またお前が溌剌として空間を行き来する季節が来るよ
まだ蜜はまばゆい重みを湛えるまで熟してはいないが
やがてあらゆる明雪を終わらせる風の便りに指を開き
柔らかな触角で時が経てる悦びを弛まなく識るだ ....
無言でいられた
幼児の愉しみを
疑いなく無言でいられた間隔を
春が来るまでに思い出せたとしたら
花だけが立てる声
道ばたに膝をかかえ
前ぶれもなくはじまるあの声を
今も待っていられるのだ ....
会話はさ
次第に競技賭博の様相を呈してて
短く
鋭く
チップはみるみる減らされた
BGMの限界は知らない
誘われるがまま去った
色どりの硝子片の街へ告げる
ころりと丸い宵の滴を置き ....
硝子の抜けた窓を透け
川に浮かべた傘いっぱいに
夕ぐれの街が溢れる時間
暮れる光のにおいに
昨日と明日が
すれ違う今が翳りとなってひそみ
貨車が黙って
曳かれてゆく不安で
すぐに下 ....
ビニール被された闇が裂け
あくびの煙くささに唇が醒める
驚くほど身になじむ
布団の凹みの熱移動
ばらばらにほぐされた手足も次第に整われ
目が明けてみると
あたり一帯ふわふわしている
....
かみなりだ
あれはかみなりだ
あぁ、こわい
あんなにぶ厚い藍を割れるのは
それだけで神だ
鳴っている、なって白も黒も反転し
紙の鳥が燃えくすぐられる
犬は動転し
きゃっ、という気に ....
ネット間のむくつけき影が
まるい指きどり、きらりコイン・トス
お気にいりのいち枚を
載せた型をじいっと見つめ
着地するまでどれだけ回ったか
数えてるんだと笑った
投げあげられた淡黄色の ....
かすかな生活の、いつ消えてもおかしくない繫りの
はっきり見えていなくても、それを想い描ける
聞こえないけれど感じる
小さな部屋で、今あなたが立てるあらゆる響きを
同じ夜の片隅にある、遠く隔てら ....
耳をとざしたほうがいい
ことばを思わないでいいから
目もひらかず
ただ触れていたい
指で肩で舌で
そのからだの奥を覗きこむような
こまかな息づかい
一度は奪われた草木を甦らせ
半透 ....
ヴェランダをはじめて見た時
その美しさが怖かった
風の流れがそこだけちがい
光あたりも微妙にちがう
犬がおなじ犬とは思えないくらく白い
あの、人工芝とはなんだろう
ガレージって一体なん ....
ここ数日で失った総熱量が
まもなくプランの上限に達するという通知は
私の視界のすみずみまで霞ませ
内蔵が熟れた
あけびの実のように黒ぐろと蔵種した
発熱で疼く思考の芯を
地下で砥がれた ....
前略
昨日曇のち灰神楽
静かな凧あげ日和
腰のお加減如何
本日未明より流謫
星は晶となり積み
手元不如意につき頼む
草々
朝のみそ汁から
かつて棲んだ磯の香りがした
循環する水にうまれるいのちのすき間
それをすくいそそぎ入れた
湯気が消えてゆく空にうかぶ
一羽のかもめ
炊きあがった純 ....
あなたがひとをもとめるとき
わがこをはむめだかのようだ
あなたがさみしささがすとき
ふるえるくものすたまのよう
あなたがみかんをしぼるとき
あめつちふたたびめぐりあう
あなたがらっぱを ....
連れていかれた羊
針をいれられる雲
糸をくれるのは
知らないでいい人に決まってる
流氷にまつわる伝承のように
幼児のおでこで移ろっている
南国語で聞いても
腸は抜かれている
イ ....
雨があったかくなって
ほんとうだな、って
雨が あったかくなってるねって
ほころんだね梅が
そろそろ 空によく似あう
さぁさぁくり出そう
今日はとてもトライアングルな気分
また見 ....
一
面取のない
三角定規で引いたガクガクッ
こころもとないあの日の線
それ宙の果にただようガスの森
誰かが時を人と無理に結ぶため時を隔て
違う誰かが拡がる空間を国家としてな ....
あちこちでびん笛がはじまる
うち幾人かは胴をうまく叩いている 薄暮
目は子ども時分からよくない
たくさん撲たれてきたからさ
と、隣のじいさんが笑った
にごった水晶の弛みや
かわるが ....
海硝子が集まる潮溜りがあるんだ
陽射をまといやわらかにおし寄せる汀
ひっくり返ったヨットを数え
貝殻なんかひろっていると
不意に気が遠ざかる
雨になれば走れなくなる白い電車が
通う島に ....
手紙が来るのがわかります
そろそろ
来るんじゃないかな、と
空でわかる
鳥の羽ばたきで
そして週間後
ケッコンします、と
御出席賜りたい、と
幸せなことばが
私を苦しめ
カ ....
モノクロームの映画が終われば
カーテンを揺らし
しみ込む雨
誰か好きなんじゃないかと
錯覚する痛み
もの哀しい風景の色には
限られた感情の両端があり
その中に無限を確かめることもでき ....
ゆれる
場末のカウンターで一杯
曲と曲の合間の
エアポケットに燻ぶれ
ゆれる
ミュートしなよと
いつまで生きてゆくのさと
ゆれる
昼風呂にも様々な内外の境はあって ....
お日さまに焚かれて
雲さま
雨さま
じっと堪えろ
古い旗が 濡れている
港で網が 破れてる
子どもの声が 掠れてる
今朝のはじめての冬は
目をつぶった時の残像が
私が
過去 ....
笑っているの?
橋に見えるもののところで
食べているの?
空に見えるもののところで
ぜんぶ君のまぼろしだから
ぜんぶ人のまぼろしだから
強く洗わないで
ふるえる箱から覗く 両眼を ....
高いところを飛ぶ鳥に近づいて見れば
見あげる姿と違ったよ
原始宇宙に漂う 網目のような雨
試されて 行き来する
はじまりは 雲にそっくり
私にもよく似てる 落ちながら
....
どの恋人だったか
アヲハタのサイトがかわいいと
ポインタ空に漂わせ
無心にクリックしたあの頃
やり直せないかな
目が覚めて
自分を嫌いになるまでの
ほんのわずかな時間帯を
まき戻せ ....
倒したかったんじゃない 触れたかっただけ
侵したかったんじゃない 去りたかっただけ
避けたかったんじゃない通したかった
透けたかったのでもない助けたかった
思ったと思っても
ことばになる ....
めざめ
なにか黒っぽい
いくえにも重ねた
すき間だらけのガーゼ的なにかに
ゆっくりと眠りは
溶かされ絡まりながら
そろそろ吐きだされそう
視界の芯 ....
まっすぐ転がれない実 跳びはねたいふくらみ
ひそみ音にうまれ
みどりの波にたゆたう星の娘たち
まっすぐに見つめる こころをつなぐ
つないだ胸をあかるい笑顔で満たし
しなやかな手足に結ばれ ....
こけ色のシャツを着
こけ風のズボン履き
こけ臭がするジャケツを羽織る朝
私はひろがる ちいさなタマシイ
苔の多様に思いを馳せる
新鮮な舌のようなむらさき
朝つゆにあつまる金
うまれる ....
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