二月のかげで
数が つめたい息を吐いている
冷凍されたトラックに
デコレーションケーキが詰められる
生きていなくてはいけないとぼんやり思う
その反対がわで
死んでいるべきだ が
....
頭の病人も
身体の病人も
自由に運転出来るのは
何故だろう
これが飛行機だったら
「機長、何をするんですか!」
ってことになるのにな
何とかに刃物
病人にクルマ
・・・・ ....
またくよくよと絵の具を捏ねては黒くしているあなた
飛べないばかりか落ちていくこともできなくなったあなた
海だとか空だとか持ちだして悲しんでいる
いいよ いくらでも
このあいだふたりで行った ....
まだすこし早いが会社に出掛けることにした。
ほんとうは繁治も裕子ちゃんを追いかけたのかも知れない。しかし道中にふたりの姿はなかった。
ひと駅まえで降りて会社まで歩くことにした。
あした姉 ....
指で感じて
頭で捏ねくり回して
指で嘘をつく
唇で感じて
頭で探し切れず
唇で誤魔化す
背中で感じても
頭は留守で
背中は語れない
爪先で感じても ....
花弁 さるすべりの
あおい昏さにあかるみ、
わたしたちは愛した 確かに
弱さのかげにしおれた また一つの
どうしようもない弱さ・ひとらしさを
愛した 確かに ....
方形のネイビー {ルビ夕布=ゆうぬの}に包み
ガソリン 尽きそうな軽自動車に
挟まり 岩屑 染みた海岸 転がり
闇の 端を すこし 三角に 切り取り
{ルビ憂=う} ....
戯れに
たまを投げ
くれないの崖
に、蜥蜴たちが{ルビ円=まる}
い、女らから、嵩張る
ち、をさそわれ、しらないまちの
下水管にしたたっている師走の月の ....
パハップス、
多分、
多分、多分、
嫌な気持ちを、投げ出して、
宙に浮いて、スローカーヴを描いて、
足でなぞっていく
どんな気持ちになる?
多分、本当のことは ....
息を止めるのも
生き方のひとつと気づいて
息を止めたまま
水に飛び込んだ
晴れていても
目に見えない透明な雨が降っている
名前も知らない人とのあいだにも
透明な出会いと透明な別れが
....
枕元に外した
メガネの瞼を
そっと下ろしてやり
眠るときも
髪を七三に分けておく
深夜
明かりが消せない部屋の
無影灯に浮かび上がる
手術台のような
蒼白のベッドの上で
....
昨夜後楽園ホールで
東洋太平洋タイトルマッチをやった
挑戦者はマレーの山奥から出てきよった
野蛮人で
俺が滅多打ちにすると
肩に噛みつくわ
足で蹴飛ばすわで
メッチャ大変やったけれど
....
ここ意外に場所は無いように思えてくる
私はどこに向かうのか
打っては返す波のように毎日を過ごす
ただ ゆっくりと一生をかけて死んでいく
言葉はその場に留まらない
留まるのは重く無 ....
大根一本 一〇〇円
ステーキ肉一パック 二、〇〇〇円
畑から引っこ抜いたばかりだという
昨日まで大地に守られていた命
まだ十分に死んだとはいえない一つの命 一〇〇円
高いのか 安いの ....
こんなことになってしまったけど
もう誰のことも恨んでない
恨んでないよ
雲の上には
また青空が広がる
それだけで充分じゃないか
首筋を通り過ぎる冷たい思い
あなたの眼差しを受ける
マフラー 首に巻くだけで
温まる心
こんなに簡単に 暖かな気持ちになれるのに
冷たい眼差しは通り過ぎる ....
宝石というものは
その名のとおり鉱石で
そのご自慢の色を主張する術もなく
硬く冷たい闇の中
ずっとずっと眠ってた
どれだけ良い血統に生まれようとも
どれだけ ....
望むことを
できないジキがあり
望むことを
できるジキがある
ジィ~キル歯貸せと
ハイドゥ死のように
ぱっぱか、ぱっぱか、
お産まサンが進む
産婦人科のお前は
富士山になる前のフ ....
虹色のセキレイが飛ぶのは
深夜だけと決まっている
この街は朝が早過ぎて
人々は象形文字を象るように雑踏を行き交い
必要があれば空を見上げる
雨垂れが首筋を打ったとか
紫外線予防にぬかりはな ....
笑う 踊る 泣き叫ぶ
その どれもが
空の上にて 形成される
見上げれば 首が 痛むのに
見上げずには いられない
今しがた
羽根の こすれる 音がした
くねくね と しならせる ....
ひかりがすこしこだましている。どこかとおくへいきたいとおもう。気ままでぜんぜんいいんだけど、おいしいおもいもしてみたい。ひとりでしおひがりとかしたい。ただとおくへといきたかった。いっそねてしまえばいい ....
ポストから落ちる紙
君からの手紙もあった気がする
お構いなしに紙を踏み付け
ベッドで思いを走らせる
君と過ごした時間は最高だった
嘘じゃない 本当に思う
今となっては手紙も読めない
....
知的だね、と呼ばれてみたい宇宙人明日来るかもBOSS買いに
母ひとり、具だくさん
猫の手の嘘つき
周りますとも公転周期二万年意固地すぎますプラネットナイン
破瓜を超えても月ひと ....
生きていることに
意味はない
命になんか
価値はない
地球より重い訳はない
むしろボウフラよりも
軽いぐらいだ
いや、ボウフラに失礼だ
女を孕ませ
生まれた子供に
障害があったとい ....
不幸をしょってる
顔していても
不条理的な
幸福感の密かな湧出
この世この時
為されるがまま
波長にまかせて
浮くこころ
硬いよろいを
身にしていても
内は軟弱な
....
そよぐ風
なびく風
そむく風
うめく風
それは空気の流れではなく
何かつかみどころのないものの正体
感情的で感傷的な世情のように
風もまたいつも気分屋で気紛れだ
また風向きが変 ....
わたしがまだ
あなたの子孫の
最初の日にはもちろん
衣服を身に着けると知らず
もちろん衣服を選ぶことも知らず
もちろん日本語は持っているわけもなく
いつかのご先祖様のあなたは
愛を語 ....
始まってすらいない
まだ 始まってすらいない終わり
つづいていく
ここから つづいていく
終わってすらいない
まだ 終わってすらいない始まり
思い出 ....
ホッキョクグマの巣穴
数多のクマが使ってきた巣穴
彼女たちはこんな穴ぼこの中
助産師無しで出産するなんて。
数えきれない母熊が
この巣穴で子どもを産んだ
元気な子、病弱な子 ....
なんだ かんだと
老体が
泡をふくなか
朝のひかりを
瞬時 みつめて
まぶたをとじるとき
卒寿となったいのちに謝し ....
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