歩いて通勤していると、
毎朝すれ違う女の人がいた。
今の嫁。
そして今日もまた、
歩いて通勤していると、
毎朝すれ違う女の人がいる。
この人は、
誰の嫁になるのだろう ....
高層ビルから見る富士山。
富士山から見る高層ビル。
同じようで同じじゃない。
似て非なる感覚。
あなたから見た景色と
わたしから見た景色。
きっと同じようで同じじゃ ....
きさらぎは昼さがり
北風の挑発もなく
ふゆびのさざなみは
ベランダのひさしをすどおり
やわらかなひかりとなって
おだやかに三和土のうえで
尾っぽを引きずっ ....
鋭くとがった満月がふわり
さみしそうに浮いてた夜
かわいそうだから食べてあげたら
途中で胃がもたれてしまった
静かな夜
見て見ぬ振りをする夜空
食いかけの満月が恨めしそうに
僕を睨ん ....
私はかつて
LP学園の野球部にいた
当時LPガス爆発打線と恐れられた
チームの4番打者で
プロ野球のスカウトからも
注目されていた
特にキヨ人からの誘いは激しかった
「キンタマ王 ....
あたまを下げる
手始めに軽く微笑んでみよう
悟られたら諦めるしかない
少しあたまを持ち上げて生真面目な素振りをする
できるだけタイミングよく
、そう、頷いてみせるのだ
それでも ....
土を盛る山がある
堪えきれないのは地表
雨水は迷に沿い斜面を削る
それでも汚濁を飲んできた
流れのない水は澱んでしまう
掻き混ぜれば底に溜まるだけで
腐蝕するのを待っていた
ここに湧 ....
きょうも西の空が豪勢だ
あしたは白髪のたぶん雨
長澤まさみが歌っている
弱気な悩ましが冴えない
廃工場で殺しあうぐらい
存在証明は誰かからの愛
見失うぐらい叫ん ....
愛しているという言葉
好きだと話している視線
気になるという仕草
全ては行方知れず
誰にも見えない皮膚に、
がりり、刻印を刻む。
刻む音すらも、
拙いが深いカーブを描いて、
誰にも見えない私の皮膚を
構築していく。
まるで彫刻のように、
私の胸に、
痛々しくも艶やかな ....
できる
でココアを溶かす
できないをハチミツ漬けにする
何も言わない
しーと指を立てるともういちどになる
わが子に伝えられることを
がさごそと探すよりも
整頓された背中から伝 ....
ある街に
一人の椅子職人がいた
注文を受ければ
どんな椅子でも作ってみせた
子どもの椅子
大人の椅子
老人の椅子
病人の椅子
政治家の椅子
王様の椅子
芸術家の椅子
神様の椅子
....
ミサイルは
花のうえをとんで
どっかいった
あぶないから
線の内がわをあるこう
くるまが、ほらこわいよ
というと
花がはじめて
こわい
といった
ミサイルも
....
わたしは三角の底辺へ横たわって
(つまりそれはわたしに嘘をつくということですが)
遅くなってしまった理由について
(あるいはその意味について)
考えようとしている
(なぜなら)
扉 ....
あたしのお豆さんは3つ
彼処でしょ
彼処でしょ
そして、ア、ソ、コ(エヘッ)❤
おにいさん、こちら
手の鳴る方へ
あらっ、逞しいおにいさんが来たわあ
まるで鬼さんみた~い!
....
格安ひとり旅ツアー社の好評企画「ことばのふるさと巡り(温泉郷/続編)」に参加した、ことばたちは銘々に温泉に浸かり、美食を囲み、人間どもに酷使される謂れなき辛さに酒を酌み交わし夜ごとに語り合っては親交を ....
色々欲しかったものが全てデリートされた
僕の心から欲しかった全てのモノがデリートされた
跡形だけ遺して
その跡形が今虚空からなで下ろす風にカタカタ音をたてる
そのカタカタという音だけがいつ ....
寒い まだ
電車に乗り 今日も
私は仕事に向かういつもの電車の中だった
私は金をもらいに外に出た
そして埼京線の中で今月の収入を思う
ドア付近の男と女が 無言で 体を寄せ合っている
止 ....
知ってた?
君が僕の名前を呼ぶから
僕は動けるんだ
君がくれたんだ
何もかも
キラキラしたんだ
この世界が
ありがとう
百数十年ぶりに里に下りてきた私は
あろうことか人間に狩られてしまったのだ
この老体を食べても美味しくなかろうに
あろうことか吊るされてさばかれてしまったのだ
私の臓腑の中で可愛がってい ....
美術館の展示物は
来館者のまなざしを食べる
じっくり詳細に見る来館者のまなざしを
ふんだんに咀嚼し飲み込んで
まなざしの味を吟味する
一般者の軽いまなざしは
スナック菓子のよう
....
陽を殺し
西の夜空を見上げれば
笑う月
たちまち臭気に囲まれ
三度深呼吸をする
頷けば、嗚呼、
、馬鹿野郎と一緒に眠る
掛け布団に遊ばれ
いま、それとなく終わる 。
....
思い出になったあなた
お願いだから あたいをよばないで
この一本道、途切れるまで
宙に浮かんだ多面体の器を
銀河の零した蒸留水が満たしている
捧げる願いは光線となり壁面を通過する
その中で胎児のようにうずくまり
あらゆる業と宿命を反芻したかった
見上げる夜空に散らばる ....
誰もいない中庭で
ときどき降り積もった雪が舞い
上がっていた
隅の方に穿たれた 小さな
穴の中では
随分前に置き忘れられた憎悪が腐りかけて
いる
行く宛を見つけるのは
そう難しくないの ....
ある時
私は気がついた
私は
鳥ではなかったと
羽ばたき方も
囀りかたも
思い出せない
確かに
飛んでいたはずなのに
しなやかな翼に風をはらんで
束の間の夕焼けに
淡く染 ....
空は四角くあり、そしてその街もである
と、嘆いたのはひとりではない
アスファルトはかたく、そして見上げるものの全ては幾何学でできている
星空を見たいね、
といってそのようにするけれども、
美 ....
あなたは、
私を時に追いかけながら、
しなやかに逃げていく。
あなたを追いながら、
私の目にうつりこむ景色は、
万華鏡のように美しく、
手ぶれた写真のように、
水面の揺れのように艶めいて ....
黄色のサクランボが落ちている
以前 あなたが 言っていた場所に
行ってみた
わざとじゃないの
記憶の糸を まさぐるような
低俗な真似は したくなかったんだし
これが 下品かどう ....
今日の社会の授業は
体育館でドッジボールだ!
ヤッター!
さぁ、始めるぞ
ボールは二個使うぞ
えー、そんなぁ!
ワー、これ怖い
いいか、これが、世の中だ!
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