89、泡 【あわ】/雨宮 之人
 
何にもない、何にもないってよ俺たち
肩を寄せ合って
それで夢ばかり詰め込んで
どんどん広がって、どこまでも広がってさ

まみれた両腕で
濡れ手で粟、そうやって集めたモンが
ひゅうと、そよ風のひと吹きで
ぱちんと、弾けてしまうって

ゲンジツ感に近づいたら
詰め込んできた虚ろな夢たちは
逃げ出しちまうんだぜって、なぁそうなのかよ

ぽつんと置いてけぼりにされて
ただそれだけが震えて、あぁ、震えてるんだよ
何にもないって、なぁおい、俺が、俺がいるのにさ
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