凍り付く 空にかざした薄ガラス

ぽつ、ぽつり 浮かんで
じわり、じわ 滲む
淡色の灯


昨夏着られなかったままの
新品の浴衣の布地

それとも十年ぶりに焼いた
パウンドケーキ ....
血の匂い

それは、遥かに、

生きているということ
人たちが 今口にすることばは
空の色の数
道にいる動物の匂い
草を踏む音
折れた傘の骨の光

覚えているようでもう覚えていられない

あの日確かに知っていたようで
実在したかももう分 ....
心臓の奥に
腕が三本あって
それぞれ違う形のナイフを持っている

見えない未来を切り拓くもの
一秒前からの過去を切り刻むもの
「綺麗な刃物を所有する」だけのもの

三本の腕は互いのこと ....
人は、なれるもの
昨年までエアコンがなく

といえば全裸で
過ごすものであったのに
今となっては朝から冷房を入れて
そのくせ布団に
這入っている

人は、なれるもの
家族が一 ....
空を横切る黒い線

手を繋いで風に揺られる

交差点では

信号無視の歩行者が

一人、渡ればまた一人

ヘッドライトの流れに飲み込まれていく

濃紺に反転する手前の空の鱗 ....
傍らに喘いで潰された草の

汁の滲む、つんとした匂い

空気の温度が上がり、西日が目を刺す

額に滲む汗

夏が来る。


何も知らない夏が来る。
風の強い夕方
私が通り過ぎた後ろ
廃棄物置き場で木材の下敷きになった包装紙が

ばたばた と騒ぐ

振り返ってもダンボール色をした紙と木材
それと寂しそうな色をした鉄線があるだけ

 ....
みぎ と ひだり の辻褄を合わせて

果物のかわ を剥くように

波が砂浜を けずって 行くように

一つ息を吸い込んで
そのまま溜める

あす が来るかは知らない
私ときみと ....
自分はもうすぐ死ぬのかもしれない

ふとそんなことを思う

最近無性に思い出を大切に掘り起こして眺めたり
自宅や職場、SNSのタイムライン
みっちりと周りを埋め尽くして存在してくれている
 ....
詩の味
私はまず言葉のリズムと耳触り
次に
一つ一つの単語の味わい

生まれたリズムに
味を乗せれば 
匂いに
温度に
湿度に色

何度も舌で撫で、
歯で噛みしめ、
喉へ受け ....
ひれは重たく
ベタベタと揺れ
きらめく鱗は無数の眠りと
食事の数

水面のそばでぐるりと大きな丸を描き
頭から深く
やがてすべてが暗がりの中

残された波紋が
一、二、三、四、 ....
秒針は
ガチガチ言いながら
私を刻む
午後九時半

やりかけの洗濯物は
どんどん乾く
外は真っ暗

今朝
置いてけぼりにしたのは
夢か?感情か?

あと六時間
私の明日 ....
私の歌は、物語ではない
想像力も、独創力もない

私の歌は、写真だ
今ここにあるものを映しているだけ
今ここにある私という生を切り取っているだけ


私の明日は、物語になるか?
私の ....
ひとりぼっち、くらがりの寝床で
週末の予定だけが
きらきらとひかっている
君の服装
君の表情
君の声
今全てが足りていなくて
考えるだけでどきどきする
まず何て声をかけようか
嬉 ....
右手を伸ばして掴めばぐにゃり
潰れて指の間からぼたぼた落ちていってしまう
くすんだピンク色のそれは疲労

床で潰れたピンクがぶわり広がって
足元からどこかへ引きずりこまれ顔まで埋まる
 ....
その音はカラフルな硝子片
見たことないくらいペラペラで
すぐ壊れる

壊れると目に煩い色たちが全部混じって
それはもう洪水

目を開いていれば映る現実に重なり
一歩下がって頭の中だけに ....
創作の庭でぼくらは
今心を満たしている感情
あるいは何かを表したい という感覚
それとも指先からひとつの世界を作り出すやりがい

何だかわからないがきっと人それぞれの何かを燃料に
毎秒誰か ....
私は機械の音が苦手で
沈黙の底に響き渡るあの僅かな電子音が特にだめだが
今年はエアコンを取り付けられてしまった

