あそこの靴屋は
きれいなかたちのかなしみを売っている
こどもに蹴られて傷んでいた
ひろいあげて
ショーウィンドウにふたつ
つみかさねた
朱欒の実
黄昏どきは
半透明の落葉とおん ....
路傍に酸漿の実が
ひとつ落ちていた
睫毛の影
黄昏時に震える飴色の
懐で翳した
さかしまの風の流れを映さないかと
鈴の音もなく
からりからり
蹴飛ばして
丸い膜の内側に吐 ....
夏ゆく渦中の生が他生を殺して
何の声もきこえない台所
コルクを外し
のぞきこんだ硝子壜の帆船
幼い汗を嗅いだ
子供のおこがましさのまま
巨星に打ち捨てられる
過去の魂に対峙して
そ ....
深夜シャンデリアの爆発
すべて蕾のままの茴香を焼いた
そのための燭台
何も語れない胸で抱く険しい手
電線に新月も砕けたあとのまつり君の静脈
鼓動きわまって海につづく
ただうなてのそこ私 ....
路傍
死んだ鳥の目の見開き
この陽射しより強烈な光が映っている
頭上
毟った蜻蛉の羽根だけ飛び立つ
腸まで透けていく陽射しの下置いて行かれた
空調の微風が室内に積もり
あらわにな ....
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