遠い山々の緑がくっきり浮かぶ
夜明け前
烏等は唄を交わし始める。
旅の宿の眼下に広がる風景
明るみゆく教会の隣に
洋風の家があり
朱色の屋根の下に
昔――亀井勝一郎という
文士がい ....
物事にインスパイアーされて
ひきこまれてしまう
なかなか抜け出すことができない
奴は追いかけてくる
まるで強迫観念
やめたくてもやめられない
心象をスケッチして
....
もう
見上げすぎて疲れたから
ふたり
アスファルトに寝そべって
あの
君の頭が
重いんですけど
ボクの抗議は
完全スルーで
北東ってどっちだろう
言った矢先に
すっ と
....
つかれた朝
寝覚めの一杯のコーヒーが
すべての原動力で
たった一人の孤独な人間のための
たった一杯の孤独なコーヒーが
とてもかなしい
もっと人と交流しなさいと
もっと温かく人に接 ....
ふきすさぶ風のなかで
わたしは落し物を探していました
ロマンチックなはじまり
ではありません
財布がないのです
携帯も
さっき買った
にがりのきいた豆腐も醤油もレシートも
メモ帳もモバ ....
閉ざしてないかい
聞こえる 言い訳
目に映る 真実の絵
感じる誘惑
迫る足跡
通り抜ける風の鳴き声
閉ざしてないかい
つまらない男を
新大阪駅の新幹線ホームで
見たことがある
つまらない男でも
それなりに押し出しがよく見えたので
へえ、なるほどね
さすがイオンの息子だね
と感心したもんだ
一方、つ ....
月がすごかった
君がうつくしかった
あの色はなに色
にんげんでもない
どうぶつでもない
ただのたましいだ
泣きそうな顔が
通りすがりの怒り顔
こ ....
三角が貫入する、
静けさの皮膜に包まれ
わたしの意識は落ち着き払い、
自らの不均衡を捉える
薄黄色の光芒、横断する斜線
揺れる葉の緑に私は内側から語りかけた
[もう充分生きた ....
低い空の斜め左に
かがやいては煙となる光
煙が煙でなくなるまで
煙は光を昇りつづける
流れ星が流れ星にぶつかり
祈る間もなく 消えてゆく
けだものの夜
やわら ....
あの日 子守唄を歌ってくれたのは大好きなキリンだった
泣き止まない私にすっかり困った末の
ほんとはお父さん
遠いあの日
あの日 子守唄を歌ってくれたのはやさしいライオンだった
ふざけて眠 ....
風見鶏が風を懐かしむ
正気の証し
私は午前九時に
靴の消滅に気づき
足の寛解を望めぬまま
五月は終わらずに
立ち竦むための
言い訳と
木香薔薇の
繁茂がかなう
塀を求めて
愚図り ....
ん、まま、ん、ま
んまんま、うんま
なんだか疲れた
ん、まま、ん、ま
んまんま、うんま
でも休めない
ん、まま、ん、ま
んまんま、うんま
まだまだこれから
ん、まま、ん、 ....
私の中にある
形にならない感情や
まだ芽を出さない言葉の種
これらすべてを伝えきれたなら
その時 何を感じるだろう
すべてを伝えきった時
そこにあるのはなんだろう
満ち満ちた感覚だ ....
ニューヨークのグリニッジビレッジのレンガの道を歩きながら
あの日私が描いていた 夢 しかし
秋のことだった よく茂った
まだ緑色の葉が揺れる
私は一人で木陰を歩いていた
思考は正確性と客観性を失い
分裂的な生真面目さを完全に喪失する
私は今、循環している
私は今、循環している
目の前にある景色に
耳に響く騒音と噂話に
掌の感覚とドラマのように過ぎる場面 ....
自らの性格は変えられない
自らの運命は変えられない
自らの過去は変えられない
だから、私は今ここにいる
幾つもの不変の行動が
幾つもの不変の思考が
到達点に辿り着こうと喘ぐ現実に
幾つも ....
8月の太陽は逃走した
地面の日照りは俺達の熱気である
俺達の熱気は俺達の病でもある
今日の夜、世界は止まる
回ることを、刻むことを、変わることを放棄する
それは血の熱情が権力へと歯向かう ....
タツノオトシゴよ 台風に乗って疾駆せよ
まだ見ぬ父を夢に見て
ゴッドジーラは堕落しない正義の味方などに決して
熱線を吐いて世界を滅ぼせ
タツノオトシゴよ 敗北を振るい落せ
舌先の魔術 ....
あなたと歩く
直径数十センチの
小さめな円の下で
あなたと語る
今日起こった
些細な出来事について
あなたとふたり
直径数十センチの
青い傘の下で
周りから少し雛 ....
ぼくはかまってちゃんで
人生の時期的に調子に乗っていて
人生に後悔があって
変わろうとする自分に期待していて
結果も過程も ほめてほしい
つよくだきしめて!
....
素顔で
詩人ですなんて
恥ずかしくて
言えないだろ
だから
目出し帽に
上下黒のジャージ姿で
朗読会を開くとかさ
その姿で
感動的な抒情詩
例えば
ホテルで出会った
4 ....
今日も
全ての偶然と必然に感謝している
この手はまだ宙を掴むけれど
大切なものが君へと届き
どこかで繋がっている、
そう信じたい
憂鬱な夜も
全心全力で越えて生き続ける
この胸 ....
私が水の娘だった時
その人が私に望んだのは
夕暮れの淡い光に満たされた
一枚の
黄色い風景画となること
郷愁のような安らぎをもたらす
穏やかなさみしい静止画像
額縁に収まり切れない私 ....
毎日のように終電で帰ってたあの頃はどこも
かしこも閉まってるなかあそこだけは開いて
てホント助かってた十五台もあるレジは一つ
しか稼働してないし店員がいなくて卓上ベル
で呼びだすシステムだなん ....
まゆとまゆを繋いだたおやかな峰に
みえるいくつかの不均衡な螺旋機構
きみとあなたの感情とことばの辺縁に
ひそむ約束の不特定で不埒な内省模様は
燃えつきそうなとおい炎のような
自前の足 ....
ぼくは映画監督になった
イメージをノートに書きとめる
脚本も手掛ける
音楽はピアノの声
翼のように軽いタッチ
役者には細やかな指示をメモでわたす
映画は光と影
....
マリ男は夜に孤独だった
まだ趣味はある
写真が好きで
朝焼けと夕焼けにシャッターを
押すことを繰り返していた
一人旅をよくした
数少ない友人たちは家庭を持ち
それぞれに
関 ....
シロツメクサは冷たかったよ
首飾りにも冠にもなってくれなかったよ
あたしは摘んで摘んでいくども
あきらめて撒いて
風に吹かれて飛んで行ったよ
あたしのお願いは、ついに
どこかの他処へと飛ん ....
八月も終わる
随分忍んできたし
終わる、との約束も
懺悔とともに乞うてもいて
赦されて
けれど
その{ルビ件=くだん}の神は属さない
どこにも椅子を持たない
朱のはずだった捺印が
今 ....
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