掌編小説『しゃしんの女』 〜上〜/朝原 凪人
そうなほど長くなっているのに気付くと、あわてて灰皿に押し付けた。クリスタル製でふちのところに天使を模した細工がされている。その天使が持ち上げている両手に煙草を置くと、私は十センチ女との距離を取った。
「それにしても、どうかしましたか?」
クスッ。女はまた笑ったようだった。これほど間近に在りながら、まだその顔を認識することができないのは、私の頭がおかしいのだろうか?
「それにしても、貴方はあの人によく似ている。そう思ったのですよ」
〜続〜
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