雨をぬぐって 歓楽の街の
のれんをくぐる やあ
ひさしぶりだね 建設的に
老いてゆけない 仲間たち
今夜は 死ぬほど酒をのもう
ひろって 交番に
届けてくれた お礼にと
そのひとは せつなく
あまい 夏の思い出の
残り香を わけてくれた
いしを ひろって
とおくまで はこぶ
きみの ぼくのための
ほほえみを ひらくと
かなしみまで とどく
たくさんの 約束をしたけど
どうやら この生涯では
ぜんぶ 果たせそうにないから
生まれかわっても また邂逅する
約束を つけくわえておく
だいじな あやまちを
わすれないように
おしたら すぐ
いたみを おもいだす
ぼたんを ひたいにつける
水ぎわに立って
砂を吐いている
ひき潮が それを
はこびつづけて 沖に
孤島をつくる
むかし ふたりで
つくって こわした 
火焔土器を 描いている
あきたら 気分てんかんに
クラゲを 呼びよせる
あるときから まいにちが
惰性になる 歳月は
ほどかれて だれのものでもない
くちびるの ふるさとへ
錘をおろしに かえる
明日も 生きてゆくために
今日も たくさんのことを
やりのこした 夕風が
たちはじめる 時刻に
からだを 洗っている
幕をおろして 劇をはじめる
中枢神経に 花がさくとき
ほんのわずか きみの頬をそめる
熱量が欲しくて まいばん
星の軌道を めぐってくる
くりだした 舌のさきを
くいちぎり きんいろの
鱗を ふりこぼしながら
ゆうやけ雲の むこうへ
逃げこんで いきました
ひとつの 荒野のおわりに
名前もしらない 月の花が
ほそながい 清潔な
首を さしだしていた
火を消して ねむった
おもいでは
ひとりでは
つくれないから
かみさまには
おもいでがない
いつか 見たことのある
風景ばかりだ ひとは謙虚に歴史を
学ばなければならぬ はじめから
螺旋をたどるのは いくつ 
いのちが あっても足りぬ
かぜに うながされ
めざめても あめに
ぬれ うなだれる
ひそかに あまく
あこがれて むくわれず
きのうの じぶんを
コピーする だけですから
いくらでも すぐできます
じまんするようで てれますが
なかみは なんにもありません
たまには こちらから
さかびん かついで
向こうへわたる 死者たちと
のみあかすのだ そのまま
帰ってこなくても 気にするな
じぶんを さがして
いるんじゃ ないんだ
世界との愛憎の 発熱する
断層に さわりたい
だけなんだ 舌で
ほしかったのは 荒野
みたかったのは
石をたたいて だまって
死んでゆく 血の系譜と
じぶんの ぬけがら
わたしが わたしを
ぬける いたみもなく
まだ ことばが
あつい いや もう 
くさりはじめた さかいを
鏡面に 旗をたてる
ここから さきでは
ことばが 失効する 
わたしを きれいさっぱり
拭いとってから 前進する
いつかの風が 世界を
ひとめぐりして また 
吹きつける おもわず
手でかばって はからずも
傷のありかを おもいだす
パンのあいだに
イロニーを はさんで
たべない べっとり
エロスを ぬったくって
ことごとく すてる 
境界に ぬぎすてた 皮膚と肉を
まいあさ まとう直前 わたしの
あばら骨のすきまに 火を
ともして くれているのは
誰だろう
驕りたかぶって 眠られぬ夜も
うちしおれて あるく雨の朝も
すぐに 遠くへ過ぎて
もう少し もう少しで
死を 語りおえる
この夏休みは リンゴとレモンと
スイカの皮を すっぽりぬきとり
息を吹きこんで フーセンにして
こどもたちに配る 八百屋の
アルバイトに 応募しました
ビルばかりの 街にいると
遠くへの まなざしを
忘れてしまう きみの
心ではなく 顔ばかり
みつめて ごめん 
ふみこえて 風の
崖から おちる
すべての言葉を いちいち
辞書でひき 升目に埋めて
水をかけていた あのころ
夢のつづきは いつも
さむいものを 育てていた
ぼくらが たがいの
希望に なるのだと
むつびあった あの場所から
なにかが しきりに
こぼれる
鈴のように
銀のように
ふるえる 天窓
みつべえ(385)
タイトル カテゴリ Point 日付
そろもん(旧交の話)自由詩107/8/30 20:48
そろもん(遺失物の話)自由詩207/8/29 20:53
そろもん(情動の話)自由詩207/8/28 22:42
そろもん(金婚式の話)自由詩307/8/25 21:27
そろもん(危機管理の話)自由詩307/8/24 20:55
そろもん(肖像の話)自由詩207/8/23 22:22
そろもん(日曜画家の話)自由詩207/8/22 23:26
そろもん(大人の話)自由詩707/8/19 20:12
そろもん(残暑の話)自由詩207/8/18 23:31
そろもん(恋煩いの話)自由詩707/8/13 18:59
そろもん(幻魚の話)自由詩107/8/11 22:42
そろもん(テントの話)自由詩607/8/10 20:37
そろもん(属性の話)自由詩107/8/9 20:10
そろもん(個体の話) 自由詩507/8/8 21:52
そろもん(象徴の話)自由詩207/8/7 21:50
そろもん(私詩の話)自由詩507/8/6 22:37
そろもん(盂蘭盆会の話)自由詩807/8/3 21:58
そろもん(関係の話)自由詩307/8/1 21:28
そろもん(切望の話)自由詩307/7/25 22:34
そろもん(すれすれの話)自由詩307/7/23 21:12
そろもん(境界の話)自由詩507/7/21 21:21
そろもん(悔恨の話)自由詩607/7/20 18:47
そろもん(食事の話)自由詩107/7/17 21:07
そろもん(出勤の話)自由詩507/7/15 23:29
そろもん(老境の話)自由詩207/7/12 22:16
そろもん(魔法使いの弟子の話)自由詩207/7/9 22:58
そろもん(非礼の話)自由詩907/7/8 20:26
そろもん(初学の話)自由詩107/7/7 21:48
そろもん(原点の話) 自由詩607/7/3 19:28
そろもん(啓示の話)自由詩607/7/1 20:43

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