〈芝居〉『明日』 青年座 2005/08/13/白糸雅樹
登場人物のうちでは、花婿の父が特に巧く、とてもおもしろかった。知り合いの青年が出征するはなむけに元ホテルのコック長だった腕を振るってオムレツを作ろうと、卵をもらいに寄ったうちでのこと。翌日、死病の娘を訪ねて病院に行く時に持っていきたいからと自分たちにもオムレツと作ってくれと農家の夫婦に頼まれる場面は圧巻だった。オムレツは出来立てでなくてはおいしくないというのは当然で、最初そう言って断るのだが、かたちだけでもいいのだからと懇願されて、「明日の朝まではともかくそれから持っていくのではとてもとても」と断る。しかし、考えてもみてほしい。翌日の朝というのは、どう考えてもお腹を壊さない限度の時間であっ
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