鬼の亡骸には色々あってなと語りはじめる叔父さんの瞳が
異様に赤かったのは\幼い頃は特に不思議でもなく云わば
当たり前の事柄として記憶されていたのだが\どうも変だ
な、何か調子が合わないなと気づい ....
あくびで一度とぎれた
ぼんやりとした想像が
ふたたび春らしい匂いをおび
洗われるまま
はなびらとして降る
爪先から土深く送り帰す
耳に触れる波を渡り
押し殺した時間を還す
語感で変 ....
背後では 電子音
老人たちを怯ませる
幾重もの窓を
切りまく高層
河口を遡る ひかりの山
子どもの私も
山を透り身を
長く横たえ堤になれた
両腕に抱えきれる
幅しかない細流を ....
登場人物たちに
声援をおくる
勝って欲しい 成就して欲しい
今度こそ報われる 諦めることなく
選手や 片恋
老いたぬいぐるみ
鼻に生じる脳みそ
夢として描かれた
....
風の中で
花びらになるもの
一枚のレンズ越しに見える
様々なかたちに折れる
吹きながしになって
君と痩せた蜂の両足が
季節を運んでいる
胸が渇き
私は何故かシャ ....
眠りをさますのは
グラスのピアノ
窓のカタコト
外気が漏れている
天井が笑っている
風に去られ
人目からも外され
膨らんでゆく実をあたたかに想う
たったひと粒 ....
さくらが流れていると
ぼんやり彼を感じてしまうのは
何故だろう なんて
共にして
また横に
不意に春のふくらみを介して
濃いかすみが
音をあたためる傍らで
陶然と ....
いきつがない
こうすれば曲がる、こうすれば建つ
こうることで進む。これで大丈夫
これも見たことがない種子が
もうひとつぶ欲しいだなんて
昨日に憧れるなんて昨日に嫉妬する ....
透けるにほどない
まあたらしい光
君は旧い水道橋で 淡く色を重ねた
針は移す影に 勢いよく溶け出す
多くは柔くよく凍え
縫われながら解かれるだろう
疑いながら けれど喜べ ....
明るいうちに
ひろい集めた檸檬を絞り
傘をひろげ 交信する闇に
冷たく終わったものが
ほんとうは何だったのか
脱した先を
教えてくれるのは いつか
ぼくの終わり頃か
....
革の中に 息を預け
爪の尖は 岩肌を咬む
裸足で感じにくくなったもの
静かに回転する
弦たちと藻
くつ裏の結晶
それでも掴めない寝床は浮かぶ
きしむ涙も
乾ききっ ....
水 あつめるところから暮らす
俯く 嫌 こころ写すから
窓や雲を数える 迷うまで
何かの粒とうがいに使われた
白っぽい水が
くり返し吐き出され
洗面器を満たしてゆく午後
わたしの ....
崩れずにいたものをゆっくり持ち上げる
溶けきる前であなたは速度を増すので
急いで噛みくだく
氷の手ざわりはこういう風
わたしは砂場で縮んだ
縮む夜の砂漠の拡がり
横臥したまま口づさむ
....
返してほしいと 思わない
色は移るもの
傾いて立てば
月は ひかりを増すだろう
誰もいない水色の駅
からっぽな身体で
囀るピアノ
微睡むマリンバ
貰われた車輪 ....
旧いメールソフトを起ち上げ
歳も性別も不鮮明な
かつての幽囚らと交歓をくり拡げる
真剣でいびつな文書の叫びが
今は新鮮で
添付された極めつけの笑顔は
嘘をつくのが
この上なく巧みで
....
なつかしい声に ふり返ると
まだ冬だった
困惑したり 暖めあった
窓辺から
ありふれた粉雪に
見えかくれして
息をきり
背をのばすと
秋のひかりは澄む
夏の水が ....
傾いたしずくは
笑うと よけい邪魔だった
離れられるから
乾いてすこし 間のびした
これから 古い 手紙を燃やす
もう、冬が 終わるから
束ねた意味を
要約すると 「寂しいよ ....
これは わたしのナイフ
或いは短刀
名前は つけなかった
ナイフ
切るもの何も 持たないが
これぞのきらり
雨上がりの露地の 手ひどく乱れ
そのまま、ただ突かれ
木偶らしい
....
砂浜に流れ着いた
ガラス瓶は
ひとこと飲まされ
孤独を波に託された
知ってる、ボクも
ひろがる者だから
言づて
届かないと
解って重なる言づて
輪になって
ボクらの孤独の声 ....
そうだ
井戸だ
積みよい丸さを選ばれた
誰にも知らされず
あんな遥かな断面
無口に反射する逆光
誰の表情
わたし?
水の回転の向う
見つめる瞳があるのを
つまらなく考えず
明日へ ....
みじかい歯 うまく 磨けた
釦 軟らかく 外せる
カレーも かき混ぜよう
餃子 は さっと返す
においは 甘いのに 外は
みずいろ
枕に置かれ さくら
狂を発する ....
開けっ放しの扉から
吹き込まれる種綿が
つぎつぎと 頬をなぜてゆく
なぜながら 何故、なぜと問う
答えを知らない なみだ
ひとつの 私は
眼底にまで滲みわたる 泡と
波を受け容れず
....
ジャズなんか やめて
油画 好きになれる訳ないね
バカ ドンカン大きらい
「ふつう」
靴の履き違え したがるんじゃん
頑張ったら愛せてた でも痩せてみて
欲しかったのは絶対 つ ....
あけた白から 空を還せ
赤と分けて
てのひらが 帆船
とじたりひらいたり
的のよに
切りとれ
穴に落とせ 嫌がらせるな
星は
連射しろ 隙間なく
カメラを不許 ....
谷を降ると 邑があり
邑の奥には 娘がおり
鳥に囲まれ 竿を矯めていた
旗を嘗めるのは 炎
少年を 馬に 飼わせていた
閉じこめられたんじゃない
自分から 入った ....
黙って眠っていたかったのに
喋らされた
火焔をつめた この水殻に
うまく着火してよ 音をひく
かくん うなづいて
眠りながら
なにか もの欲しそうだったから
感情に群がる ほそ長い舌 ....
火を吐く タイヤの山から
長い欠伸で
鉄砂を見
遠くの街の 粉っぽい音が
吸いこむ胸 空に游ぐ
鈍い輝きを握りしめ
泥濘に踏みこむと
匂いが違う
あと少し の繰り ....
時々 要らなくなる
大人と不実
沈黙する子ども
身を伏せたところ窪みが
分かれはじめた
校医の胸の尖で
放送室の鍵を回す これで
訪れる別離
別の組を 遠くに眺めた
学年の差 ....
S
垂直の くねりを這う
ストローに閉じこめた泡の
細胞壁
光るものと 光らぬもの
ガラスが割れて S
あなたと私を 隔てる
嵐のよる
心臓が はっき ....
犬といる午後
肉がざわめく
灰いろのひろがり
この部屋で
許しがあったことはなく
交わす偽り
弾ける肉声
どこからが贖いなのか
どちらが生なのか
知る迷いはな ....
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