記憶の断片小説・ショートシネマ 「ロイド」/虹村 凌
ジーンズ、腰にはパッチワーク風の緩々のネルシャツを、
まるでスカートみたいにグルリと巻いて、途中からベルトが飛び出るように、
少し工夫して巻いていた。履いていた靴は…コンバースかな?
その頃はまだ、ラバーソールじゃなかったはずだ。
いや。9000円くらいで買った、偽モノのラバーソールだったかも。
もしくは、卒業式の前に買った、黒いバックスキンの靴だ。
上には…上には何を着ていたのか忘れた。
とにかく、僕はロイドの家を訪ねる事になった。
ロイドの家、と言っても実際は彼女の祖母の家で、
諸事情によって、少しの間だけ、借りているだけらしい。
彼女の家で、いくつかの映画を見よう、と言う話になっていた。
借りるビデオは、彼女に任せて、僕は彼女の家の最寄り駅に向かった。
地下鉄大江戸線の中で、僕は汗だくになっていた。
友達に貰ったヴェルサーチのブルージーンズは、既に香らなくなっていた。
妹には「虫除けスプレーの匂いだ」とか言われたが、気にしない。
僕は一駅一駅、注意深く駅の名前を見ていた。
「牛込神楽坂」
僕は、そこで電車を降りた。
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