年下のきみと手つなぎ抱いたクスの木はまぼろしか 分校の夏
おとこ先生、おんな先生、と生徒は呼びけりわが{ルビ父母=ちちはは}を
寂しさを語るすべさえ知らぬまま宿直室で聴くヴィヴァル ....
取り込まれなかった洗濯物 母はどこかへ去りぬあのサンダルで
訪ねるは別れし母の助手席で行方知れずのしりとりの先
残された下着の匂い もう母は赤子抱えぬ立派な女
がらくた館で働くメイドの手帳には「明日はジャックの頭をいれる」
「人間の飼い方」というテキストをじっくりと読む講義内容
先生をやってる貴方の永遠の夏休みにピリオドを打つ ....
「いつか見た 景色のよう」と うそをつく
桜の前には 恋の墓標を
願わくば 桜の下にて 恋、捨てる
カケラも残すな 春の嵐に
祖母の眼に 桜 ....
美しき朝は私を切り取って 人影落とす一人のベッド
殺人をできるくらいに好きな人がいてすべての人が愛しい
雨は止み立ち直れよといわれても 涙ただれてまだ恋焦がる
朝の頭痛知っていながら ....
毒林檎 食んで死にたい 口付けで君が生かしてくれるというなら
十六を告げる鐘の音 くれるなら糸紡ぎ針と深い眠りを
美しい声もたゆたう髪も捨て 死ぬまで叫ぶ王子への恋
薄き壁声ひそめるや我が城に珍客はきみ共同生活
壁隔て他人の君と同棲中 されど“汝の隣人愛せよ”
徒雲の凍てつく我が身憂ふのみ駅のホームに音もなし
ワンルーム ....
たくさんの資料に埋もれて君に愛を告げた分室という部屋
僕の住む街を指でなぞれば指紋が乾く空のない地図帳
こけしを削って食事に入れ続けた、母は父に何の復讐
ひとことで言 ....
肩ひもがナイロンなんだとなぞられて まとわりついた背中の汗に
抱き合えばあなたのかたち胸が押され どちらの鼓動かわからなくなる
かぶさって唇奪う君を真似て 私も肉食動物となる
....
「寂しさ」の四文字に住む気まぐれな魔物に理性食われぬように
青色の電車に乗るか乗るまいか 別れをかけるブービートラップ
じんわりとしめる手のひら握るのは君じゃなくって自分の指先
ピアノのピノキの傍でいて
ゆるい手足を縛ってみて
つまらないことで泣くと
水のように冷たい水が地面を這う
暖かくはない
生ぬるいそれと
時を共に
彼と椅子を取り合う
しあわせは得体の知れない不純物
混ぜて飲み干すベトナムコーヒー
弱いから強いふりして前を行く振り返ったら戻れないから
堰き止めた涙のダムは優しさで壊れてしまうだから離れる
見えないと未来に怯え悩むのは明日が必ず来るという前提
....
まだ見えない見えてしまえば終わり
見えなければ終わり
どっちもたいして違いがなく
どっちをとっても終わりは終わり
カテドラル 傍で祈れる 横顔に みとれたる我 聖句を忘る
夕暮れて 耳に届くは {ルビ夕の鐘=アンジェラス} サンタマリアと 汝は唱えん
微笑みの下に澱める 汝の罪 分かちて負わん 我にも ....
君は君 僕は僕だと始めから 分かっていたさ だから求めた
邪魔なのは 二人を分かつ この肌と 抱き合う度に 溶ける夢みる
寄り添えば 分かち合えると思ってた 足されるだけの 僕らの孤独
高らかに目押しのできないふりをした私に和尚が近づいてくる
頭蓋骨からして大きめだって言うなら猫の腹をあてがってやる
涙目で「バスタブの縁に上ってたかどうか教えて」なんて無意味だ
そこ ....
さようなら
君から先に
云い出さぬよう
僕から先に
{ルビ沈黙=しじま}を破る
夕暮れに
繋ぎし指は頼りなく
僕らこれから
何処へ行かうか
甘い亜麻色とりどりにゆららゆら麦の穂たれて紅く波打つ
紅い実をあげましょ君たわわたわつぶしてくださいたわわたわ わに
紅と蒼交互に咲く混ざらない不思議雨上がり 君
傘立てて紅ひらいて ....
清さこそ、いやらしいとは思わない?若い和尚の鼻梁にみとれて
アルコール分量わざと間違えて きょう 今 あなたに{ルビ手=た}折られたくて
ガールという字面で服を ....
このコインの桜をじっと見てください あなたはだんだん春になります
失踪は春の間に すれ違う人がよそ見をしているうちに
肩と肩近づいていくまだ雨はそうだね雪のにおいがするね
....
突入5秒前の教室 揺れる声はぼくら4月の合図
教室の窓から見える青空が欲しくて飛び降りたかった5月
君の声響く放課後見上げた空と6月の音楽教室
教室はサバンナだったねカラカラに乾いて ....
春なんて要らぬと言われ白梅は ごめんごめんと俯いている
抱き合った十分に降る春雨は思い出に似てぬるくやさしい
言葉などなくて伝わる僕たちはいつものように別れる別れ
軋むほど力をこ ....
油染みだらけの記憶のわら半紙提出期限をとうに過ぎ去り
透明なグラスの底を目にあててきみの星座を見る白昼夢
あの夏にきみが投じた問いかけのこたえをさがす 波のまにまに ....
黒蜜の氷菓和尚が食べるとき観音扉の奥のまばたき
猫みたいな声を出すから燃え上がる火事にみとれるひとみをなめる
無意味だと思うぼくらのやることは星と星とが抱き合う夜に
尾& ....
鞘がなき
ただそこに在り
五月雨に
白水仙は
凛とぞさやぐ
懐かしい
匂いに誘われ 絵本の中
誰もが出会った おとぎの話
枕もと
遠くで眠りへ 誘うのは
魔法使いの ひとりごと
眠り姫
愛し ....
とんがったボトルに小さな君ねむる ベビードールに打ちあけた、なにを?
約束をしたのよ彼と桃の花咲いたらたがいに傷見せましょうと
スギ花粉とんでるよほらマスクして、子猫うなじにく ....
ねぇ和尚 あなたホントに聖職者? ベッドの上では 独裁者だわ
続きして? そんな気まぐれ 猫みたい
アタシを裸に したのはアンタ
足ひらく ....
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