自由詩
峻厳/ヒヤシンス
 
ルトを流すのだ。

 今年も夏がやって来る。
 私は突然君がいなくなってしまうのではないかと訝しがる。
 君の持ち込んだスケッチブックにはいくつかのデッサンがあるが、
 ほとんど全ては、女の背中に男が爪先で傷を付けているものばかりだ。
 そしてそこだけ赤いインクが垂れている。
 不思議なことに男も女も君自身だ。
 感性だけが天に召されている違和感のない感覚。
 本当に君には夏が来ないような錯覚に陥る。
 君は言う、全て僕さ。そして駄作だ。

 部屋中に漂うモーツァルトが行き着いた清冽さが悲しい。
 神に愛された彼の天才が彼を短命にしたのだろうか。
 そもそも彼は実在した
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