自由詩
峻厳/ヒヤシンス
 

 暑さ厳しい夏を向こうに控えて
 君と聴くモーツァルトが今日は愉しい。
 無限の広がりをその音に託し、
 感情の極限を曝け出した楽曲達が
 この耳を刺激する。
 曇天が水滴を垂らすような悲しみも
 晴天の神々しい輝きも。

 君が時折見せる不安げな表情を私は見逃さない。
 君は言う、生きていくのが心底嫌になったよ。
 そういう時の君は決まって私の応接室のソファーで長い足を組み、
 力無く開いた手の平で二、三度空を切る。
 私は黙って俯いた君の長い睫毛をただじっと見守っている。
 何故、と聞くのが愚問なほど空気は澱んでいる。
 そして私は徐にモーツァルトのコンチェルト
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