【童話】ある乞食の話(第一話)/プル式
 
たが、概ね商人の売る物は、一日の内に売り切れとなり、次の日には、また、別の町に旅立ってしまうのでした。

ある日、男はいつもの様に露店を広げ、呼び込みを始めました。しかし、男がいくら声をかけても、誰ひとり、見向きもしません。こんな事は初めてです。いったいどうした事だろうと、あれこれ考えて見ますが、一向に解りません。そのうち日が暮れ始め、ついに、その日は何一つ売れないまま、男は店じまいを始めたのでした。
その日、珍しく町に泊まった男は、これ又珍しく、酒場に向かいました。いつもなら旅途中の、小さな軒を借りて夜を明かすのが、常だったからです。男は酒場で飲みながら、今日は何がいけなかったのだろう、と考えておりました。考えながら飲んでいる間に、男はすっかり酔っ払ってしまいました。そうして店を出た男は、ぶつぶつと文句を言いながら、酔い覚ましに散歩を始めたのでした。
  グループ"童話"
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