた

 走って 走って 疲れてしまったから

 目を開けると

 良人も家族も 老けていた

 みんな 私より 弱っていた


 はいつくばって 鏡の前へ
 ....
引っこ抜いても
引っこ抜いても

また芽生え
瞬く間におがってゆく
バオバブの不気味な根

彼は
今日も
わたしの星を
侵略する


わたしは寝場所を喪って
大蛇のようなそ ....
Out of sight
目に見えぬとも

Out of mind
夢に来ぬとも

くしゃみは今も
ポプラを揺らす

さやさやさやや

耳はまだ
{ルビ此岸=ここ}にはいない ....
池中茉莉花(57)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩309/12/6 23:43
握る自由詩12*09/1/12 22:21
あかちゃん自由詩3*08/11/27 11:59
崇(スウ)自由詩2*08/11/27 11:58
それでいい自由詩4*08/11/27 11:46
自由詩2*08/11/16 10:18
自由詩6*08/9/21 10:45
ほ乳びん自由詩3*08/9/21 10:36
握手自由詩3*08/9/21 10:34
自由詩4*08/7/13 10:31
悪夢自由詩1*08/7/12 17:41
悲春自由詩5*08/4/22 21:00
摩周湖自由詩1*08/1/8 16:12
いちごみるく自由詩3*08/1/8 16:05
待降節自由詩1*07/12/13 10:59
自由詩4*07/12/11 16:35
嘘からの解放自由詩3*07/10/29 9:26
自由詩5*07/10/28 23:30
あまのじゃく自由詩4*07/10/28 23:02
新しいいのち自由詩1*07/10/17 22:58
朝の香り自由詩5*07/10/14 18:38
牡丹の哀しみ自由詩0*07/10/6 10:34
朝のひかり自由詩1*07/10/6 10:28
雪んこ自由詩5*07/10/1 3:53
DEATH US NEVER DO PART自由詩2+*07/9/28 22:10
自由詩1*07/9/26 6:41
わたしのイルカちゃん自由詩0*07/9/26 6:30
ぬくもり自由詩2*07/9/26 6:24
自由詩1*07/9/25 6:39
いのちの響き自由詩3*07/9/16 21:12

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