不定期に鳴るブーンと言う音、室外機からの続くブルブル音についでに振動
あまり ....
どこからどこまでが世界なのか
どこからどこまでが僕の意識なのか
どこからどこまでが君と僕 お互いが存在する認識なのか

これを奇跡と言うかもしれない
君になにも届かなくとも

君 ....
陽の落ちて まだなお明るい19時
急いで歩を進める横断歩道
すれ違う、ユウレイのような白い服の女
(当然どこの誰だかなど知らない)

風は生暖かい
仕事を終えて息苦しいベルトに締められ ....
動転する時間の中で
呼吸の仕方をふと忘れて
明日はどこで君と会うのだったろうかと
真剣に考える

手足はバラバラ
思い通りには何一つ動かない身体
持て余して雲を数える
一切れ、二切れ、 ....
なだらかな稜線、その向こう夕焼けの空
紺とオレンジの雲があまりにもきれいで
昔のことを三分ほど考えた

帰り道では黒い車、また黒い車、青いトラックに続いて
前倣えのブレーキランプでトンネ ....
きみの心臓
サテンの雫
パールのマチ針で
小刻みにタックを寄せて

ずらさないようミシンで縫えば
ほら丸い

きみの吐息

ぬめりとして手によく馴染む
暗いところで静かに光る ....
床に投げ捨てて
乱雑なまま
続けることを諦めた楽しいこと

何も考えずただ言葉に変える
やりたいことだらけで
何もやりたくない

誰かの言葉
メディアで聞いた話
大好きで繰り返 ....
ヘッドホンで蓋をして

世界の全てにさようなら。

頭の中で騒ぐ感情を
小さな機械から溢れる盛大な音に浸して
終わりのない映像が生まれる

目を閉じるほど音が、風が、匂いが
まず頭を ....
期限付きの
恋?
夢?
人生。

見開いた目
閉じ込めた言葉は、
あなた。

腹の底から息をして

そこに棲む大きなさかなを
二度、三度、
ゆっくりと躍らせる。

待ちぼ ....
例えば僕がこんな夜更けから
突然珈琲を淹れだしている今、
君は同じ国の中で
ところで何をしているんだろう
などと思う

君が誰かを強く想うとき
僕も誰かを強く想っていて
二つの想い ....
深夜に隠れて朝を思う

枯れた木立と敷き詰めた紅い葉
ようやく落ちた夕日を
ひっくり返して真昼を思う

朝目覚めて感じる喉の渇き
差し込む光を布で押し退け瞼を閉じて夜を思う ....
辛い時 振り返る景色がある

それは若き日溢れんばかりだった感情を
形にしていた場所

いつからか辛い時なにかを
残していく場所になった

その景色は曇っただろうか
それとも濃く ....
三月雨(35)
タイトル カテゴリ Point 日付
つま先の先自由詩4*23/1/19 20:34
消える一秒自由詩221/6/13 16:23
時代のゆくえ自由詩121/6/13 16:20
心臓の奥自由詩4*20/12/14 18:03
自由詩3*20/7/19 18:58
電線とゆめ自由詩2*20/6/3 19:13
夏が来る自由詩120/5/28 20:06
風の強い夕方自由詩220/4/28 18:04
あした自由詩220/4/5 12:15
覚書自由詩120/4/1 1:41
食感自由詩120/1/25 21:40
その夜自由詩119/12/30 23:46
忘却と秒針自由詩4*19/9/30 21:40
私の歌は自由詩1*19/9/27 20:59
題なんて無い自由詩1*19/9/27 1:52
終電自由詩1*19/9/26 19:58
ミュージック自由詩0*19/8/7 7:49
創作の庭で自由詩019/7/18 1:38
彼岸より自由詩1*19/7/15 19:50
片側の認識自由詩1*19/7/15 19:34
夕飯は、自由詩1*19/7/9 20:16
人の声自由詩019/6/19 0:13
一秒自由詩2*19/5/30 19:00
きみの心臓自由詩4*19/5/7 22:59
部屋自由詩0*19/4/26 20:08
音に溺れる自由詩3*19/2/18 21:08
テラスにて自由詩2*18/11/15 18:30
道標は光の先自由詩6*18/11/8 0:33
煌光自由詩2*18/11/3 2:29
詩というものは自由詩2*18/10/24 19:59

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