人生は、「意味が最初から用意されていない時間」。目的や正解が先に置かれていない、生まれた瞬間「これが答えだ」という台本は渡されず、ただ時間だけが与えられる。その時間の中で、何かを欲しがり、何かを恐れ、 .... この国では、芸術は意味を与えないことを目的としているらしい。目的という言葉が正しいかどうかは分からない。ただ、意味が生じかけると、誰かがそれに気づく前に、自然と処理されてしまう。処理という言い方が一番 .... 今村昌平は、人間を撮っていた。
いや、撮っているというより、そこに居座っていると言った方が近い。カメラは回っているのだが、回っていることを主張しない。ただ、人と同じ重さで、その場にある。今村の撮り方 ....
ゾウは深刻な顔で悩んでいた。
鼻が長すぎるのである。
長いというより、余剰だった。用途不明の延長コードのように、床にとぐろを巻いている。歩けば踏む、踏めば驚いて鼻が跳ね上がり、跳ね上がれば自分の顔 ....
朝、主人は何も言いませんでした。
何も言わない、ということ自体が、すでに何かを言い切っているような沈黙でした。

起きてくると、主人は卓に座り、腹のあたりに手を置きました。押しもせず、確かめもせ ....
病院で渡された書類を、
私は椅子に腰掛けて読んでいた。

本文は簡潔で、
氏名、生年月日、
必要事項だけが並んでいる。
安心できる文章だった。

ところが、
下の方に小さな数字が付い ....
フェリーニが言った。
「映画はね、サーカスだよ。象がいて、道化師がいて、最後はみんな死んだふりをする」

アントニオーニが言った。
「いや、映画は空白だ。人間がいなくなった後に残る、風の通り道 ....
「なんたらかんたら」とは、なんたらであり、かんたらである。いや、正確に言えば、なんたらでもかんたらでもないが、同時になんたらでありかんたらでもある。その曖昧さこそが、なんたらかんたらの本質なのだ、と誰 .... わたしは鏡だ。
光を返す前に、沈黙を受け取る。

顔が近づくたび、
人は自分を探しているふりをする。
だが探しているのは、
赦しか、断罪か、
どちらかだ。

わたしは答えない。
答 ....
時間は道にも、扉にも立っていない。
それは胸の内側に潜み、
こちらが目を閉じても、
なお問いを発し続けている。

朝は救済としてではなく、
告発として訪れる。
目を覚ました瞬間、
私は ....
影絵は遊戯ではない。それは夜が自分の来歴を語るために用意した、沈黙の劇場である。

私は障子の前に手をかざす。すると五本の指はたちまち骨ばった枝となり、枝先には名もない鳥が止まる。鳥は鳴かない。た ....
撤収は予定どおり、午後五時に開始された。予定どおり、というのは、時計が五時を指していたという意味であり、撤収という行為が本当に始まったかどうかについては、確認する術がなかった。知り合いの集団は、知り合 .... 『ブリキのタライ』
の件で
頭が一杯だ
タライ一杯では
足りない程
頭から滴り落ちている
視覚化出来ない
その滴りを
眉間に、受けて
鼻を通り
眼窩へと流れ込み
頬を濁流と
化 ....
雲もあ
あ数が多いと
物質的になって 惰性のなかの
大道具にしか感じられない
何も起きないのが、一番の
テーマなんだよ
テーマを口にするようじゃ
もう駄目さ
ぼくは監督に深々とコウベを ....
理由

家族らしい人がとりすがって
泣く理由を探している
ぼくに家族が居たかどうか
薄れ始めた記憶には術は無いのだが
爪の長い指が業者のように
内臓を捌きながら あゝ
この胃袋には
 ....
娘はクリームソーダをずるずると啜っている。そのずるずるが気に障るので、やめろと云うと、ストローを離し、唇にあてた。でも小さい娘には、硝子の容器が大きいので、両手で持っても飲みにくそうだ。「ほんと意地悪 .... いつもの部屋


寝返りのうてる高さに枕を濡らす。身体に比べて耳が異様に巨大化している。右耳だけが。心臓を上にして横になっているので、重さは、苦ではない。耳朶が足先まであり、指で弾力を確かめて、 ....
人宿り

もうすぐ僕が降ってくる
はるか高い屋上の
錆びた柵を乗り越えて
西日を浴びた夕刻の
遠い目をした僕が
真っ逆さまに
降ってくるでしょう

僕の僕だけの降人予報
確率は7 ....
きみとぼくは警察に追われている
ぼくは強盗をしたらしい
きみはその手引きをしたらしい
派手なカーチェイスがあり
奇跡的な突破があり
きみとぼくは南国の
テーマパークにどうにか
辿り着 ....
黄金



ボタンエビの夢をみた(ワサビは付いていなかった)

おのさんは、新入りだった。システムに組み込まれるための面接。それは、三日前だった。履歴書に、たくさんの嘘を書いてしまった。写 ....
ミライ



彼女の部屋には小さいベランダがある

そこに大きな室外機がどんとある

猫の額に、犬が座っているようなものだ

そんな余白の無い欄外で

ぼくは、タバコをすいたい ....
ココロ

彼女の部屋で つかの間
すごすしあわせなココロ
ココロは 彼女の顔を
見つめさせたり
目の奥を 覗き込ませて
彼女の向こうにある
秘密めいたものを
探らせたりする

で ....
ここ



閉まっているとばかりおもっていた
ドアが 一つの動作を加えただけで 呆気なく
開いた どこをどうやったんだい
ここをこうやるんだよ
ああ そうだったのか
と 納得した ....
別離さん


じつは、
もう、あきたんだ・・・

ぼくの底も、見えただろうし・・
きみの底も、丸見えだ・・・・・

縄で、降りていったら
つきなみの愛欲と悲しみと
不安と諦めが、 ....
立場



紳士が叫んでいた
たいへん興奮していたんだろう
誰だって 興奮は するから
誰に だって 思惑が あるように
紳士 に だって あるだろう

紳士 だって・誰か... ....



遠い友人が教えてくれた小説を目に入れている

その小説の左側には、窓があり、白いカーテンに
覆われている
青白い優しい光が、部屋の半分を
容易く理解し得る輪郭にかたどっている
 ....
後期(26)
タイトル カテゴリ Point 日付
人生自由詩126/2/5 23:11
区域B自由詩326/2/5 9:29
ショウヘイ自由詩226/2/2 20:45
ゾウさんとキリンさん自由詩426/2/1 7:04
戻す理由自由詩326/1/31 11:05
脚注自由詩126/1/31 1:12
OZさん自由詩326/1/30 0:11
なんたらかんたら自由詩126/1/29 18:19
わたしは鏡だ自由詩126/1/28 15:13
時間自由詩126/1/25 8:25
影絵自由詩426/1/24 20:17
舞台自由詩126/1/22 20:25
タライ自由詩226/1/11 12:17
場所自由詩020/12/18 3:15
理由自由詩020/12/17 0:26
ずるずる自由詩020/12/13 22:03
いつもの部屋自由詩120/12/1 5:16
人宿り自由詩1*20/11/29 22:24
ファタジェトジュ自由詩119/10/7 8:24
黄金自由詩019/2/25 13:32
ミライ自由詩219/2/25 13:10
ココロ自由詩319/2/19 20:29
ここ自由詩3*19/2/19 15:26
別離さん自由詩0*19/2/15 11:01
立場自由詩019/2/8 12:44
自由詩019/2/7 12:37

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