掌編小説『しゃしんの女』 〜下〜/朝原 凪人
て記事を書いている。もう訪れることはないであろう、雪に囲まれた白亜の城。バラの香り。顔のない女。
しかしそのどれも私は忘れることは出来ないだろうと思っている。それほどまでにあの空間は密度の濃いものだった。心を捨てた女の居場所の密度が濃いだなんて、それこそ笑い話だが。
「おーい、今度の記事のタイトル決まったか?」
「そうですね。『捨心の女』でいこうと思います」
そうそう、屋敷を出来るときに女に尋ねたんだ。
「『捨てる』とは、具体的にどういうことですか?」
「そのままですよ。言葉のまま。そうですね、貴方にもわかりやすく説明するならば」
奇麗に整った
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