それは
囚われの魂が
ひび割れた玻璃の裡から放つ
灼熱の産声

永遠という名の陽だまりに
生まれ咲いた花よ
太陽の娘よ

姿なきそなたの
姿を描き出すのは

静寂という名の繭を ....
「苦悩」

あかはちしろはゆき
あおはそらみどりはもり

まぜあわせないままに
絵を描いたなら
それは誰の血でいつ降った雪か
だれの目に映った空と森か
それを描くのは誰の指で
けな ....
忘れた人は
裏切者
そんな不文律の薫る口約束

春、音もなくみだれる
風のまにまに

結んだ蕾、桜色の唇
震えるように綻んで
ころしてやる

忘れたことも
居合わせたことも
 ....
首を絞められる夢を見る

そっと首に
誰かの手が触れる
のしかかるように力がこもる
顔は逆光に陰り
歪んだ口元だけが鮮明で

どんな復讐も
届かない過去の中から
思い出したように時 ....
ほら

わらって

わたしみたいに

わらって

いたくないよって

わらって

わらったら

みんなしんじるから


わらえ
「せんせい」
僕たちがそう呼んだ
すべての人たちへ

せんせいたちが
愛し愛された
たくさんの教え子のなかの
最も従順で
素直だったあの子に
せんせいたちが
今日
後ろから刺され ....
気丈にふるまう僕を
むせび泣く僕を
知らないでいる君へ

癒えることのない傷を
負わせてやりたい
疼き、絶えず血を零し続け
夜には眠りを忘れ
空想の中で僕を
繰り返し繰り返し
殺し ....
山のおくの

ごみ処理場のごみの山で

捨てられていた人形のぼくは

捨てられていた人形のきみの手をとって

月明かりのなかを

どこまでも歩いていく


夜が明けるまでに
 ....
散らかる部屋で
ぼくも散らかる物のなかに
転がって
散らかってみる

明るくて冷たい夜だ
今日は満月だ
見なくてもわかる

何も言わない
声が聞こえても
名前を呼ばれても
ぼく ....
なあ
きみは似ているよ
ぼくが今まで出会ってきた
ぼくがきらいな奴らすべてに
たとえば
自分がまともだって思い込んでるところと
鼻のあながふたつあるところとか

洗面所のガラスに映った ....
芝生の上にすわって
ぼくは
ポケットのビスケットを半分にして
ひとつきみに渡した
「あげる」って言ってから
ぼくはもう半分を食べた
きみは
となりにいなかったから
きみのぶんもぼくが食 ....
美しさは
檻のようなもの
その冷たい鉄格子のなかに
閉じ込められる人は
美しさに執着する
ほかならぬ自分自身

美しさは
翼のようなもの
翼をもたぬ人の目に
眩い光をふりまいてゆく ....
朝メシは西瓜
昼メシも西瓜
晩メシも西瓜
西瓜スイカすいか
おれの家は西瓜

おれはひたすら食い続けた
赤い果肉を無心に頬張りながら
朝も昼も夜も
休むことなく眠ることなく
齧り咀 ....
最果てを知る形而上の声
むつび合う因果の指

君は
光と影を刻印した
その半神の体を
迷い込んだ月夜の湖に
優雅に揺蕩わせている

甘く疼くカタルシスの咬痕
仄暗い五欲の潮流

 ....
肌に髪に瞳に
映し纏ったあらゆる色を
脱ぎ捨てて
君は
真夜中の姿見に還る

それは潮の香り
それは海の遠鳴り

遥かわだつみに生まれた
嵐の激情に
抱かれる瞬間を待つ

無 ....
狂い咲く
真冬の向日葵

君を白く穢した
情欲の迸り

伽なき夜の
けものけだもの

生きたまま月を食う
とお吠えひとつ
またひとつ
棘の内に
秘めた一輪の薔薇

二人の指で
ひとつ、またひとつ
深紅の花弁を
真鍮の秤の上に

積もりゆく深紅の花弁
僅かな偏り
時間を忘れて
無心に花弁をのせあう指

永遠に ....
君は雪
風さそう木かげに揺れる
真夏の白い花びら

瞳にとらえた
黒い蝶をたわむれさせる
あだ花の白い苞

溶けた鏡の内側に
失われた永遠を描く
半神の白い指

ぼくは虫
真 ....
詩を書く
声にして言葉にせず
文字にたくす
叫ぶように
囁くように
人の見るものを見ず
見えないものを溺愛した
僕のなれの果てを
誰かに吐露するために

