〈芝居〉『明日』 青年座 2005/08/13/白糸雅樹
像」として描くためかもしれないと思われた。
といっても個性が書かれていないわけではない。人物の一面しか描かないで造形しているわけでもない。むしろ、婚礼祝辞のあまりに紋切り型な善意やおどけを目にすると、そのような類型でしか精確に描けないもの、に思いをはせずにはいられないのだ。
彼らはけっして特殊な個性は持っていない。しかし、平凡な庶民であるということは、それぞれに利己的だったり、卑しかったりということからも無縁ではない。卑小な人間をそれぞれお人よしであるなりにあさましくも卑小に描写しており、だからこそ彼らが語る「明日」の予定がどのように翻弄されるかに観客は気持ちを揺すぶられる。
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