掌の草原はしる僕がいる
生命線地平線のむこう側
夕暮れを切った爪が伸びている
風が吹く隙間を通る指と指
ないものを掌あわせたしかめる
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夏の空ビードロの音鳴り響き
口の端に付く黒い点取り除き
紺空にパッと花輪が乱れ咲き
夏の夜の風物詩かな生ビール
祭明けまた燃え盛り乱れ咲く
.
月 ....
黒い石ではなく死んだ蝉でした
汗まみれ紙がふやけて来る所
(紙が)変色を蒙るほどの汗まみれ
似た人と視線の合いし祭かな
口の中イカいっぱいの祭かな
腰掛ける石垣の熱祭かな
噂では今年で終わる祭かな
似た人と二度すれ違う祭かな
襟元にフリルの浴衣祭かな
似た人の茶髪せつなき祭かな
....
目の前の老人霞む夕立かな
煮穴子や舌へ融けゆく江戸の海
初出「LBS」二〇〇八年六月
炎天にライカは俳句裁判所
ヒナゲシの 輪郭描く 白昼夢
蒼ざめて 空に映るは 日輪草
木々の葉が 静まり汗が 流れ落ちる
鏡中に 呼吸を失くし 汗ひとつ
翅ゆらり 沈み難くは 池の蝉
紫陽花の 褪せて破れる 唇の
大西日山の蕎麦屋をつき抜けて
かなしみもここに終わるなり七月の朝
生ビール 泡もどかしく ひとくちめ
月隠れからかう如く蛙鳴く
遠く鳴く蛙の声と麦酒の夜
妻の手が肩を叩きて夏の夜
終日を妻と働きあせを拭く
いとしくて
あいたくなるのは
がまんして
いとしくて
会えてた日々を
忘れそう
雪の日見るのは夏のこと
陽射しに透けたあなたの顔だけ
愛しちゃったのよん ....
暑さにも耐えて文月のペン習字
水撒きて二人腰掛け書を読めり
緑葉の風に揺れいてつよき陽よ
風鈴のカタカタ鳴りて見回せり
汗ばみて紅葉のもとに坐り居り
真昼なり俳句を六っ ....
静かにも笑い声散る花火かな
妻目覚め今朝は咲かずと朝顔が
ゆう暮れのふたりで麦酒の快楽
夜は更けて蟠りなきすずしき日
ビアガーデン
行けば必ず
雨が降る
赤銅の
肌物語る
紫外線
神は在すと知りし日に朝顔が
白い朝顔咲き出でて妻うれし
妻ととも神のみちにと7月の
四季あふれ
日本の里は
輝いて
梅雨入りや紅葉の木陰秋海堂
二人してボランテァーや沙羅双樹
庭べにはさまざまな六月の花
舌先の恋の匂ひや夏の夢
病み猫の腫れたる乳の暑さかな
天翔ける十九の夢やみなみかぜ
紅薔薇は何億年の恨みかな
なつの恋はかなしき純白
夕立や街は恋なき人ばかり
....
水面球転糸髪竿しなり
花売り場蝶々が来て妻笑う
夕暮れて初夏の花揺れ連れ立ちて
雨の日の初夏の坂本うすらさむ
満月や空咳しつつ過ぎにけり
像なれば臓まで射さぬつきのかげ
「叫び」よりなにも聴こえず冬日向
卯の花の咲く花折れの峠道
皐月末心の中の昔かな
静かなりカラコロと妻の風鈴
妻昼寝毛布かけてやりけり
妻のショール予約皐月の金
スーパー歩く春日金はなし
子の心親知らずして竹の秋
オレンジの腹を見せ飛ぶつばくらめ
どこの子のために舞うやらこいのぼり
木漏れ日の零るる如く竹の秋
しめやかに夏に入るなり大往生
涼しさやまぶたを閉ぢる指の先
通夜に
棺の前のビール二本の宴かな
母の日や悲しき花にうづもれて
なき人をひき立てて咲け初夏の花
....
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【俳句】季語を含む17音律「5.7.5」の俳句と、その形式を崩した自由律俳句、無季俳句などの俳句作品のみ受け付けます。俳句批評は散文のカテゴリへ。
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