十一月ふたりのボートが、宝ヶ池をなぞってゆく日/AB(なかほど)
 
ほら
いつまでも進まないから
そろそろ代わろうか

静かにうなずいたのかどうか
オールを離した君は

君の目は膝に落とされ
僕の目は池のまん中に向けられ
あの浄化用のエアーポンプのとこまで
あの迫り出した二セアカシアの下まで
あの赤い眼鏡橋の下まで

泣き出しそうになる君の
ため息をつきそうになる僕の
肩のゆれと息づかいはいつまでも
もどかしく
いつまでもひとつにはなれず
ふたつにもなれず

やがて
幼い君と出会って
駈けて遊んだ小さな赤い眼鏡橋にさしかかると
かこん かこん って
枝で鳴らす音 かこん かこん って
君の音だよ
      僕の
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