行く手を遮る人のように
不安の影がたちこめる
追い払うために
小川のほとりに立つ

苔が敷き詰められた庭の清流
岩の向うに竹林の藪
たたずめば
火に群れる虫のように
影たちがどこから ....
隅田川より低い千住の街を
駆けていく幼い日のぼくの
こころの隙間に
川風がはいりこむ

湿気を含んだ重い風は
低い街並みをよぎり
川辺から離れた神社に
ぼくを連れていく

友だちは ....
十一月六日は
ぼくの革命記念日
書類でできた
書斎の階段状の巣の
撤去を始めたのだ

たちまち
透明な羽根をつけた
兵隊蜂があらわれて
警告を発する

「近づくな」
「何年もこ ....
朝の散歩に出る
内面の温かな海から
のぼる湿気
ぼくは挨拶したのに
無言のまま傍らを通りすぎる人の
視線に冷やされて
水滴になる
細かい不安が
その核になっている

他人の一言が
 ....
ピンで留めたように
肩に力がはいっていると
指摘された

意識して
力を抜くと
肩がわずかに下がる
同時に
手も
いつもの位置より
下にいく

気づかないまま
常に
力 ....
繁みの間から語りかけてくる友だち

幼いころに拾い集めたら
食べるとどもりになるよ
あの子はきっと
食べたんだよ
という子がいた

友だちの中にひとり
どもる子がいた

きみはド ....
名前とこのからだを
引き受けたときから
ぼくは舞台の主役になった

科白は自分で決めているようで
多くの出演者に
気配りしながら
作りあげていく

嫌われたくなくて
意見を言わない ....
公園の散歩道で
不意に
蝉の合唱に包まれる

ぼんやり
考えていて
身体にバリアーができて
今まで蝉たちの声を遮っていたのか

木々を見上げる
どの枝で鳴いているのか
蝉は見つか ....
なんとなくせかされる気持を
落ち着かせようと
傘を開くように
立ち上がる

肩から力を抜き
仙骨を立て
腹から息を出し
前を視ると
スクリーンが
ワイドになる

混雑する電車を ....
時刻表通りに来るはずの
予定という列車を待つ

今日は宴会で
ぼくが進行役だ
何もかも遅れがち
ぼくはイライラする
十分おくれで
皆をのせて出発する
宴会がはじまる
打合せで
飲 ....
公園の
並木道で
かすかに
聴こえる音
の精をさがす

淡い
色すらない
音の精の
羽が
ひらひら舞うのに
輪郭が
ぼんやりしてきた
こころが
よりそう

ためきれない ....
街路にいるぼくが
語りかけるとき
胸の塔の
小さな窓があき
風がはいって
搭の中に眠っていた
もうひとりのぼくが
街路をのぞく

去っていくときに
長い髪をゆすって
一度だけ
 ....
竹の葉に星が宿る
母が切った色紙の短冊を前に
幼いぼくの指や手や
腕から背中へ
ありったけの力が
みなぎっていく

卓袱台に
前かがみになって
鉛筆を握って
母に教わりながら
字 ....
合気道の稽古で
左目を傷つけた
痛風の発作が
右の親指の付け根に出た
車庫入れのときに
自動車を壁でこすってしまった
黒皮の財布を失くした

それでもぼくは
幸せであると唱える
 ....
不意にこころに訪れる黒い種

夜道で
声をかけられる
ぼくの横隔膜が振るえ
喉まであがってきた声がつぶれる

職場で
背後から近づいてきて
落ち度を探る視線の先が
サンダルを履いて ....
ぼくのからだには
女神が住む

臍のわずかに下に
寝殿がある

からだから力を抜くと
女神が目覚める

からだが力んでいると
女神は寝てしまう

動きだす時にぼくは
力む癖が ....
挨拶したのに
ぼくを見て
顔を横にして
何もいわない人の
その一瞬が
ぼくのこころに
小さな傷を作る

返さない人の
こころのうちは
苦しくはないのだろうか

その人のことを
 ....
眠りは死の子ども
一日一日
気づかないうちに大きくなって
やがてぼくと等身大になると
目覚めることがなくなるのだろう

いつその日が来るかわからない
いつそうなってもいいという
準 ....
腕から力を抜くには
一旦手を握りしめて
振りながら脱力して
それが在ることを忘れる

考え続けて
不安になったら
安心できる人に話す
日記に書く
言葉で握りしめた後で
考えない ....
入学したての小学校の教室の机に
ひらがなで名札がついていた
その席に座ったら
ひとりぼっち
と風がささやいた

