十月さいごの日だまりが
ぼくらに光を継いでゆく
風のしたで悲しみをかまえ
いちばん好きな他人を失う
恋人の不実をまえにして
ぼくは悪くなかったのか
神様、怒って ....
ねずみが心配している
太陽はどこにある
ハンバーグはお早めに
滝壺の下見はやめておけ
ねずみが心配している
信じることは見守ること
車のナンバーには暗示
元気 ....
午前0時になると
観念的なこの世の中のからくりが
魔術的にほどかれていった
蛍光灯と事務機器いがい何もないフロア
そこには僕しかいなかった
ほどかれたからくりは
僕になにを教える訳 ....
赤目四十八滝すぐそばの温泉旅館に泊まった
滝を散策しようかと地図を貰ったが
往復一時間かかると言われてやめた
湯を浴びて廊下にでると深夜の館内に物音はなかった
愛人がでてくるのをしばらく待 ....
聞こえるの
まだ悲しくないあの頃
振り向けば
そんな気持ち片づけて笑ってる
遠い
記憶のまだまんなかで
夜道を
祭りのあとみたいに歩く
月明かり
....
窓辺にうつる
あたしの頬が
便箋に文字をしたためる
不惑は遅くて
別々のよるが
哀しみをガラスで仕切る
こんどの夢は
ながすぎたメルヘン
こんどの愛 ....
俳優は事件をひとりで引っ被っている
現場にいた元総理の息子と
死亡した女とのあいだには
国家レベルで容認できない何かがあった
この事件を掻き消そうとして
あの女優夫婦にも ....
もう腹を立てたりするのはやめよう
ぼくにはひとを裁く権利などないのだから
あらゆるイマジネーションを使って
ぼく自身に置き換えてしまうのだ
身に覚えがないとしても
身に覚 ....
宇宙の中心に
じぶんを置いてしまうから
厄介がうまれてしまうのだ
宇宙の中心に
じぶんを置かなくたって
どうせ置いてしまっているのが
じぶんというものだ
....
使えない奴、否、不愉快な奴
そういう奴こそ使えばいいのだ
世の中きれいごとではない
きれい、から出発して
きたない、こころに足をとられるくらいなら
乱暴な、こころから出発 ....
四日の夜には息子と散歩をした
息子は自慢話を聞かせてくれた
子供ってたぶんみんなそうだ
ふしぎな月の夜だった
月のまわりにおおきな円弧がかかっている
それを息子に教えた
お父さん、 ....
日なたを見つめる
芝生が動く
秋のバッタだ
ひらひらするのは
シジミチョウだ
どこかでそれらの
たとえば文集が編まれている
ぼくがここにいなくても
ぼく ....
うっすらと
冷えた微風にほんのりと
さやかな湿度とキンモクセイ
夜道をスーツは落ちてゆく
まよこを電車が落ちてゆく
ほんのりと
さやかな湿度と焚火のなごり
胸 ....
星よりはやく西へ東へ
飛行機たちの遠い明滅
夜の坂道に外灯がたつ
いくつかの影をまとい
僕は長い坂道をくだる
僕は夜の無生物になる
さびしい、とつぶやいた
....
風が吹いている
青く灰色のピンクの影のなか
夕暮れの香りが運ばれている
いちにちは
誰にかやさしい終わりを告げる
よるに棲息する
わたしは無生物になるでしょう
....
負けるな嘘を言うな弱いものをいじめるな負けるな嘘を言うな弱いものをいじめるな負けるな嘘を言うな弱いものをいじめるな
ああなりたいと思っているから
いまよりも高いところへ俺はゆく
ああなりたい ....
取引先と鹿児島に来ていたので
知覧にでも行きましょうかということになった
私はこれで五回目となる
お客様は初めてだそうだ
特攻隊員たちを想うといつも
戦争、若いいのち、時代、思想、ひ ....
天文館通でスナックのあとラーメン、定番だ
芋焼酎は白い
脈絡もないことを思いながら歩いている
麺はのこしておいてよかったな
酔ったからだをホテルまで動かしている
出張 ....
出張さきの宴席で地元の方々が
茶わん蒸しの唄をやってくれた
いつもそれを覚えようとするのだが
芋焼酎がぬけた朝には忘れてしまっている
だからその晩はDVDをおくれよと頼んでおいた
翌 ....
いつから芋焼酎飲むようなったんかなあ
(あたしはどきっとした)
おまえにもうたんやっけ
(そうや)
(あのとき付き合うとった彼にもろたんや)
四五年まえおまえにもうたんや
(いまさ ....
ふたりの蛇が絡みあい
とぐろを巻いてぼたっと置かれている
私たちは睨みあう
舌をちょろちょろさせ
鎌首をシュパッと突きあわせ
私たちは今、威嚇しあっていた
私は ....
湯をもとめ
山林にはいる
猪か、獣の臭いがする
腐葉土を踏み
靴底を滑らせてゆく
真実は
湯をもとめてはいない
獣を撃つことのみ
思考している、否、体が ....
晴れた空に幸せそうな雲が
まだ明るい日のひかりが
高層のビルに当たっている
こんな時間帯に
悪だくみをする人もいるだろう
美しい歌を聴かせる人もいるだろう
失意 ....
夏に残したこころの跡
枯れた芝生に吹く風が
冬の星にも吹いている
光はあんなに小さくて
悲しみは無菌室の中で
明るく仕舞われている
ブルースよ、未来を幻視せよ
....
おどおどした目で
悲しみ選んでいる人々に
営みの地平から
白い抒情よ、立ち上がれ
響きあうこころと足音
蛍光灯でがらんとしている人々
悲しみは漂白されている
....
傷つきやすいこころがあるならば
ひとを傷つけるようなことをしてはならない
喜びを感じるこころがあるならば
ひとに喜んでもらえる自分でなければならない
キンモクセイは夜のどこにあ ....
町の夕方がきらきらしていた
台風一過のレモンの色で
ほどけた空が明るくなっていた
それを美しいと思えることが
いついかなるときもそうあれるように
三百万年まえも
三 ....
目的はあったほうがいい
そのための
道標としての目標はあったほうがいい
そういうことが
しんどいことだと思うひともいるだろう
言葉は個人にとどかない
これを孤独と言 ....
風がやんで小雨になっていた
台風がそれたかのようだった
それはつかの間で
街路樹を折り散らかして風が暴れだしていた
明日の出張はなしだな、ガムを噛みながらそう思った
....
ぼくは腹を立てない
それはじぶんだからだ
じぶんを比喩して
それは目のまえにあるだけだからだ
ぼくを見つめた誰かの
その追憶をぼくは辿る
どこか遠くで
....
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