創書日和【海】アルモー海/大村 浩一
 
アルモー海はその人のそばに
夕暮れから夜にかけて忽然と現れる
長辺 9.4km 短辺 5.7km 最大水深 5.5km
全周は高い崖に囲まれ
その海が突然 彼の玄関先に現れる


水温は高く そのためか
湯気がかすかに立つ
水面は満月にもかすかにも揺れない
船は1隻も通わず
代わりに巨神が突然現れる
巨大な逸物が雲間に垣間見え
滝のように水が降ってくる
次には巨大な女神が立つ
巨大な陰唇が雲間に垣間見え
次にはまた滝のように水が降る
水と泡が狂ったように空と海と岸辺を洗い
突然全てが消え失せ 辺りは鎮まり返る
隣家では眠れぬ犬がずっと鳴いている


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