偏見を
もって見られる
この至福
自分の基準は
思わぬ個性
(足のとれたピーターパンの人形が積もった埃の下で見る夢)
途切れがちな点字ブロック跨ぐ夏 雲の向こうに打ち寄せる青
内側にはびこる針の芽を撫ぜて微かな痛みが ....
今日は日曜
風は吹き晴れわたりたる夏の朝二人で来てみた熊野川べに
夏はきぬさわやかな路伝道の家々を二人してゆけば
疲れては葉桜の木陰に休み友も来りて語りあいたり
昼食のビー ....
書いてある内容よりも君の手がやさしく見えて繰り返し読む
今日もまたいつものようないちにちが暮れ 書く程の知らせはないよ
「大丈夫。相変わらずで、元気だよ。」きれいな嘘が並ぶ返信
....
遠回りしているだけの放課後は
ただぼんやりとただぼんやりと
キミノコトこっそり見ているようなこの目が恥ずかしくはずしたメガネ
横断歩道の渡り方などしりません
陸橋の上に ....
捨てられたテレビの前に数羽いるカラスも観たい恋愛ドラマ
遠足で弾む心を感じつつ雨の予報と裏腹な空
カラカラの砂漠に一筋ウーロン茶
わざと音出し飲む心地よさ
我が肉の南方回帰さめやらず
高天原もリーフの先に
創世の靄る熱の中浮遊する
人間の種五体固まりつつ
昏い寝間朝日射す夢まどろんで
....
今朝もまた
三十年妻と起き伏し今朝もまた出かける妻に礼をのぶ
雪の朝子を連れ妻は自転車で駅に向かいて出でゆけり
深夜勤残されし子と吾と物語読み聞かせやる夜幾夜重ねし
今日も日暮れて
六月の風が涼しく吹く窓にチリリリリンと風鈴が鳴る
夕暮の庭のテーブル二人して食事する焼うどんビール
日曜の就寝前の一時を聖書朗読心にしみる
世に在りて妻のふとしたしぐさ見て慰めているわたしの心
人として妻を恋うよりほかになし声をかけたし勤めゆく妻
早く起き今朝のいつもの食卓を妻とかこみて庭のアジサイ
梅雨のあめしとしとと降る涼しき日妻の車はいつものように
森色の匂いがついてる木漏れ日に「ぐっぴい」と娘名前をつける
由々しきは森を這い出て森に似た住居をあがなう罪の深奥
常しえに遊ぶ子らの基地宿す森あざやかに日々よ集え息して ....
うつうつと気分すぐれぬ真昼なり比叡に白き水蒸気たつ
まばらにも家建つ土地に梅雨の雨青田潤し緑濃き稲
中元に妻と二人ほうじ茶玄米茶煎茶求めけり
白雲をシーツに寝付かせカルテには「ただただ青い」と記す看護婦
「お水まだ、青くないね」とはしゃぐ子の満ちてくプールに濡れるくるぶし
ルウプするデイジェイのかける ....
十字架の倒れる音して霧深く宛てなく彷徨いきみをさがしつ
ただそれは悲しみのうたでも何でもなく空からこぼれし遠い蛍火
すこしでもさかむけがあればきみがきてこころをたしかめられるんだ
ちょっとしたかわいさがぼくのたねをまくはながさくまでわらってられる
ぬりつぶすてがみのなかのあてなにはぶらっくほーるよりふか ....
深海に潜るようにと梅雨が来る、それはさておき君は元気か
傘さえも寂しいですよ、と群れる夕、東京タワーがひとり濡れてる
遠くとも月のかたちがつなぐのに、その暗号を雨が閉ざすよ
不意打ち ....
燃えながら灰のなかから生まれる鳥
その目にうつる火祭りの夜
名前なき舟ならばただ漂うか
海に溺れて星があかるい
不確かさそれのみ満ちる雨のごと
うすい ....
希望の朝
水無月の朝の寝床に目覚めては起きるしばしを君のことども
末までも君と生き行く幸を胸に刻んで歌を書く朝
子があらば永久の未来に希望して明るく生きてあらゆかむかな
幸福になった前夜を思い出す その日はきっと不幸じゃなかった
柔らかな夜の狭間が示すのはひと時だけの幸せな夢
夏の夜の触れた身体の{ルビ一片=ひとひら}に震えた心はあの日のまま
従順なところはきっと本心で残りのウソは愛で出来てる
{引用=ハワイ、カウアイ島のハナレイ。
人里離れて暮らす、
アーティフィカルヒッピーら居るという。}
行ずるもアート活動も同じ事
山水画のにじみハナレイ日没す
....
今日の苦労
夕闇に光る蛍や二人して川のほとりに憩うや楽し
曇り空蒸し暑き日は過ぎゆきて今夜のドラマ勧善懲悪
明日の日は何があるやも知らずして主ののたまいし今日の労苦よ
一本の簪だけで留めていた貴方も髪も今切りました
夜が明けて腫らした目と飾り無い両手を見つめ生まれ変わる朝
やさしくてみんなあんまり買わんからラッキーストライクが好きという
口の中隅から隅まで知ってるよ だけどよく読む作家は知らない
情けない姿どれだけ見せたってすましていてよ僕の前では
....
ひらひらと光の粉と誘惑の扉が開く午後三時半
曇り空午後よりは雨しとと降る梅雨に入りアジサイを買いにけり
休日のしばしを妻とやすらいて図書館により朔太郎借りき
二人して求めきし雌雄なる青き熱帯魚の命憐れむ
世の中の涙が空に溜まったからそろそろ梅雨入りしていいかな
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