朝早く 週の初めに 日の既に登る頃
主の墓に着いた
一人むかえる{ルビ後朝=きぬぎぬ}の
光を受けて 目を覚ませ
讃美囀る あしひきの
山尾の裾の 鶯の
歌こそ至極と 窓を開け
....
四車線の
道路の真ん中で丸い木が揺れ
葉を擦らせて薄い音を出す
男性同士が手をつないでいて
なんとなく初々しかった
電車では倒しそびれたシートに座り
ボックス席でもないのに向かい合う
座 ....
みんなへ挨拶するみたいに風が笑った
何者かになりたかった。
でも自分には無理だと見限った私がいた。
夢を見るには心が老いていた。
夢を見ることを捨てた私の後ろ髪を、夢を見たかった私が引張る。
私はいつまでも未来に生きら ....
空疎な空をかかえながら、
掌のなかに空色を握っている。
機械仕掛けの古城に、
冬の点し灯が灯るのはいつのこと?
荒野に風は吹き曝しになって、
人々にマントを被らせる。
皆希望や ....
お金じゃ買えない、掛け替えのないものを、私はきみから貰ったんだよ。
絵筆ではなく
言葉のペンでするスケッチ
現実からかけ離れた場所に椅子を置いて
そこに身を委ね
手には大学ノートではなく
スマホを持ってる
頭の中で思索を巡らしていたら
そこからみ ....
白いブラウスの襟を
真っ直ぐに戻す時は
紙ひこうきみたいに
指先から離れて飛ぶ
空に少し傷跡を残す
翼が迷った代わりに
私の唇で閉じていく
思いも願いも込めて
音のない最終滑走 ....
子供が
空を飛んでいた
いや
飛んでいたというよりは
屋根から滑空していた
大きなカマキリに似た生き物を背中に乗せ
そこから記憶はなく、始まりは窓を開けていた
家庭用プリンタから ....
「無知は無罪じゃない、有罪なんだよ?」
と言ってわたしを責めたかつての友人に、
「自分が無知であることに無知だから
あなたも有罪ね」
と今の自分なら言える。
....
庭の木も街路樹もすっかり
葉が落ちさり手をひろげて
雪を待ちかねてざわざわと
さぁ、おいで、雪よ、おいで
歌いながら風を掬い夜を掬い
全身で冬の夜空を受け止めて
君は僕の手をひいて ....
俺はいつでも
時限式の爆弾をこめかみに隠している
作ったのは間違いなく俺自身だが
どれぐらいで爆発するのかは全く判らない
シリアスに活動している
シリアスに活動していると
時々そういう ....
これは瀆神に非ず 篤信の祈りなり。
さる罪深き女が
陶酔と法悦に見出した
祈りの散文である。
故にこの書に法則は無く 拘束も無く
また侮辱を受けるに値しない。
ダビデの子よ ....
溜め息で割れるほど壊れやすい
チョコレートの鏡は青春みたい
甘く溶けていく間に消えて
胃の中で重さを感じるから
戻ることのできない後悔を
虫歯が痛み出して始めるの
あの人の笑顔 ....
冷えた月。今年最後の満月が現れた二日後には数え切れないほどの星が流れたね。あれ、みんなふたごなんだってよ。手と手をとってキャラキャラ笑って。箸が転んでもおかしいってやつだ。お年頃なんだね。じゃあ落とし ....
*
貧しい子どもたちのモノクロの微笑み
冬の頼りない日差しに委ねる頬
悪意は悪意のままでだけ美しい
信じることと騙されることが同義となった今
焦点は暈されたまま
クシャクシャ ....
ゲツヨウは玄関を掃き
カヨウは火の元周辺を
スイヨウは水回り中心
モクヨウは床を磨いて
キンヨウは家計の管理
ドヨウニチヨウは予備
月火水木金土日のホシ
コクコクと過ぎゆく月
メク ....
怒りをこめて
空が鳴っている
人のせいかは分からない
ただ無性に空が怒っている
もうずっと晴れていない
空が晴れないと
この土地は敗北したように沈む
こんな姿は見たくないと
私は部屋に ....
ふと顔を上げ
車窓から外を覗くと
無数の屋根が並び
その暴力的な密度に
くるしい
と思わず呟いたあと、
顔なんて上げなければよかった
次の駅
降りて、溶ける身体を去り
改札を出る
幸福について考えるとき
幸福はいつも
私というものを
嫌と云うほど 突きつけてくるのです
幸福になりたい
ため息みたいに口について出てくる言葉
だけど 一体何がどうなれば
幸福と ....
結露は結露る気分でなくとも結露らずにはいられない質。
結論として結露が結露っているのは結露らざるを得ない為。
年末の日曜日
昼から呑みながら適当に
部屋の整理をしていたら
....
光に照らされ 透けて見える川底
流線型の魚影が うつくしい
フォーメーション
薄雲が川に陰りを与えると
失われた魚の影
代わりに現れたのは 鱗の煌めく魚たち
わたしは、だれとも 会 ....
まだ6時前だが
ぼくはカウンターのいちばん手前の椅子を引く
マスターが早かったね と言いながら
ぼくのアーリー・タイムスのボトルを出してくれ
磨かれたオン・ザ・ロック用のグラスがひとつカウ ....
唇を閉ざす桜の花びらが
あなたへ届けるハガキの
切手になるまで愛せるから
渇かないように
濡れないように
私を祈った季節を越えて
ジップロックの中で生きても
口づけに舞うほど強く ....
人ってさ
誰しも三つ持ってるよね。
一つは体
もう一つは心
そして最後に
かけがえのない
命ってやつ
何を今さら言ってんの
そんなの当たり前じゃないか
そんな事言わないで
....
恋人にもらった架空の靴で街を歩こうか。
(逐われる度に痛むんだ心臓が)
精神を病めば幽霊が見られなくなるんじゃないか?
(湿地で恋を叫びながら踊る人間たち)
かつての人は豹変する。
....
おばしまに乗る月は
妖精のスカート
葡萄色の瞳
月の吐息は朧にかかる
レンゲ畑は美しい雪の下
雪のミツバチはあなたの面影
月光を集めて飛んでいく
妖精のうしろ姿が見える
月 ....
香炉の炭が小さく赤く
藪小路の実のように
置かれた和菓子のように
上げた障子戸の向こうに
雪で染めた羽根が見える
茶室でふたりきり
白い息はひとつきり
他人の不幸に辿り着いたら
なぜだか幸せを噛み締めているようで
どす黒い絆という文字ばかり踊っているのです
682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722
【自由詩】自由詩の作品のみ受けつけます。自由詩批評は散文のカテゴリへ。
3.19sec.