家に帰ると
オコちゃん
おやつがあるよ
と母に呼ばれる
近所の子ども ....
ぼくのこころに根をはって
大きくなった老木が
公園の散歩道をゆく

墨絵のような老木から
枝が生えて
格子状に柔らかく伸びて
その先に花が咲く
躑躅の紅い花
ハナミズキの白い花
菫 ....
ぼくが朝に来るたびに
遠景にある像がわずかに
動く気配
それをモアイ像となづけて
毎朝
位置を確認する
いつかぼくと一体になるために
近づいてくるのだ

事故のときには
重い像が空 ....
朝起きたときに
眼の前に浮いている
小さくて透明な玉に
息をふきこむ

ふくらんでいく玉の
縁をなでると
中に
今日が観えてくる

三つのことをしよう
妻と買物にいって
郵便を ....
背中に杭がささる
子どものころはそのまま
小学校に行った
人には見えないので
痛みをこらえている表情を見せなければ
だれにもわからない

休み時間に追いかけられて
プロレスのヘッド ....
色紙を折って
六角形の船をつくる
水が入らないように
縁を高く折る
かわいいお雛様を折るときに
見えない不安を
そっとつつみこむ

これから
どうなっていくかわからないのに
想えば ....
朝の心の空に
温暖前線がやってきて
晴れて
温かくなった
さっきまで雨が降っていたのに
雲も遠くへいってしまった
公園に散歩に行って
寒椿の花をながめる

午後
嫌なことを思いだし ....
汲みあげる
言葉になる前の想いが
溶けている井戸水から

丸い壁の井戸の底の水面には
手がとどかない
のぞきこむと
そこには何十年もつきあってきた
おれに似た顔がいる

顔はつぶや ....
頂上から
山の斜面にある
噴火口のくぼみまで
火山岩の砂利を踏んでくだる
植物のない荒涼たる大地

坂の途中で
凹んでいるところは
地球のえくぼだ
そこからあがったところは瞑った目
 ....
日々の不安に花が咲く

小針の形をしていて
胸に痛い不安の種を
心の庭にまく

その姿が見えないように
土をかぶせて
言葉の水をまく

新しい種が
胸をチクリと刺す
それも ....
おれの家にはカミサマがいる
毎朝公園を散歩する
おれがよりそって歩くので
怪しげな影は近づかない
近所で揉め事だ
カミサマを守っておれが出ていく番だ
言葉に気合を入れる
四十年近くも会社 ....
殿岡秀秋(136)
タイトル カテゴリ Point 日付
胸のせせらぎ自由詩514/11/2 10:00
風の問いかけ  自由詩714/10/15 5:26
革命記念日自由詩314/10/1 6:01
不安発生自由詩614/9/1 9:38
肩から力を抜く自由詩514/8/15 4:32
ドングリ自由詩914/8/1 4:55
嫌われてもいい自由詩514/7/15 3:53
気づく自由詩514/7/1 9:51
落ち着く自由詩614/6/15 10:53
予定自由詩314/6/1 5:13
微かな音自由詩514/5/15 5:51
胸にチクリ自由詩10+14/5/1 8:13
七夕自由詩814/4/15 4:12
ぼくは幸せである自由詩914/4/1 3:45
不安は詩の母である自由詩614/3/17 5:28
からだの中に女神がいる自由詩414/3/1 6:03
無視されたら自由詩814/2/15 5:25
眠りは死の子どもである自由詩914/2/1 19:59
悩み過ぎないためのレッスン自由詩514/1/16 2:51
二つの名前自由詩1214/1/1 4:37
宝物 自由詩7+13/12/15 6:23
死のモアイ像自由詩1013/12/1 3:55
シャボン玉自由詩513/11/15 3:49
心に杭がささる自由詩713/11/1 5:41
流し雛自由詩713/10/15 5:13
閉塞前線自由詩813/10/1 4:54
心の井戸自由詩913/9/15 3:51
地球の顔を踏む自由詩713/9/1 19:03
日々の不安に自由詩713/8/15 3:39
おれは番犬だ自由詩813/8/1 4:34

Home 次へ
1 2 3 4 5 
0.11sec.