記憶の断片小説・ショートシネマ 「ロイド」/虹村 凌
その学園祭の時の記憶は、殆ど残っていない。
太鼓の演奏を見た事。
美術部の展示を見た事。
大きな紙に、銭形幸一の似顔絵を書いた事。
それくらいしか、覚えていない。
もう覚えていない。
あれは卒業する前だったのか、卒業した後だったのか。
いや、夏だった事を覚えている。初夏だったろうか。
とにかく、暑かった事を覚えている。
…という事は卒業してからだ。
友達の彼女、ライチに紹介されて、僕は会っても居ないロイドと、
数通のメールを交わしていた。
何がどうなったか忘れたけれど、僕はロイドの家に遊びに行く事になった。
その時の格好も、うっすらと覚えている。
黒いジー
[次のページ]
前 グループ"記憶の断片小説・ショートシネマ 「ロイド」"
編 削 Point(1)