90、スロウモード 【すろうもーど】/雨宮 之人
しとしとと
煙(けぶ)るように春雨が充満して
気付いたら季節は僕らの目の前を
風のように通り過ぎて行ってしまう
消えてしまいたいなぁ
雨に濡れながら彼女はそうやって言う
まるで磨り減った靴底だ、僕は
中敷きも削れて、クッションが失われてさ
ジャンプした彼女が
やけにゆっくり網膜に影を映して
届け、届けって願いながら、僕は
うとうととしながら、煙草をふかしてる
最近の一日は真昼から朝焼けまで
ロックンローラーみたい、なんてさ、笑えないけど
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