海辺の夜、わたしたちは畳の部屋で本を読んでいた。父と母はど
こかへ出かけていた。わたしは「太閤記」を読んでいた。母の子
供時代の古い本。兄と弟が何を読んでいたかは覚えていない。父
と母が旅館に戻 ....
他人のように眠るとき
仮面のように眠るとき
水の蛇はひたひたと来る
狭い空を翼で覆い
小さな夜を乗せて来る
天使の羽と羽のあいだに
指を一本差し入れたなら
天使もあなたもその刹那
よろこびのなか
気を失うだろう
あなたに捧げよう
僕に出来る全てを
共に生きよう
笑顔を分かち合って
未来を夢見よう
共に手を取り合って
進もう
苦しくても
そうし ....
ようなし
声がしたので
いよいよ来たかと覚悟した
用がないなら帰るよと
帰り支度をしたら
洋梨の皮を剥いている
たくさん貰ったから
お裾分けだといいながら
たくさん剥いてくれる
....
港に来たら、花は散っていた
ノウゼンカズラが
地上に口付けている
おぉんおん、
おぉんおん
遠くではまだ咲いている
向こう岸の工場の灯だ
向こう岸の工場が
....
去年の年賀状の返事も出さないうちに
また来年がやってくるというのか
引っ越してからまだ一度も
開けていない段ボールがひとつある
正直怖い
お引っ越しのお祝い返し?
オノレはキャンディー ....
半分の
半分にした
レポート用紙を
もう一度
半分の
半分にした ような
折鶴が
いろんなところに
隠してあるの
とても とても 足りないので
いつも
....
{ルビ錘=つむ}ではなく{ルビ罪=つみ}刺さりし王女
ツェツェ蠅のベルゼブブの興奮した口吻
忘れて 吸われて
導眠の 粉落とす砂男
ヒュプノスとモルフェウスの拮抗
色の呪い は熱い氷
....
人の仕事までとって
頑張ってみせても
それ
本物じゃないでしょう
アナログでごめんなさい
真似すればいいなら
得意なほう
だけど
私の作ったものを
愛してくれてありがとう
....
上野まで
行けるかしら
イチョウという名の銀杏
黄色がふる
「君と行きたい」と
言ってみてはだめですか
無意味な
意味のあることを
君としたい気がしたのだけれど ....
なぜ 木に豆が生るのですか?
少しだけ大人になって習い事を始めるようになったある日のこと、
黄色い葉っぱの降りしきる中に硬い何かを見つけました。
くるくると指先で遊ぶ葉を見ているのが好きでし ....
単純にいえば
どこまでも言葉なんだ
言葉は嘘で出来ている
嘘でしかいえないほんとうがある
そんで言葉がでなくなるような
舌が癌で侵されている妄想に何年も悩んだ
私も言葉で
いつも ....
ときどき
取られたような気持ちになって
「わたしを返して」
と
思う
または
「わたしを帰して」
かな
今ちょうど音が途切れたので
ここをひらいています
何かが途切れなければ
ここをひらく気にはなれません
流れのなかに異物があります
見えたり見えなかったりします ....
長雨の続く夕刻の水溜まりに影が映ることは
ない。泥水のように濁るわけでもなく、清水
のように色も無くすべてを透過するわけでも
なく、それは雨水と呼ばれるものと酷似して
いる。事実、それ ....
日もルーズになりはじめた晩夏
名もわからぬ鳥が鳴く
湿った畳の目だけを
見つめかぞえ
また眼をつむる
夢見が悪かった
人に会いたくない
話もしたくない
すべてに
誰のために ....
ちくしょー、平太郎のヤツ、ばっくれやがって
俺のことまったく知らないだとー、あいつ
いてーなー、もう勘弁してくれよ
なんだよ来てんの真理だけかよ、ふざけんなよ
ああー、絵里、絵里、なんで見捨て ....
漁船員の話によりますと、近海操業中に何かの葉をくわえた鳩が甲板に舞い降り、
なぜこんなところにと不思議に思って見渡したところ、難破した船の残骸を発見したということです。
今までの捜索の結果、船は糸 ....
線引きされた空からあふれ出て
黒雲は地へ
黒雲は地へ
つながるものがなにも無いところへ
おまえには何でも話せそうだ
....
わたし
(現象する
音声に燃えていく
{ルビ紅=くれない}する
空ろな現存の呻き
青ざめる{ルビ夜=よ}
鋭くかげる新月に
引かれる心音のにじみは
血管を震わせて
蒸発してゆ ....
すいません、煩ってました。
最近風邪に罹ったんです。だから仕事も先送りで・・。
上手く言えないんですが、書痙のようで。
書いても書いても、神経が空を舞うんです。
腕には腫 ....
手に入れる。などという言葉を使うの?
手に入れた。という確証は何?
手の内のものはそれでぬくぬくしているの?
手に入れる。を始点にして
君が望む永遠は
得られるものなの?
永遠 ....
混むから夏コミ
違うよ
頭をぽかり
兄貴はタバコを吹かしている
そんなことも分からない中学生の弟が歯がゆくて
ため息混じりに煙を吐いて
二階の部屋に閉じこもる
計算機
機関車
....
牙の鳥 牙の鳥
雨が近い
雲がシャラシャラ鳴っている
朝の名残りを踏むのをやめ
午後の艶を吸う準備をしろ
....
あの頃、君に告げられなかったことを今
***
ねぇ、君
冷やし中華を誰よりも早く始めたいの、とはりきる君の姿が僕は好きだったんだ
ねぇ、君
扇風機の首フリに合わ ....
廃墟の街にも雨が降る
さささと落ちる雨音に
残暑見舞いが湿ってる
ポストの中にも雨が降る
ふふふふふと笑う地蔵尊
雨のない日は舞踏会
風のない日はドライブと
天気予報に縋って暮らす
....
死んでる玉の輿
混んでる下の島
タコの死んでる島
貯まる電子残し
楽しんで締まる子
(削除)の汁出たし
独楽の四肢弛んで
汁粉飲んでました
また出るこの紳士
頼んで困る獅子
この丸 ....
「実験を始めます」
「単一粒子シュレーディンガーの猫を用いた非仮想実験によるひとつの現実的解決」
「長いですね」
「さっさとふたを開けろ」
「おっ、死んでます」
「死んでニャイ!」
「えっ ....
夜明けの鳥たちが、狂ったように群れて鳴いている。
悲しいとき、どうすればいいのですか。と訊いたら
それは致し方がないことなのだよ、と
優しい声で
言われた。
あぁ。私も鳴きたい。
灰色の群 ....
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【未詩・独白】いまだ詩ならざるもの あるいは独白
作者みずからが未完成であることを認めた詩作品たち
このカテゴリの作品には以前は批評を禁止していました。今後もなるべく批評は遠慮くださいますようお願いいたします。
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