人をきずつけ
傷つけたくせに傷付いて
そんなことをかんがえて
夜はまだ更けもしない
とりかえしのつかない
いったいどれだけ多くの
星が空にまたたけば
星座の{ルビ焉=おわ}りは来るの ....
星の砂巻き上げて海沿いの駅走り過ぎる
2つに折ったトレイルバー、大きい方を黙って差し出す
肩先にまだ残る燐光、振り払いもしないで
先頭車両はまだ寝てるみたい
窓を開け風を誘い込む
飛ばされな ....
また夜が来て
まだ私は生きていて
堆積した記憶の回収不能
後頭部辺りから凹んでいき
何一つ思い出せない
何一つ思い出さない
)モノクロームの響き充満し
また夜が深まり
まだ ....
今、生をうける。
今、そのかろく、うつくしくもあるアポトーシスの進行形。
れっとう意識から発せられたものでなくして、
垂直な風の歌
お前はそれを、いつ問うだろう。
この倫理のなにかも ....
団地の窓から出てったのは
あれは天使じゃなかったろうか
プリントの解答欄へ答えの代わりに書き置きを残して
翼なんかなかったけれど
あの子は天使じゃなかったろうか
“環境性調整障害”なんて自分 ....
私って
良い人ですか?それともきわめてワルイ人
そんな質問
誰かにしてみたくなった
その日
たまたま入ったファミレスは空席が目立っていた
ランチタイムと夜の混雑する時間帯ではなかったと ....
喉までせりつめてくる
ものをいなし
喪われた月で首飾りをつくる
詩篇の鉄道は砂礫ですっかり
いっぱいだ
降り掛かる酵母のようであろう
それはやさしげなシダ胞子
副詞に錠をおろ ....
大きくなった君のおなかに
毎晩クリームを塗って
赤ん坊に声をかける
人間の果実は君のおなかに実る
この果実の中では赤ん坊が
手足を動かし呼吸していて
少しずつ人の形として熟していく
....
ここは、森であることを、許されてはいない。
しかし、森でなかったことはない。
森について、何も知らない。
しかし、森のすべては、予め知らされている。
森を、思いだすことは、できない。
....
近所の婆さんから焼き芋をもらう
紅はるかって種類を初めて作ったとか
太い焼き芋だ
齢八十余年の初めてをいま喰っている
時々忘れていく でも
時々 思い出すのは あの日
街灯の下で僕の見ていた橋の光景
自転車で 長い通りでペダルを踏んだ
曲がって駅の 駐輪場を 僕は目指した
二〇一五年五月一日 「HとI」
アルファベットの順番に感心する。Hの横にIがあるのだ。90度回転させただけじゃないか。エッチの横に愛があるとも読める。もちろん、Iの横にHがあるとも、愛の横 ....
剥いた蜜柑の爪跡が地球の裏側に勃っている
朝と見間違うかのような崩落
焔は零れる砂となり
紐を抱くとも数式の最後尾に綴じられる
消えそうな会釈で靴を脱ぐ
前室は輪郭に満たず、水没した鏡に ....
街は震える。
街は震える、僕を揺り落とすほどに。
寂しく、恐ろしく
震える。
真っ黒に濡りつぶされた窓が
少し開いて、
赤い針が何本か投射される。
その骨ばった手指。
不揃いな歯。
....
見ろよとうとう列車がやってきた
あれは取り残された者だけが
最後に乗り込める列車なんだ
何も請け負ったつもりはないが
この国に生まれたからには責任をとれと
指を突きつけてくる連中がいる
....
刺すような寒さとは
まだ刺されていないのに
おかしい
なぜ皆知ってるんだ
刺されたときの痛さを
何か私に隠してるのか
もしかして
刺すような痛さは
刺した時の痛さだろうか
胸 ....
{引用=内から喰われる}
くちびるから離れる熱い器
つかもうとして膨らんだ白い手は光にとけ
網膜にしみる青さをかもめが掻っ切った
上澄みだけ日差しに毛羽だった
時のよどみ底なしの 泥夢―― ....
昔馴染みの店長がいる
地元の古書店へ行った
店長とはたぶん15年以上の付き合い
ひさしぶりにみた店長の声は
若い頃のままだったが
見事な白髪へと変貌していた
梯子を昇り
15年前と配置の ....
人の噂も七十五日
ひとつの季節が過ぎる頃には
噂も忘れら去られるから
それまでの辛抱だった
ことわざは人を救ってくれた
それがネット社会になって
検索候補一覧に
サジェストキーワード ....
自分は次の世、どこで存在しているのだろうか?
また、同じ人格を保ったままなのであろうか?
でも幸運であったのは、ウルトラマンと出会えたことだった。
ソクラテスを知るまえに、「正義」を知り ....
職場でお寺の話になって
昔あなたと行ったお寺のことを思い出した
名前も場所も憶えていなくて
ネットで調べていたら
手が滑ってあなたの家を見てしまった
恐ろしいことに十数年の移り変わり写真 ....
私はカフカの変身を読んだ記憶はありません
小林多喜二の蟹工船も倉橋由美子のパルタイも読んでません
ただ書店で何度か本を手に取った記憶はあります
私は芥川龍之介の芋粥は完読しています
太宰治 ....
{引用=ふしあわせという名の猫がいる 寺山修司}
印象という名の椅子
音楽という名のハンモック
概念という名の少年
恐怖という名のカクテル
経済学と ....
たくさんの記憶がある
嫌な記憶が邪魔して
前に進めないこともある
気持ちは前を向いていても
何故か途中で進めなくなる
嫌な記憶が
徐々に薄まっていく
夢を観ていた
良い ....
プールの底からみえる
陽にゆれる水面
一篇の詩さえ
書けないってどういう事だろう
浮上とは何です、この場合
ミューズよ
捨てられないもの増え過ぎて
ひっくり返したバックギャモン
雨降って固まった理想
もう崩せない砂の城
鼾五月蝿いの何とかしてよ
部屋着代わりのジャージのラインと
並べて焼いた目玉焼き
ハン ....
荒野に一つ
かがやくそれは
ぼくの悩み事をぶちやぶって
窓に張り付く次の夜から
マカロニはしるしになる
やってきては不幸をなげき
とばりの隅に隠れている
宇宙にひとつ
かがやく ....
けだるい夏のサンセット
若いヘルパーがカミングホーム
お前のママの素敵なディナーを
作ってくれるぜナウイッツタイム
その時を狙ってさらいに行くぜ
その時ママが元気だといいな
それならお前も ....
段ボール、衣類、びん、缶、ペットボトル
段ボール、衣類、びん、缶、ペットボトル
月曜の夜に呪文のように唱える
明日は段ボールの日だから
古新聞と雑誌とチラシは来週ね
そう決まってるの残念なが ....
冬の道に蛾が落ちてきた
大きな桑子だ
冬をやり過ごし
羽を朽ちさせた太い蛾は
冷たいアスファルトに震えていた
二月
妙に暖かい日に
それでも凍てた道路に腹と羽を震わせた蛾の
末路は知ら ....
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