希望の朝。
常緑樹が瞳に優しい。
無情の朝。
屹立する断崖絶壁に立っている。
どんな夜を過ごそうが朝は来る。
不安、悲しみ、淋しさ、諍い。
微笑み、喜び、美、愛 ....
湖のほとりで吹く風が私に優しい。
朝散歩に人はまばらでこの場所を占拠している気持ちになる。
朝日を受けてキラキラと輝く湖面はまるで私の心のようで
耳の聞こえなくなった私の唯一の癒 ....
酷暑の中、日傘もささずにこの村を歩く者がいる。
正午の鐘が鳴る。
家々の窓は固く閉ざされている。
黒いマントを纏ったこの男は、片手にステッキを持ち、長い石畳の坂を上ってゆく。
....
満天の星空が、朝靄の中に静かに消えてゆく。
鳥達はいつもの歌を歌い、季節の花達はその手を広げている。
誰かの魂と私の魂が共鳴しては離れてゆく。
キャンバスの淡い白色は歩き始めた娘 ....
明け方の情景
聞こえる鳥たちの声
満ちてゆく心
窓を開けると初夏の匂いがした。
私の庭では赤いカーネーションが花を咲かせている。
母に贈ろうか。
親不孝を重ねてき ....
ピアノの余韻に酔いしれて浮かび上がる複数の顔。
昔の情熱は夜空の彼方の星々に溶け込む。
毎日が白けて過ぎて行く。
逃げ出したいのに義務というつまらないやつに囲まれている。
....
群青色の波間に漂ううっすらとした顔の群れ。
優しさを纏ったその顔は私の回想。
過去を封じ込める事に失敗した私の想い。
ただ一つ誇れるのは私はまだ死んではいないという事実のみ。
....
天窓のその奥に見える満天の星空。
星座は煌めき雄弁だ。
部屋の中、アロマにはローズ・オットー。
今日は夜更けまで読書をするだろう。
窓辺に届いた木の葉の招待状。
明日の夜 ....
緑の映える公園に人は少なく、秋の入り口に私は立っている。
涼しい風があなたを通り過ぎる。
小さな肩が私に寄り掛かる。
あと何度こういう時が訪れるだろう。
冷たい現実を前にして ....
明け方の珈琲にそよ風が舞う。
テラスに小鳥は雄弁で
朝日をがやがや待っている。
やがて昇った太陽に口づけすると光の帯が降り注ぐ。
大きな巡りの中で朝はやって来る。
騒がし ....
新しい風は窓辺を抜けてこの部屋に一枚の若葉を寄こした。
柔らかな音楽に私の心がハミングしている。
描きかけのキャンバスはひっそりとそこに佇み、
次の一筆を黙って待っている。
....
憧れは遥か遠く、朝霞の中、船はゆくよ。
島国のはずれ、それともよその国。
いろはに数えた八つの島。
沖のかもめは歌うだろ。
あの島目指せと歌うだろ。
なんでそんなに悲しげ ....
祭りの日の夜、賑わいの中で浴衣が揺れている。
蒸し風呂の中での会話のように言葉はくぐもり、
汗は流れ、肉体は肉体の中で直立している。
虚しさは寂しさを無限に超越してゆく。
男 ....
湖面に広がる波紋の数をそっとなぞると朝が来る。
ぼんやりした空模様に湖岸の紫陽花は沈黙を守る。
ほんのり青味がかった空気を吸うとまた一つ思い出が増えた。
野鳥の声の鳴り止まない切ない ....
海鳥の鳴く午後、羽を広げた大海はその背に輝く日差しを浴びている。
やがて訪れる闇から逃れようと必死でもがく人々が街路樹の影に潜む。
闇を好む人々が公園通りに群れをなす時、
しもべのカ ....
緑色の衣を羽織り人が死んでいる。
うっすらと開かれた瞳に映る永遠。
絶望や幸福を超越する組まれた手。
愛に包まれた人生。
音もなく忍び寄る悲しみは
目の前に広がる大海を ....
音のない部屋の窓からしっとり濡れた庭が見える。
泣き濡れた空に向かって紫陽花が優しく微笑む。
ゆっくりと窓を開けると夏の匂いがした。
季節が移り変わろうとしている。
やがて誰 ....
海風にさらされた長い髪を何かを伝える為にバッサリと切り捨てたお前。
錆びついた時計が時を刻むことをやめた。
煙草の煙が塊となって宙に飛んだ。
僕は無表情で心が死んでいるようだ。
....
雨降りの休日に訪れた西洋館。
静かな音楽が流れ、時が緩やかに過ぎてゆく。
思い出すのは祖父の家。
誰もいない応接間に幼い僕がいる。
飾り棚に美しい酒瓶、アンティークドール、日 ....
月の見えない夜に想う。
沢山の愛に包まれているのに何をまだ欲しがるのか。
本当に孤独の人の気持ちはわからない。
失礼を承知で自分の孤独を唄っている。
濃紺の夜空に星達は輝き、 ....
原色の静けさの中ここは湖底。
月光は青い輝きを紡ぐ糸のよう。
黄色の象徴は何を思うか。
息苦しく波打つ湖面に雨は降る。
血潮に染まる感情の震え。
息苦しさを抱える貴方が見 ....
夜の延長線上にある朝に聴くコルトレーン。
時間をさかのぼると見事に夜へとつながっている。
今この時までの道程に私は立ち尽くしていた。
時計だけは正確に過ぎ行く時間を刻んでいる。
....
古びた洋館のベッドの上で私は眠り続けた。
眠りの中で右腕を伸ばそうともがいていたが動かない。
記憶の中でトイレに行きたかったのだがそれも出来ない。
意識が朦朧としていてそれ以外は何も ....
海沿いのカフェで猫があくびした。
隣の席で彼女があくびした。
その様子がそっくりだったので私は笑った。
君が猫なら僕は何だろう。
港の見える丘公園で二匹の猫がじゃれていた。
....
のっぺらぼうが私に一つ菓子をくれた。
菓子を食べたら私は大きくなった。
恥ずかしさで私はしゃがみこんだ。
けれども私に気付く人は誰もいなかった。
のっぺらぼうが私にもう一つ菓 ....
生と死の狭間で虹を見ている。
気に入らないものは排除し、生きてきた。
気付いたら一人ぼっちになっていた。
男も女も居なくなった。
生と死の狭間で夕陽を見ていた。
目の前に ....
目覚めると、先ほどの光景が記憶の片隅に消えてゆく。
天井に向かって手を伸ばす。幸せな記憶を逃がさないように。
それはするりと僕の手をすり抜けて記憶の彼方に消えてしまう。
もう無理だよ ....
茂みから覗く瞳に偽りはないけれど、誰がそれを信じるだろう。
瞳から涙がとめどなく流れてゆく。
何もかも失った訳ではないけれど、愛するといったところの愛とは一体何なのだろう。
信じるも ....
闇夜の行列が憎しみの彼方からやってくる。
それは巨大で、熱情を伴い、魅惑的だ。
逃げ道はない。
それは常に君の前にやってくる。
闇夜の行列が悲しみの彼方からやってくる。
....
衣擦れの音で目が覚めた。
こんな夜更けに、暗闇の中で。
気配をうっすらと残しそれは消えた。
夢であろうか。
誰もいようはずもない。
妻も子も出て行った。
私は病気だ。
心 ....
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