隣の塀とうちの家のスキマに
新緑を伸ばしてくる
まだ若い紅葉
窓から枝の先が見えるようになった
そこ、狭いだろう?
って聞いたら
あなたを見ていたいのです
と、軽やかに揺れた
....
工場の機械音が
漏れ出す倉庫裏で
地面を見ながらタバコを吸った
同じように目を伏せた人は
フランチェスコに似ていた
休憩が終わる前に鳴った電話は母からだった
「アンタ毎日何 ....
好きなタイプは貝類
閉じた貝を
そっと見てるのが好き
何を抱いているのか
時々油断して見せてくれるような
葉桜の並木道を一台の霊柩車が行進していくのは
28℃
「にじゅうはちどしー」
と、略さずに呼びたい一日
の真白い光
噛み砕くと
腐った果実のにおいが広がる
※
額から垂 ....
ゆびきりげんまん
嘘ついたら
花千本贈る
ゆび切った
バラ千本よ
謝っても元に戻らない
嘘をついたから
バラ千本を贈らずに
飲むことにした
針千本より痛くて
たぶん死ぬと
....
占いを占う占い
予感が予感で終わる予感
現実を現実と思えない現実
過去を過去のものにする過去
私を私と思わない私
病気のじじい
働かないじじい
そのミックスじじいが
世の中には大勢いる
家族にとっては
一応家族の一員だし
昔ながらの親子の情とか
夫婦の情もあるので
ギリギリ受け入れているが
一歩 ....
鏡を覗くと、
影の目がこちらを見ていた。
私も影に視線を返した。
すると鏡から影の手が伸びてきて、
私の輪郭を包み込む。
*
黒い塀がどこまでも続いていた。
私はび塀の向こうの世 ....
灰色の吐息がテーブルに満ちて
苦い珈琲が過去の想い出をたちのぼらせる
壊れた砂時計は絶えることなく
細かな砂を落とし
窓辺に佇んでいた
なかなか来ないオムライスを待ちながら
煙草を吸い ....
自転車で新緑の道を走り抜ける
今 私は
思い出のようなものを 確かに
感じている かつての私に
この街を通り過ぎる時
働いていた時に通った あの店も
この店も 今では
まるで ....
見慣れない鳥を見た
あとからそれがカササギだと知った
あたまの良い鳥だという
どうりであたまが大きかった
白と黒 翼の青
尾羽はすーっと長い
見栄えのする鳥だ
カササギは落ち着いていて
....
冷笑しないでください
卒寿(おいぼれ)ともなると
ゆめとのぞみは萌えにくいのです
青い年
とちがって・・・・
謳歌はうまく唄えないのです
赤い「根明」(ねあか)の齢(よわい)
と ....
穏やかな気持が欲しいと
思うこともあるけれど
大抵いつもはそんなことを忘れていて
焦燥し、憔悴し、
喜怒哀楽を誇示して疲れ
沈んでみたりする
ターコイズブルーの湖、三つ
ねっとりと動かず
こんもり黒々とした山々の頂きに
ぽっかり ひっそり
横たわり広がり在る
(空は妙に白く透き通り
皮膜の裏光り)
湖は波 ....
庭木がかもしだす
日陰と日向が
その鮮明度を増し
遥かに漂っている
卯月の雲も
田の草月に移行するとき
いままで眠っていた
老残の ....
私が愉快に過ごすため
お前は常に微笑んでいよ
しあわせだけ感じるよう努めよ
不安や悩みがあったとしても
口に出してはならぬ
私が退屈せぬように
お前は笑われよ
そのために
貧 ....
昨日 私たちは
ぶ厚い夏の憂いの底で
椅子に座り 黙って紅茶をのんだ
西友で買ってきた安い{ルビ氷菓子=アイスクリーム}を
紙スプーンで交互に食べて
....
破れて捨てた
いとあはれ
おまたスースー
いとをかし。
朝、鏡の前で溜め息を吐く
ぼさぼさの寝癖
昨夜の風呂上がり
ちゃんと髪を乾かさなかったから
毎朝後悔する
今日こそはドライヤーかけよう
でも忘れてしまうんだ
所詮そんなもんなんだ
....
じじいがすべきことは
自らの魂を葬りさること
残飯のような人生に
終止符を打つこと
それが出来ない者は
静かに息を潜めて
自然が解決してくれるのを
じっと待つこと
肩に力の入った割 ....
*
ファイブ・ペニーズ
ベンチ
耳を澄ましていた ただ耳を そっと
じっと 動かずに
夜更けの三時に誰かが夕食をたべるときも
そっと ただ
噴水の音だけを聴いていた。 ....
真夜中の吉野家で交わされる言葉は
注文の確認と意味の無い独りごと
あんちゃんの特盛に積み上げられた
紅生姜が紅く眩しく
豚汁に漬物を飲み込む
どこまでも
どこまでも
食べられる腹 ....
天国と地獄の門にぼくはノックした
迎えた顔はどちらも不可解な顔で
ぼくを眺め
ようこそと迎える
恐ろしさはどちらも等分で
いらっしゃいませとは言われたものの
ぼくは戸惑いながら
取り ....
僕は生まれ変わりました、
生まれ変わりは一つ一つが音符のようで、
人生は生まれ変わりのメロディーが錯綜している大音響です、
僕は何か遠くの方に不穏なものが墜落する影を目撃しました、
社会が墜落 ....
東京は
東京という街は
眩しい
脆い
化ける
見渡す限り
灰色とかの無機質で囲まれた城塞
少しの期待と大きな感傷を内包した
この国で1番力のある街
足が少し浮いた ....
スシローに行って
寿司を食べるけれど
ひたすらウニだけを頼む
自然に流れて来るものはもちろん
誰かがオーダーしたものだって
私の目の前に流れて来ればいただきだ
いつまで経っても流れて来ない ....
この夜に
明日が訪れることを疑わず
眠りにつけるということは
幸福であることに
間違いはなさそうだ
私は人の顔が覚えられないんだ
そう君が言った
昨日もずっと一緒にいて
仕事でも部署は違うけど
3年間顔を合わせていたよね
だけど、あなたを思い出す時
最初に出てくるのは ....
渋滞続く白い車ばかり
いつも正しいことについて考えている
正しくありたいから
せめて明日に
まっすぐ歩きたいと考えている
時間がないから
せめて明日は
悲しい気持ちは捨てたい
どうにもできないのを知っ ....
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