8、夜 【よる】/雨宮 之人
 
とある ひと幕を終えて
緞帳(どんちょう)が 下りてくる
黒のビロード
艶(つや)めいている

静寂
それだけが 音を鳴らす
幕間(まくあい)には
素敵な幻想を召し上がれ

笑わない道化師と
響かないオーケストラ
目蓋の裏側で 晩餐会を

音もなく 刻まれる時間
舞台裏 準備は進む
光の如く響く 開演のブザーに向かって
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