焼け焦げた土の層
折り重なる透明な死臭
腐りきった皮膚から
シーラカンスの血反吐
しわくちゃな羽根を開く
バッタの振動
ビニール製の脳みそが
旋回しながら
亀裂の数をかぞえてる ....
その場から逃亡したくなる衝動を
退去だけを渇望する怨念を
それを
いまだ感じ得ぬ喜びもつかの間
汚れてしまう
汚れてしまったら、
清めて流す
気高さを取り戻すため、清め
新しき膜を ....
酔っぱらい帰ってきた恋人が
言葉にならない声で云う
畳に敷いた布団において
逆さまに寝て
腕を遊ばせ云う
私の愛情を確かめるように
私の目の奥に仕草を残す
やつれた私のはずれた釦
....
風船鼻のした
もうろう
菌糸類
吊り橋
ダム湖
放棄皿洗い
夜草
あやとり
鉄
飴バッタ
くさく硬い網へ飛び込み捕われた
網に絡まりもがきながら演奏している
....
降雨の色は
さながら玉虫
耳へ
迷い路の水滴音
風に舞う羽音
耳へ
吸い付く蝶の
模様の構造
針の穴通す
降雨
濡れ苔弾く
切り立つ
顔面岩
霧立ち上る
洞 ....
欠ぶ、観葉植物
損なう、滑り台
仕損じる、殺生
深緑の葉脈に沿って
這いずり、飛び回る
線が、からみつく
小雨が降り続く
消えてゆく線を拾いきれず
窒息する、
背中の氷の洪水だ
皮脂の膜べたつく額
ふくらむ浮き輪
くらげの子
頭上で銀の楠玉が
言葉少なく明滅し
波打ち際の猫のべろ
巨大なふぐがつかまって
海中の階段が
何重に ....
激しさを
増す
ある平面に
ある鋼鉄に
ある蜂の巣に
しわくちゃの花畑
乱雑に吹く風の
ある窓辺に
ある土手に
生気のない声量で
音符を並べる
さる河口に
さる ....
異国の笑みで豚のまね
空耳を交換する食事会
いびつな窪み膝の皿
池に魚を泳がせて
コートを縛る腰紐固く
凍るサドルに餅を置く
隔たりは言葉ではない
発音でもなかった
猫なで声
金木犀の
白亜紀まで
追尾する
老化現象
とりとめのない時空のゆらぎを
指先から逆流させ
それをしっとり花瓶に活けて
毎晩大事に水を遣り換えるように
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