詩を書く
念じるように
 ....
この前の
雨が一日降った土曜日に
ぼくの棺がとどいた
特注品の大きな棺だ

二人分くらいのスペースがある
樫の木の暖かな棺だ
ぼくが寝そべった横に
生きているうちに読み切れなかった本が ....
詩を書くことで
何をしようとしているのか
何を目指しているのか
誰になろうとしているのか

詩を書くことが
何か格式ばった神聖な儀式であるかのように
錯覚し自惚れた過去の自分から
こん ....
生と死の円環をめぐる
絶海の小舟を漕ぐ

過去の亡霊を振り切るために
あえて嵐の遠鳴りのほうへ

生は
死を乗り越えること

波は静かにそう語る
精神の潮流にのって
肉体の小舟で漕ぎ出してゆく

陸が見えなくなると
ぼくは裸になって
小舟から身を投げ出す

青い波の荒野の上に
ぼくの小舟と服と
樫の木のオールが残される

 ....
青だ
ぼくのこの
狂おしい恍惚の色は
まだ瑞々しい渇きに満ち満ちた
果てしない海の青だ

潮騒がする
耳をあてた胸の奥に
白い指のからみ合う
真昼の夢が薫り立つ

熱き血潮の
 ....
夜中に喉が渇き
母屋の錠を外す
手探りで明かりを点け
台所の静けさに佇む

グラスの氷水を飲み干し
仮に
今が冬であると想像する
台所の静寂は冬の冷気と相まって極まり
僕の吐息は白い ....
煙がすべて空に消えたら
ぼくの骨を拾いに来てくれ

肉はすべて
烏どもにくれてやった

ぼろぼろの骨のなかから
丈夫なものをひとつだけ拾ってくれ

それからそれを
あの女の部屋に投 ....
愛するということは
海にもぐるということ

一分もしないうちに
ぼくは息が続かなくなる
水面に引き返すか
でなければ溺れてしまう
でも君は
生まれたままの姿に
鰓と鱗をまとっている君 ....
やっと
太陽をつかまえた
つかまえた腕のなかで
少しだけふるえていた
唇をかさねると
少しだけ悲しそうな顔をして
それから
眠るように目をつむった

抱きしめた腕のなかに
太陽のに ....
湖がふるえていた
さびしい さびしい と
だからぼくは
君が残した爪痕をさらに抉って
その傷口から赤い鱗の鯉を
そっと放ってやった

かすかに海水の混じるそこで
長くは生きられないかも ....
永遠は信じない
君はそう言ってわらった
綻びある命だから
そう言って本を閉じた
セックスが終わって
虚ろな闇だけがのこった
雨の音と吐息と
汗に濡れた髪が冷たくなって
夏のなかに夏を失 ....
両性具有(43)
タイトル カテゴリ Point 日付
永遠自由詩020/3/31 0:23
苦悩、遊び、果実自由詩020/3/28 21:59
開花自由詩420/3/28 21:42
夢魔自由詩120/3/28 21:24
校庭自由詩020/3/24 2:07
先生自由詩2*20/3/23 0:23
依存自由詩120/3/23 0:05
退院自由詩420/2/10 0:11
満月自由詩3*20/2/9 23:43
カリスマ自由詩119/12/18 23:16
12月自由詩319/12/17 21:05
醜人自由詩019/9/16 20:48
西瓜自由詩119/8/4 21:28
オルカ自由詩019/7/28 23:23
姿見自由詩019/7/24 23:13
白黄自由詩219/7/23 22:00
天秤自由詩019/7/23 21:41
夏雪自由詩019/7/23 0:26
詩綴自由詩219/7/20 22:55
自由詩019/7/18 0:11
彷徨自由詩019/7/18 0:00
絶海自由詩119/7/16 0:23
渡海自由詩219/7/15 22:41
最果自由詩319/7/8 0:35
台所自由詩419/7/7 22:15
葬送自由詩8*19/7/6 22:20
鰓鱗自由詩219/7/6 22:06
太陽自由詩319/7/5 20:12
夢遊自由詩319/7/3 23:37
永遠自由詩119/7/3 23:21

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