〈芝居〉『明日』 青年座 2005/08/13/白糸雅樹
 
あって、どう考えても元コックのプライドとしてはそんなに時間がたったものというのは普通譲歩できるものではない。それを譲歩してしまうのは、「かたちだけでも、宮さまのオムレツを作った人のオムレツを食べさせたい」という「かたちだけでも」くらいのことしかできない親のせつなさを察してしまうと、プライドなどはまったく存在しなくなってしまうからだろう。そして、その娘の為に作ることができない苦渋の表情と、「作り方を教えてくれ」と言われて、自分にしてやれることを見つけた時の嬉々とした様子。オムレツなどという、作り手によって全然味が違ってしまうものを、「宮さまのオムレツを作った人から直に教わったオムレツ」というだけでど
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  グループ"れびゅう:舞台"
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